オルレアンの乙女の守人   作:アリス・リリス

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~鍛練の日々~

 

「………はぁ、はぁ」

「あらっ?

これぐらいで息が上がっちゃったの?」

「えっ!?

こ、これぐらいって、かなりキツかったよ?」

「ふふっ、冗談よ♪

 

よく頑張ったね。

きっとあなたはとっても強くなれるわ」

 

 

ジャンヌの笑顔に僕は、頷くことしかできない。

 

すると、ジャンヌはおもむろに剣を抜き、僕に向ける。

 

「ジャ………ジャンヌ……?」

 

「次は、今のあなたの実力を見せて。

本気でかかってきていいよ」

 

「でっでも…」

 

「そうしないと、上手く鍛練ができないでしょう?」

 

「……あぁ、そういうことか。

それじゃいくよ、ジャンヌ!」

 

「さあ、いくよ!

かかっておいで!」

 

 

ヤアッ!

ウッ!

トウッ!

セイッ!

ウッ!

それッ!

 

 

 

……………………………………………………………

 

 

 

ダメだ…

 

明らかに手加減してくれているのにまるで敵わない…

 

1日も早く強く、なんて言ってみたところで、これじゃ話にならないな…

 

「…ミカエル」

「すまない、ジャンヌ。

今はこんなだけど、いつか必ず…」

「そうじゃないの、ミカエル。

もしかしたらあなたは…」

「?」

「あ、ううん。

ごめんね、何でもないの」

 

 

自分の不甲斐なさに、怒りに似たやる気が湧きあがってくる

 

「絶対に強くなって、ジャンヌを守ってみせるぞ!」

 

丘の上に立ち、力の限り叫んだ。

 

 

「それじゃ、つづきはまた明日ね。

鍛練は、毎日やらないと意味がないから、無理のない回数を設定してかならず毎日つづけるんだよ?」

 

僕は、ジャンヌの背中を見えなくなるまで見つめていた。

 

 

ジャンヌ…………

君は何を言いかけたのかい?

 

 

ジャンヌの背中は、何も答えないまま、城の中に消えていった。

 

――――――――――――

 

こうして僕とジャンヌの鍛練の日々が始まった。

 

――――――――――――

 

「……はぁ、はぁ」

「ふふっ、今日も頑張ったね。

お疲れさま♪

 

 

それにしても、すごい汗だね…。大丈夫?」

 

「あぁ、……大丈夫。

ぜぇぜぇ…」

 

 

張り切って始めたのはいいけど、彼女の指導は想像以上に厳しいものだった。

 

「ねぇ、本当に大丈夫?」

「うん、もう大丈夫」

 

 

休憩……なんて甘いこと言ってられないか

 

しかし、ジャンヌのおかげで戦いの技術を多く学べる

 

それだけに自分の力不足を痛感してしまう

 

僕が守るべき女性、ジャンヌ

 

……よりも明らかに弱い自分

 

その事実が僕の背中にずしりとのしかかる

 

「そんなことを考えていたらダメよ」

 

「えっ?」

 

「ミカエルに必要なのは、自信だよ。

もっと自分の能力を信じないといけないわ。

 

きっとあなたは、あなたが望んでいる通りの自分になれる」

 

そう言って僕の顔を覗き込むジャンヌ

 

 

(ぜんぶお見通しか……)

「こんなに弱い僕が本当にジャンヌを守れるようになるのかな…?」

 

「なれるわ」

 

「……本当に?」

 

「えぇ、本当に」

 

言い切るジャンヌに迷いはない。

 

「あなたはきっと強くなる。

その証拠に今日の鍛練だけでも剣士としてかなり上達しているもの」

 

自分では全くわからないけど……

 

「ジャンヌにそう言ってもらえると本当にそんな気がするよ」

 

「ふふっ♪

それじゃ、明日も頑張りましょうね。

絶対に怠けたらダメだからね?」

 

「大丈夫、分かってるさ」

 

 

――――――――――――

 

「お疲れさま、今日も頑張ってくれて嬉しいな♪」

 

「………はぁ、はぁ。

約束……はぁはぁ……したからね……」

 

「さてと、それじゃ今日の稽古はこれくらいにしておこうか」

 

「ああ、正直そうしてくれると助かるよ……」

 

「まだはぁはぁ言ってる。

私、お水を持ってくるね。

ちょっと待ってて?」

 

「ありがとう、頼むよ」

(…………)

 

ジャンヌ隊と合流してから数日経った。

 

何度か敵軍との戦いがあった。

部隊を率いるジャンヌはどこまでも凛々しく、兵士たちを奮い立たせるほどに気高く、その姿はまさに聖女であり、二人でいる時の姿とは全く違う。

 

 

(……………)

 

それから僕は、僕らが育ったドンレミ村のことを思い出す。

 

村で暮らしていた頃には戦場に来るなんて思いもしなかった。

 

(懐かしいな…………)

 

「パン屋のおじさん、元気かな………」

 

 

ふとそう呟いたのを、水を持ったジャンヌが聞いていた。

 

 

「パン屋って、ドンレミ村のパン屋さん?」

 

「うわっ、ジャンヌ!」

 

「ふふっ、驚かせちゃった?

ごめんなさい。

はい、これお水」

 

「あぁ、ありがとう」

 

「懐かしいね、あのお店のパンはとてもおいしかったな」

 

「うん、そうだったね」

 

「そういえばミカエル、小さい頃に勝手にパンを食べちゃって叱られてたわね」

 

「そんなことまだ覚えているのか?

恥ずかしいから忘れてくれよ…」

 

僕の言葉にジャンヌは、きょとんとした顔を見せる。

 

「どうして?

全部楽しい思い出じゃない」

 

 

再びくすくすと笑うジャンヌを見て、僕まで笑顔がこぼれる。

 

 

「………明日はいよいよトゥーレル砦ね」

 

 

そう、明日はトゥーレル砦に総攻撃をかけることになった。

 

「激しい戦いになりそうだ。

……どうか無茶はしないようにね、ジャンヌ」

 

「私は大丈夫よ。

それよりあなたの方が心配だわ…」

 

「……それはそうか」

 

 

トゥーレル砦を陥落させれば、イギリス軍のオルレアン支配はかなり困難になるはずだ。

 

ジャンヌのために、そして僕のために、明日は勇敢に戦わねばならない。

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