オルレアンの乙女の守人   作:アリス・リリス

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~聖女の影~

「やっぱりね、私の思った通り。

この短期間で本当に強くなったわ。

こんなに才能があったのに…………、村にいた頃は全然気づかなかったわ」

 

 

オリビアとの戦いを経て、ますます鍛練に励んできた僕は少しずつではあるけれど、自分の成長を自覚できるようになった。

 

ジャンヌも得意気に見える。

 

 

「ありがとう、ジャンヌ。

君のおかげだよ」

 

「そんなことないわ。

ミカエルがすごく頑張ってくれたからよ。

もう立派な騎士ね」

 

 

 

ジャンヌは、嬉しそうに笑った。

 

兵士たちの前では凛々しい彼女も僕と二人でいる時には無邪気な笑顔を見せてくれる。

 

そのことがとても誇らしく、嬉しく思えた。

 

 

 

 

 

そして、その日の夕刻。

僕たちジャンヌ隊は、王太子シャルルと共にとうとうランスへ到着した。

 

 

ランスに到着したジャンヌ隊は市民たちに歓迎された。

 

 

王太子シャルルの戴冠式はかつてないほど盛大に行われ、ここに王太子シャルルは正式にフランス王シャルル7世となる。

 

 

 

 

これでジャンヌが受けた神託、『オルレアン解放』と『シャルルのランス戴冠』、その2つともが成し遂げられたことになる。

 

 

 

だけど、…………ジャンヌの戦いはまだ終わらない……もはや終わることを許されない。

 

 

――――――――――――

 

 

「お疲れさま、ますます剣に磨きがかかってきたね。

そろそろ、どっちが稽古をつけてもらってるのか分からなくなってきちゃったわ」

 

 

 

ランスでの戴冠式から1ヶ月…

 

フランスの正式な王としてシャルル7世が即位したものの、いまだ首都であるパリは、イギリス軍の支配下にあるため、ジャンヌ隊にパリ奪還の命令が下された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パリへの攻撃を始めてから10日。

 

これまでの連戦で兵士たちにも疲れがうかがえる。

 

さすがに敵の士気も高く精鋭が揃っていて恐ろしく強い。

 

けれど、ジャンヌは疲労を微塵も見せず、兵を奮い立たせる。

 

 

 

「神のご加護は我々のもの!

 

誇り高きフランスの兵士たちよ、進みなさい!

この戦いは聖戦です!

フランスが勝利するその日、まで戦い抜くのです!」

 

 

ジャンヌの強い意志によって兵士たちも勇気づけられ、局地戦の多くにおいては無事に勝利を収めていたが……………。

 

軍の中には

『ここまでの戦果で十分』

『停戦し外交政策を進めよう』

 

という声が少しずつ増えてきた。

 

 

 

――――――――――――

 

ふと、僕はジャンヌの異変に気づいた。

 

「ジャンヌ、少し休んだ方がいい。

顔色が悪いよ…」

 

「そんなことないわ、大丈夫。

もっともっと頑張らないと……」

 

再び木剣に手をやろうとするジャンヌ。

 

僕はその手を握った。

 

 

「もう十分頑張ってるじゃないか。

僕だけじゃない、国中の人がよく知ってる」

 

「だけど……だけど……」

 

「どうしたんだい、ジャンヌ?

とても不安そうに見える」

 

「………不安……そう?私が?」

 

「うん」

 

「…………そうだね。

不安、なのかもしれない。私………」

 

「何が不安なの?」

 

「ん………自分でもよくわからない。

だから、余計に不安なのかもしれないわ…」

 

「………」

 

「ごめんなさい、気が緩んじゃったみたい。

少し休めば良くなるわ」

 

「うん、どちらにせよ、今日は早く休んだ方がいい」

 

「ありがとう。

それじゃ、また明日ね」

 

「無理はしないようにね」

 

「大丈夫。

無理をしてでも来るから。

あなたと稽古をしている時間は、今の私には何よりも大切なんだもの。

あなたも怠けたらダメだからね?」

 

 

ジャンヌの後ろ姿が城の中に消えていくまで、見ていた。

 

 

 

(ジャンヌ…………)

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