~再会~
(……もう……あれから1年か……)
荒れ果てた街の狭い空の下、遠く離れた彼女のことを思い出す。
ジャンヌが神の声を聞き、故郷のドンレミ村を旅立った時、彼女ひとりを行かせたくないと思った僕は、都へと旅立った彼女を追うようにフランス軍に志願した。
…それから約1年。
ジャンヌと共に戦いたいという希望は叶うことなく、僕はアキテーヌやノルマンディなどの戦場を転々としてきた。
その間にジャンヌは、王太子シャルルとの謁見を果たし、サン・ルー砦やオーギュスタン砦の奪取など多くの功績を挙げていた。
フランス軍の先頭に立ち、全軍を鼓舞しつづけるその姿は………
まさに『聖女』と呼ぶにふさわしいという。
目標とするオルレアン解放も直前ということだ。
それに比べて僕は……
ろくに活躍もできていない、ただの一兵士。
それでも、彼女を追って村を旅立った時の強い想いは変わっていない。
(ジャンヌを守りたい)
神の声を聞く前の…聖女じゃない普通の少女だったジャンヌを僕はよく知っている。
大きな責任を背負った彼女をこの手で守りたいのだ。
そんなある日のこと。
ジャンヌ隊の次の目標であるトゥーレル砦を攻めるにあたり、大規模な増員が決定された。
僕が所属していた小隊もジャンヌ隊に合流する。
一兵士と聖女。
ジャンヌはとても遠い存在になってしまったけど、とにかく彼女の近くにいられる。
そして何よりも、1年ぶりに彼女と再会できるのが嬉しくて、配属の日を心待ちにしていた。
「ここがジャンヌ隊の駐屯地か…」
小隊の仲間たちと共にジャンヌ隊に合流した僕は
すぐにジャンヌを探したけど、彼女はどこにも見当たらない。
ジャンヌ隊の兵士に聞くと、軍議や会議がないときは、彼女は隊から離れ、1人きりで過ごしていることが多いそうだ。
(どこにいるんだろう…?)
ジャンヌを探しているうちに駐屯地からだいぶ離れてしまった。
………しかし、彼女はそこにいた。
「ミカエル…?
…やっぱりミカエルだわ!」
少女は、丘の上から降りてくる。
「ああ…ミカエル…。
でも、どうして…?」
僕は、今日までのことを詳しく彼女に話した。
「ミカエルが来てくれて嬉しいよ…!
ずっと心細かったの…。
“聖女”っていうのも、なかなか大変なんだよ…?
最近は、よくドンレミ村のことを思い出してたんだ。
さっきもね、ミカエルのこと…考えてたんだよ…?
ミカエルに会いたいな…って思ってたら、本当にいるんだもの、びっくりしちゃったわ」
村にいた頃と変わらない無垢な笑顔。
と、急に彼女は黙り込んだ。
「どうしたんだい…?」
「…ミカエルが来てくれたのは嬉しいけど…。
…だけど、私たちが目指すオルレアンはイギリス軍にとっても重要な拠点、敵兵も精鋭ばかりなの。
これまでも多くの仲間たちが命を落とした…。
もしも…もしもあなたまで…」
ジャンヌは、口をつぐんだ。
その先は、言葉にしたくないのだろう。
「ジャンヌ…。
確かに、まだ僕は弱い。
大した手柄もあげていないし。
兵卒の僕が隊長の君を守るなんて…おこがましいかもしれない。
だけど………だから、僕は強くなる、1日でも早く。
幼なじみの君のため、そして、僕自身のためにね」
「ミカエル…。
……………………………わかったわ。
あなたがそこまで決心してくれているなら、私も協力する!
あなたの稽古に私も付き合うわ!」
「えっ、ジャンヌが?」
「うん、私に任せておいてよ。
早くミカエルに守ってもらいたいもん。
1日も早く強くなってもらうからね!」
そういうジャンヌは、ふふっと笑っていた。
「じゃあ、早速始めましょうか」
「えっ、始めるって…」
「もちろん稽古よ。
早く強くなってくれるんでしょ?」