各国が、戦後に築かれた「平和」を守るために立ち上がったのだ。
そこで上がった声とは……。
アメリカ 国防総省 中央作戦司令室
「そうか。遂に、ロウリア王国は動いたか」
ワシントンD.C郊外に建設された正五角形の形をしたアメリカ国防総省本庁舎、通称ペンタゴン。
その地下に設けられた中央作戦司令室にて、統合参謀本部からロウリア王国がクワ・トイネ公国への侵略を開始したとの報告を受けたリーガン。彼は一度深く息を吐くと、ロデニウス大陸の地図を見据え、静かに頷いた。
「この事態に対して、我が軍の対応は?」
「は。それにつきましては、こちらの『クワ・トイネ公国防衛計画及びロウリア王国攻略作戦』の概略をご覧ください。
大統領のご命令により派遣された第7艦隊は那覇基地にて国連軍5カ国連合航空機動艦隊と合流し、出撃準備を整えております。艦隊の攻撃方針としては、クワ・トイネを出撃後にロデニウス大陸沖にて会敵するであろうロウリア王国海軍約4000隻と接敵、これを撃滅します。その後は王都ジン・ハークの北方にあると想定される海軍本部を砲撃、残りの船団も殲滅します」
「陸上部隊は、ディヴィッド・ブラットレー大将率いる第2軍団が日本の熊谷少将の装甲師団と連携し、クワ・トイネの国境の街ギムを前線基地とし、ここから各方面への攻撃を行います。
ロウリア王国側との偶発的戦闘は避けられぬかもしれません。クワ・トイネ側も緊急避難を実施しているとの事ですが、どれだけ間に合うか……。また航空支援として海兵隊のマイルズ・クオリッチ大佐率いる航空部隊で別方面に展開中の敵歩兵部隊を殲滅後、ロウリア王国軍事施設への空爆を開始。徐々に包囲網を築き、ロウリア王国を圧迫します」
説明を行う海軍作戦部長と陸軍参謀総長の説明を受けたリーガンは、その過程で出てきた、ある猛将の名前を思わず口に出した。
「それにしても、湾岸戦争の猛将をこの戦場の支援部隊とは言え出撃させるとは……。これは相手に同情してしまうな」
アメリカ合衆国大統領に猛将と呼ばせるマイルズ・クオリッチという男は、後世湾岸戦争にて活躍した海兵隊大佐で、その容赦ない攻撃としぶとさから『Demon general(悪魔将軍)』との異名を持つ猛将だ。
その他人を貫く目線は思わず見たものを身震いさせ、激励のため基地を訪れたリーガン自身も冷や汗を垂らしたものだった。
彼が率いる航空部隊は「Coo-pes」と呼ばれ「C-21ドラゴン・アサルト・シップ」、「AT-99 スコーピオン・ガンシップ」、「SA-2サムソン」の計200機からなり、海兵隊の航空支援や人員輸送の大きな原動力となっていた。
「大統領、彼の実力は本物です。正直航空戦力であるワイバーンさえいなければ、ロウリア兵40万の殲滅など彼の航空部隊のみで可能です。赤子の手を捻るように簡単なことです」
クオリッチの実力を上官として認めているのは、イラク戦争時に彼の上官だったエヴァンス。国防長官として軍を離れた後も彼との交流は未だに絶えることなく、感謝祭の際には両家が集まって互いに祝う仲でもある。
「奴ならやりかねないだろうな。だが過度な攻撃は認めん。あくまで、この軍事作戦はクワ・トイネ防衛に主眼が置かれるべきだ。過介入は、世論や国際社会が賛成しないからな。
さて、国務長官から報告を受けたが、クワ・トイネ公国大使が国連安保理に提出した。この決議に対して、我が国も反対する意思はない。全会一致で承認後、直ちに国連軍という形で国連軍事参謀委員会より出撃命令が発令されるだろう。命令をもって、我々はロウリア王国に対する軍事作戦を開始する。参謀総長、兵員の輸送についてはどうなっている?」
「はっ。先発したブラットレー大将率いる第2軍団は輸送機と海軍の艦艇を使い輸送中です。ですが、到着まで少々時間がかかるため、それまでに戦闘が発生した場合は、数の少ないクワ・トイネ公国軍や日本の「夜豹師団」に粘ってもらうほかありません。
