ボールボワールへ着くと、城門に人影が見えた。
紫の髪と瞳。
あの出で立ちは、かつて遭遇したあの女騎士…
「……オリビア!」
「ようやく来たか。
ずいぶんと遅かったじゃないか」
「ジャンヌはどこだ!?」
「あの聖女さえいなくなれば、我々の勝利はゆるぎないものになる。
そうすれば、百年にもおよぶ、この意味のない戦争がようやく終わる。
お前にもわかるだろう?
あの女は平和のための障害なのだ。
そんな女の居場所を私がやすやすと教えると思うか?」
僕の剣が鈍く光る。
「………ならば力ずくで聞き出す!」
「ほう?
ずいぶん強気になったものだ。
しかし、今やお前も我々の脅威のひとり。
ここで息の根を止めてくれよう!」
………………………………
「くッ…!?」
「言え!ジャンヌはどこだ!?」
オリビアの喉元に触れるか触れないかの距離で僕の剣先が鈍く光る。
「………まさかこの私を凌ぐとは………。
大したものだ」
「そんなことはどうでもいい!
ジャンヌはどこにいる!」
オリビアの口元が緩む。
「残念だが、もうここにはいない。
すでにルーアンへ移送された」
「なに…?」
「あの女を宗教裁判にかけるのだ。
………判決が最初から決められた裁判だがな」
「くそっ………!」
僕は再び馬に飛び乗る。
ルーアンか、急がなければ!
「待て、街道はイギリス軍が封鎖している。
いくらお前でも間に合わないだろう」
「それがどうした。
だから指をくわえて見ていろとでも言うつもりか?」
「そうじゃない。
私についてこい、ルーアンまで連れていってやる」
「ふざけるな!
信用できるわけがないだろう!?」
「それはそうだろう。
しかし、お前ひとりでは絶対に間に合わんぞ」
「……お前に何の得がある?」
「なにもない」
「信じる証拠はあるか?」
「証拠はない。
しかし、この剣に誓おう。
……………断っておくが、聖女を救うためではない。
お前が絶望する姿を見るためだ」
「なんだと?」
「たとえルーアンにたどり着いても、最早聖女を救うことなどできまい。
あれは、最早聖女などでは……」
「どういう意味だ?」
「………まあ、実際に聖女と会ってのお楽しみだ。
とにかくルーアンには連れていってやろう。
私についてこい!」
こうして、オリビアと共に僕はルーアンへと急いだ。
オリビアの言う通り、街道はイギリス軍で溢れている。
確かにオリビアがいなければ、どうしようもなかった。
いずれにせよ、明日にはルーアンに到着するはずだ。
(ジャンヌ!ジャンヌ!ジャンヌ!)