「うん、素晴らしいわ!
一流の騎士にも、もう引けをとらないね」
ジャンヌは、嬉しそうに笑う。
「確かに昔よりは強くなった……気がする」
「気のせいなんかじゃないわよ。
すごく頼りにしてるんだからね」
あの月の晩と同じように僕の肩をぽんと叩く。
「そうか…そうなのかなぁ。
よく分からないな…」
「それでいいと思うよ。
ずっと連戦連勝しているから、みんな油断しはじめている。
そんな中で、日々の鍛練を怠らないあなたの存在は、本当に頼もしいもの。
ランスまではあと少しだけど、そろそろ何かが起きそうな気がするの…」
――――――――――――
ジャンヌの予感は的中した。
オルレアン解放後、王太子シャルルを戴冠させるため行軍を続けるジャンヌ隊。
戴冠式を行うランスへ向かう途中、何度か敵軍とまみえたけれど、こちらがジャンヌ隊であることに気づくとすぐに撤退していく。
大きな戦闘は起こらないまま、まもなくランスへ到着する。
ランスでの戴冠を経て、王太子は正式なフランス王となる。
そうすれば、フランス軍はますます勢いに乗り、ますます勝利を重ねていくに違いない。
隊の誰もがそう思った矢先、敵軍の一隊が襲いかかってきた。
20人ほどの騎兵を率いて、先頭を走る騎士が高らかに叫ぶ。
「貴様がオルレアンの聖女だな!」
敵隊長と思われる騎士が旗を持つジャンヌを見て叫んだ。
(……女!?)
彼女はかけらも速度を落とさずにジャンヌの方へと突き進む。
「狙うは聖女の首のみ!
聖女の首以外は何もいらぬ!
ザコどもには構うな!突撃!」
「そんなこと、させるものか!」
僕は剣を引き抜き、急いで彼女の前へと飛び出した。
「僕はジャンヌの
ジャンヌには指一本触れさせない!」
「ほう、私に刃向かうというのか!
ならば、私の刃を受けてみろ!」
僕は女騎士と剣を交えることになった。
「ヤアッ!」
「くらえっ!」
「ウッ!」
………………………………
トゥーレル砦で戦った守備隊の兵士よりもはるかに強い。
しかし、僕はジャンヌから学んだ技術を生かして、応戦する。
「イギリス軍屈指の我が刃を受けとめるなど…あり得ぬ!」
女騎士は、間合いを取ると、剣を収める。
「………くっ………誤算だ!
聖女の前にこれほど手間取るとは……!
仕方ない、撤退する!」
合図と同時に敵隊は素早く散開、迅速に撤退を開始した。
「待てっ!」
僕の呼びかけに女騎士が振り向く。
彼女の口元は笑っていた。
「………聖女の首は取れなかったが、久々に楽しませてもらったぞ。
私の名は、オリビア・ド・ラ・ポール。
貴様との勝負はいずれつけよう。
それまで精々強くなっておけ!」
(確かに…強かった)
「ミカエル」
ジャンヌが優しく呼びかける。
「私を守ってくれて、ありがとう」
「……………」
正直、喜べない。
なぜなら、奇襲を阻止できなかったからだ。
「ミカエル、私は傷ひとつしていないわ。
だから、自信を持って」
「ジャンヌ…」
「さあ、急ぎましょう!ランスへ!」
――――――――――――
その後、すぐに軍は立て直されランスへの行軍を再開した。
奇襲を受けたことでジャンヌ隊をはじめ各隊にも緊張が戻った。
そして、戴冠式の執り行われるランスへの行軍を再開した。
「オリビア隊長の剣を受けとめる騎士がまさかフランス軍にいるとは……」
「世の中は広いものだ…」
撤退するなかで数人の兵士がミカエルの話をしている。
「黙れ!
黙らぬのなら、ここで私の剣を受けるか!?」
オリビアは、剣を引き抜くと、剣先を兵士の喉元につき出す。
「はいっ!黙ります、隊長!」
「よろしい。
まもなく宿営地に到着する。
しかし、警戒は怠るな!」
オリビアは、兵士たちに背を向ける。
(ミカエル…か)