クオリッチ大佐の「Coo-pes」ですが既に給油地のハワイを離陸、現在は日本に向かって飛行中です」
「分かった。早急に兵員輸送を完了させてくれ。一刻の遅れが大勢の市民たちの命を奪う事になる。国防総省はこの事を意識して、作戦遂行にあたってほしい。さて、本日のミーティングは以上だが……ローディ、直ちに7カ国緊急首脳会議開催を各国に打診してくれ。一致団結したメッセージをロウリア王国に送ってやる」
リーガンはそう呟くと、モニターに表示されたロウリア王国軍の詳細情報を睨んだ。
イギリス ダウニング10番地 内閣会議室
「動いた……動いたのね。あの、ロウリア王国が」
首相執務室にて、ウォルポールやトム・ジョンソン国防大臣、ハロルド・マウントバッテン国防参謀総長(陸軍大将)、ジェレミー・フィールドハウス第一海軍卿兼海軍参謀総長(海軍大将)からの報告を受けたサッチャーは、手を顔の前で組むと険しい表情で頷いた。
「クワ・トイネ公国外務局からの分析では、国境にてロウリア王国の大規模動員を確認。彼らの狙いは、恐らく国境の街ギムだと思われます。
ここを落としますと、城塞都市エジェイまでの道が開かれることになり、一気に攻撃側が有利になります」
「人間至上主義を掲げるロウリア王国のことです。ギムが堕ちれば、そこに住まう人々がどんな扱いをされるか分かりません。ナチのホロコーストに並ぶ、人道上とても許せない戦争犯罪を犯す可能性もあるかと」
「何ですって……?」
マウントバッテンの簡単な説明の後、外務大臣として会議に参加しているディズレーリの指摘にサッチャーは老眼鏡を外し、その言葉に目を見開いた。
「この世界の国際秩序はまさに中世のそれですからな。戦勝国の言い分が全て、敗戦国には主権など存在しません。クワ・トイネ外務局によれば、もし公国が敗戦した場合、亜人は皆殺し、人間であっても奴隷として扱われ、国家は亡国化される可能性が高いとのことです」
会議室は騒然となる。あまりの残虐性に出席した閣僚たちは言葉を失い、そして怒りに震える。
「外務大臣の予測はその通りだ。それだけで済めば、まだいい方だ」
「国防大臣、それだけとはどういう意味ですかな?」
名門オックスフォード大学の出身ながら、奇抜な言動で知られる切れ者ジョンソンは、ディズレーリの予測が甘いと言わんばかりの態度だ。
「ロデニウス大陸がロウリア王国の手に落ちれば、覇権主義国家がオキナワの眼前に誕生することになる。恐らく、奴らは次なる勢力圏の拡充をシオス王国に向けるだろうが、北に進出する可能性も捨てきれない。
どのみち、我々との全面衝突は避けられないだろう。ならば今のうちに、ロウリア王国がまだ小さいうちにその芽を摘んでおくべきだ」
「外務省としては、そのどちらも避けたいですな。我々との全面衝突は『百害あって一利なし』です。
それに、先制攻撃は国連憲章で厳格に禁止されています。国防大臣の指摘は分かりますが、だからと言って容易に戦争に踏み切ることには反対です」
あくまで過度な戦争回避を訴えるディズレーリと、好戦派のジョンソンの意見は真っ向から対立していた。
容易に戦争に踏み切り、戦後処理や講和後の両国の禍根を心配するディズレーリは戦争回避を望んでいたが、イギリスの国防戦略の重要性やナチスの蛮行がトラウマとなっているジョンソンは、友好国を同じ目に遭わすわけにはいかないとして、一歩も引かない。
白熱する議論を制するように、サッチャーは片手を上げて閣僚たちの発言を止める。
「クワ・トイネ公国とクイラ王国は、国連、太平洋防衛機構、それに北大西洋条約機構に軍事支援を要請している。外務大臣、その認識で合っているわよね?」
