「はぁ…はぁ…」
ジャンヌは、剣を鞘におさめると満足そうに笑った。
「これまで本当によく頑張ったね。
もう私より強くなっちゃったわ」
「本当に?」
「本当よ、私が嘘を言うと思うの?」
「いや、まあ。
それはそうだけど…。
実感がないからよくわからないなぁ…。
まだまだジャンヌには遠く及ばない気がするし。
あっ、いや。
ジャンヌが嘘をついていると思ってる訳じゃないよ?
つまり、なんというかその………」
するとジャンヌは、困ったように笑う。
「仕方ないわね、じゃあ………」
そして、ジャンヌは再び剣を抜く。
「もう一度戦ってみましょう。
それが一番分かりやすいわ」
「そうだね」
「手加減はしなくていいわよ」
「ジャンヌも手加減しないでくれよ」
ヤアッ!
セイッ!
カーン!
それっ!
隙ありっ!
カーン!
「「あっ!」」
ジャンヌの剣が弾き飛ばされた。
それを見て、ジャンヌはそっと言った。
「……私の負けね」
「いや、しかし…」
僕の言葉を遮るように彼女は言う。
「なあに?
まだ信じられないの?」
「だって…」
「だっても何もないわ。
これがあなたの実力なのよ。
今のあなたに勝てる騎士なんて国中見渡してもきっといないわ」
「…………ジャンヌのおかげだよ」
「そんなことない。
あなたの頑張りがなければ、ここまで強くなれないわよ」
「君を守りたいと思ったから、強くなれた。
これまでの努力は全てジャンヌのためだ」
「ふふっ、そうだったわね」
ジャンヌは、楽しそうに笑う。
「誰かに守ってもらえるのって、心強いわ。
これからも頼りにしてるからね」
二人で青い空を見上げ、村での懐かしい日々を思い出す。
「ドンレミ村のみんなに早く会いたいな…」
あの日々を取り戻すには、この戦争を終わらせなければならない。
そのためにも、もっと強くならなければ…。
「もうすぐ進軍を再開するわ。
また軍議で会いましょう」
昨晩の軍議で敵の兵站線を崩すことが決まり、ジャンヌ隊は単独で郊外を進軍していた。
しかし、運悪く敵の斥候に見つかり、敵の大隊に包囲されてしまった。
「くそっ!」
ジャンヌは、先頭にいたはず。
僕は必死にジャンヌのもとへ向かうが、あまりにも敵の数が多い。
戦況は不利になる一方だ。
(ジャンヌ!
どうか無事でいてくれ!)
祈りながら進んでいくと、敵兵に囲まれているジャンヌが見えた。
「ジャンヌ!」
苦戦するジャンヌの傍らへ走り、彼女を囲む敵と対峙した。
「ジャンヌ、もう大丈夫だ!」
「ミカエル………!」
集団を相手に一人で戦うのは初めてだった。
しかし、僕は必死に剣を振るう。
敵兵の群に切れ間ができた瞬間、僕はジャンヌの手を掴み、全速力で包囲網から脱出した。
そして、そのまま他のジャンヌ隊兵士と合流した。
なんとか戦線を切り抜けたジャンヌ隊は、近郊の街へと逃れた。
ジャンヌも別の場所で傷の手当てを受けている。
(大丈夫だろうか………)
落ち着かずにうろうろしていると、ジャンヌが僕のもとを訪れた。
僕は慌てて立ち上がる。
他の兵士たちもジャンヌを心配して集まってきた。
あっという間にジャンヌを中心に人だかりができる。
「………隊長、歩いて平気なのですか?」
他の兵士たちの目を気にして、僕はよそよそしく話しかける。
「ええ、大きな傷はありません」
ジャンヌは、じっと僕のことを見つめる。
「本当に………感謝しています。
あなたは私……ジャンヌ・ダルクの恩人です。
その武勇がなければ、私はあのまま命を落としていたことでしょう」
ジャンヌの言葉を聞いて、大きな歓声が起こる。
他の兵士たちも僕へ惜しみなく賛辞をむける。
「本当に…………ありがとう」
二人でいるときとは口調は違うけど、ジャンヌが本当に喜んでいるのは分かった。
これでようやく………ジャンヌを守れたといえるのだろうか?