「は。その通りです、首相」
「そして日本、アメリカは即座に軍事支援要請を受諾している。また、フランス政府も軍事支援を明確に表明しようとしている。
ならば、我々に拒否する理由はないわ。国防大臣、大至急効果的な軍事支援を策定しなさい」
首相の鶴の一声に、閣僚たちは即座に動き出す。ロデニウス大陸における発言権がフランスより低下することを密かに恐れていたサッチャーは、初めから効果的な軍事支援を行うことを心に決めていた。
それは、統一体となったヨーロッパに残されたフランスとイギリスの国家間競争の一環の表れでもあった。
「
同国 バッキンガム宮殿
「そうですか…。血を流す事態は避けられないのですね」
「心中お察しします。ですが我々の躊躇が、より多くの同胞の命を奪います。どうかご理解を、女王陛下」
閣議終了後、定例の報告を行うためにバッキンガム宮殿に向かったサッチャーは、大英連邦王国の君主であり、ウィンザー朝の当主であるマーガレット2世に謁見していた。
女王の執務室に招かれ、簡単な挨拶を済ませたサッチャーの開口一番の言葉に、彼女の表情は暗くなる。
「我々王室は、慣例に従い政治には口を出しません。今回の戦争にも、中立を貫きましょう」
「畏まりました、女王陛下。これは正義のための戦争でもあるのです。あのナチをも上回るかもしれない野蛮な行為が、我々の眼前に迫っています。この戦いは、歴史を変えるものになりましょう」
「正義の戦争などありませんよ、首相。彼らにも信念があり、家族があり、守るべき祖国があるのです。彼らから見れば、我々こそ侵略者に見えているのかもしれないのですから。
これから、我々は再びこの手を血に染めます。それがどれほど罪深きことか……」
女王の言葉は重い。召使すら退出させた室内には、重苦しい空気が漂う。
「心得ております。ところで女王陛下、ウィリアム殿下、ジョージ殿下、チャールズ殿下も此度の戦争には元帥として出陣されると聞いておりますが……」
「ええ。王室たる者、国を守るために軍務を務めるのは習わしですから。
夫のウィリアム、弟のジョージ、チャールズは陸海空の元帥として、戦場に向かうことになるでしょう。私も軍に激励を行うため、暫くはここを離れることになります」
女性であるマーガレットは陸海空軍の元帥の位を持たないため軍務を務めることはできないが、「ロード・ハイ・アドミラル」の称号を持っていた。イギリス海軍の名目上の最高司令官であるこの称号を持つ以上、彼女も軍の激励に赴くことになる。
一方、夫であるウェセックス公ウィリアムや、弟のエディンバラ公ジョージ、ヨーク公チャールズは男性王族であるため、陸海空の元帥の位と海兵隊大将の位を持つ軍人だ。そのため、今回の戦争にも彼らは従軍することを決めている。
基本的にはロンドンの国防省や海軍本部にて勤務することになるが、場合によっては艦船に乗船し戦場に赴く場合もある。家族が戦場に行くことに対し、マーガレットは不安を持っていないわけではない。
「差別は私も憎いです。しかし戦争をしなければそれが解決できないとは、心が痛むものです。
外交で解決できれば、それが最良なのは誰の目からも明白。ですが、それは叶わぬ願いになりました。犠牲者が少なくなることを祈るばかりです」
「最善を尽くしましょう」
バッキンガム宮殿から見るロンドンの空は、暗い雲に包まれている。異世界に転移して以降、快晴が続いていた首都の空は、これからの混沌を示すかのように太陽の光を遮っていた。
「陛下には、開戦に伴う全国放送等、ご足労をお掛けすることになります。
ですがご安心ください。我が連合王国は必ず、この戦争に勝利してみせます」
「慢心は禁物ですよ、首相。聞くところによれば、相手国であるロウリア王国には魔法を操る者が多数いると聞きます。油断は思わぬ結果を招くことを、心に留めておくように」
「心得ています、女王陛下」
フランス エリゼ宮 ミュラ・サロン
「大統領!ナチの蛮行に並ぶような、戦争犯罪を見逃すなど到底承認できませんぞ!奴らに国家を荒らされ、尊厳を20年以上も踏み躙られた歴史を持つ我々だからこそ、行動する権利があるのです!」
議論が紛糾していたのはフランスの首都パリのエリゼ宮でも同様だった。ただし、こちらは圧倒的なまでに賛成意見が大きかった。
内閣で意見が割れていたイギリスと違い、ナチスの支配を受けた歴史を持つフランスでは今回のロウリア王国侵攻に対し、介入方針が圧倒的に支持されていた。
アドリアン・リシュリューヨーロッパ・外務大臣を筆頭に、アラム・フィリップ軍事大臣、フランソワ・カステックス内務大臣ら内閣の主要閣僚の強硬派はもちろん、政権内では宥和派であるオラニュエル・マクロン経済・財務大臣などもフランスの参戦を促していた。
「大統領。既に日本とアメリカは海軍において空母機動部隊クラス、陸軍においても師団規模の軍事支援を行うと表明しています。
また、イギリス政府もジョンソン国防大臣を筆頭に、サッチャー首相に軍事支援を行うよう迫っており、首相自身も支援に乗り気のようです。手をこまねいておりますと、我々の立場が危ういものになるかもしれせん」
リシュリュー外務大臣は、何よりイギリスに出し抜かれることを嫌がっている。第三次世界大戦までドイツの占領を受けながらもほぼ領土の割譲を受けず、第三次勃発後は真っ先にドイツ軍をブリテン島から追い出せたイギリスとは違い、大戦後半までドイツの占領下に置かれていた分、戦後復興が遅れていたフランス。同国は早い時期から経済成長するイギリスを常にライバル視してきた。
日米英加が支援に乗り出す中、フランスのみが遅れることは異世界にて高まりつつある自国の影響力を弱めることにつながる。最終的にフランスの国益に悪影響が出ると判断した彼は、ミッテランに強硬に軍事支援を主張していた。
「リシュリュー大臣に同意です。すでに我が軍は国防法に乗っ取り、軍の動員を開始しています。力で侵略する国家に対して、最も効果的なのは圧倒的な力を見せることでしょう。大統領、ロウリアの侵略意欲を完全に叩き潰すためにも我が軍も派遣するべきです」
「私としては、可能な限り戦争という手段は回避したかったのですが、このような事態に陥った以上は仕方ありません。可能な限り、戦死者が少なく済むように願いたいものです」
フィリップの強硬発言に、諸手を挙げての賛成というわけではないが、賛成の意を表すマクロン。宥和派の筆頭であり、戦争回避を主張し続けた彼といえども、侵略戦争に対する防衛戦争は致し方ないと考えていた。
同時に、マクロンが賛成したとこで政権内部の宥和派も開戦に対して意義を唱える者はなかった。
「諸君の忌憚なき意見に感謝しよう。私もこの度の軍事支援に関して異議はない。世界にフランスあり、ということを示すためにも他国に劣らぬ支援を両国に躊躇なく実行する。
だが、外交チャンネルを完全に閉ざすことはしない。我々は和戦両様の構えで臨み、相手国が講和を申し出た時には、即座に停戦を行うことにする。この方針に異論のある者は?」
ミッテランの呼びかけに誰も“Non”と述べる閣僚はいなかった。流れる様に支援を決定したフランスが国際社会に向けて、「フランスはクワ・トイネ、クイラ両国を決して見捨てない」、と発表した日、偶然にもイギリスにおいてもサッチャーが議会にて軍事支援を行うことを宣言していた。
奇しくも同じ日に支援発表を行った両国を、世間は「英仏共同宣言」と呼んだ。
この「宣言」の翌日、クワ・トイネ公国の要請を受けた日本の呼びかけに基づいて緊急の国連安全保障理事会が開催され、会場となる安保理議場には7カ国と、クワ・トイネ公国、クイラ王国の国連大使が集まった。
クワ・トイネ公国大使は、各国から軍事支援を引き出すために涙を流しながら60分に及ぶ演説を行った。
また、米英仏が人権侵害に対して強いトラウマを抱いているとリンスイから助言を受けたカナタは、より強烈なインパクトを各国に与えるため、議場にロウリア王国によって両親を殺害されたハーフエルフの少女を派遣した。
彼女にも、各国の国連大使に向けて演説させたのである。
果たして、その効果は絶大だった。大使の言葉も強烈なインパクトを与えたが、何より少女の口からロウリアの非人道的な振る舞いを聞いた各国大使たちは、その内容に心を痛めた。中でも、イギリスとフランスの国連大使は、涙を流しながらロウリアに対する憎しみの感情を高めた。
そしてクワ・トイネ提出の緊急支援要請が採決に掛けられ、常任理事国である日本、アメリカ、イギリス、フランスを含むすべての国に承認された。
これにより後世世界各国にとって後世湾岸戦争以来の、そして異世界初の国連軍が結成される事になり、総司令官をアメリカ空軍のジョン・W・アイゼンハワー空軍大将、副司令官を日本海軍の高杉中将が務める事も同時に決定された。
同時に、7カ国は緊急首脳会談を箱根で開催。この会議にて、永世中立国である東方エルサレム共和国とアイルランドを除く5ヵ国がクワ・トイネへの無期限・無制限の支援を表明し、ロウリア王国に対して宣戦布告を行うこととなった。
そしてーー、
日本国 国会議事堂 衆議院本会議場
「ーー日本国政府は、友好国たるクワ・トイネ公国とクイラ王国に対するロウリア王国による武力侵攻を容認することはできません。
彼らは人間至上主義を掲げ、これに該当しない人々を虐殺することを公言しているのであります。我々は、三度の世界大戦で虐殺に対し、断固たる決意を持ってこれに対抗してきました。
私の祖父でもある大高弥三郎元大統領は、世界平和のために献身的な努力をしてこられました。我々の平和は、敵味方問わず多くの人の血によって築かれているのです。
今、我々の友人である二カ国は亡国の危機に瀕しています。日本国憲法は、世界平和を守るために日本国民の積極的な貢献を求めています。我々が築き上げていた価値観と信念が、今問われているのです。
世界平和を守るため、我々は行動しなければなりません。本日、日本国政府は本議会に対して国連憲章42条に基づき、ロウリア王国に対して宣戦布告することを要請いたします!」
アメリカ ワシントンD.C 下院本会議場
「ーー我がアメリカ合衆国は圧政に置かれている人々を、決して放置しません。
『悪しき王国』であるロウリアを倒すため、そして世界に平和と自由、基本的人権、そして民主主義を広めるために、我々には行動する義務があるのです。我々が動かなければ、大勢の無実の人々が極めて身勝手な理由で殺害されてしまいます。
我々にはかつてあのナチスの膨張を止められず、世界を業火に包んだ痛ましい歴史があります。そしてその火は東海岸を襲い、ニューヨークは未遂とはいえ核攻撃を受けました。
過去の教訓を活かすべき我々が、再びこれを繰り返してはなりません。本日、私ドワイド・D・リーガンは合衆国議会に対し、同盟国を守るためにロウリア王国への宣戦布告することを議会に宣言します!」
イギリス ウエストミンスター宮殿 庶民院本会議場
「ーー議長、これは党派を超えた問題です。クワ・トイネ公国は人種とエルフやドワーフといった亜人種を分け隔てなく扱う国家ですが、ロウリアはそうではありません。彼らは平然と差別を公言しているのです。そして男は皆殺しにされるか奴隷となり、女性や子供は犯され奴隷として売り飛ばされるなど、尊厳を踏み躙るような行為を行っています。それはあのナチに匹敵する暴挙であり、我々は決して、決して許してはなりません!
私は世界が、そして我が国が培ってきた自由や平等、民主主義、基本的人権といった価値観を守るために行動するべきだと考えます。我々の決断が遅れれば、それは多くの人々が殺されることを意味します。
我々は今すぐに行動しなければなりません、今すぐに!議長。私はこの光栄ある議会において、友人を助けるため、そしてこれ以上尊厳を踏み躙る行為をロデニウス大陸から無くすため、ロウリア王国への宣戦布告の許可を議会に要請します!」
フランス ブルボン宮殿 国民議会議場
「ーー我がフランス共和国は、かつてあのナチに支配された歴史がある。
その我々が、虐殺を平気で行う国家に対して行動しないのか?答えは“Non”だ。
転移国家の中で、ナチに支配されたのは我々だけだ。つまり我々こそ、クワ・トイネ公国やクイラ王国の気持ちを一番に理解しているのである。今、殺戮を喜ぶ狂乱国家が、我々の同胞の前に舌舐めずりをしながら、その刃を振り翳そうとしている。
それに対抗する友人たちは、非力な武器しか持っていない。弱き者を助けるのが強き者の使命ならば、今こそ我々は行動しなければならない。我々は不必要な戦争は望まないが、危機に瀕している友人を助けるためであれば、喜んでその助太刀をする。本日、我々はロウリア王国の侵略に対して断固たる非難を改めて発すると共に、ロウリア王国に対して宣戦布告する!」
各国議会で行われた指導者による演説は、それぞれで視聴率が70%を超えるなど高い関心を寄せた。
遂に、長きにわたって戦争から遠ざかっていた世界は、戦争の道へ踏み切ることを決意したのである。
これに伴う各国世論の反応
日本→「嗚呼、平和な時代が終わってしまう…」
アメリカ→「非人道の鬼畜ロウリアが、侵略戦争を仕掛けてきた!ぶちのめせ!」
イギリス→「卑劣なロウリアを許すな!リメンバー・クワ・トイネ!(クワ・トイネが受けた屈辱を忘れるな!)」
フランス→「ロウリアマジユルサナイ、オマエマジコロス」
カナダ→「うわ……ロウリアって、エグいな……」
アイルランド→「大戦時のナチスに似てるじゃないか」
東方エルサレム→「ロウリア、オマエタチヲユルサナイ」
各国は遂にロウリア王国に対して、正式に宣戦布告した。
これより、中世vs近未来の戦いがロデニウス大陸で始まる。
果たして、ロウリア王国はロデニウス大陸を征服できるのか。それとも、国連軍が彼らの野望を打ち砕くのか。
首相カナタによって国連本部に派遣されたハーフエルフの少女は、実際に両親を殺害されています。過去に起きた国境紛争で村が王国に襲われた際、彼女の両親は彼女を守るために殺害されてしまいました。
まず、母が娘と父の前で犯された後に殺害され、次に娘が犯されているその前で父が殺害され、娘は生き証人として生かされたというわけです。
彼女は、この内容を大使たちに向けて演説しました。この様子は、7カ国にライブ中継されており、これを見た各国国民は、連日にわたってロウリア王国に対する抗議デモが過熱化していきました。
ちなみにこれは、あの「ナイラ証言」がオマージュとなっています。