ジャンヌと離れてから半年。
アキテーヌに赴任した僕は着実に敵軍の砦を落とし、順調に所領を回復させていた。
司令官もこの戦果には満足してくれていて、ボルドーを陥落させた折りには、多額の恩賞とともに退役させてくれると、固く約束してくれた。
そして、ボルドーはもう目前。
このままなら来月に攻略できる。
そうすれば、再来月にはドンレミ村に帰ることができるだろう。
そしたら、ジャンヌのために色々と準備をしてあげよう。
まずは、彼女に贈る指輪。
腕の良い職人を探して、とても綺麗な指輪を作ってもらおう。
きっと…きっと…ジャンヌは喜んでくれる!
そう、すべては恐ろしいほど順調だった。
…歯車を狂わせる知らせが届くまでは…
「ジャンヌが捕まった!?」
突然のその知らせに耳を疑った。
情報をきちんと理解できない。
「はい、もう一度詳しく話します―」
伝令によると、ジャンヌが捕縛されたのは、10日前。
敵のブルゴーニュ軍にコンピエーニュの町が包囲された際、一向に救援を出そうとしない国王にしびれを切らして、ジャンヌ隊は単独で救援に向かったらしい。
しかし、あまりに多勢に無勢。
城外であっという間に敵軍に包囲され、ジャンヌ隊は壊滅。
ついに、ジャンヌは捕縛されてしまった、というのだ。
「どうして…こんなことに…」
「それは…言えません」
「頼む!教えてくれ!」
「……………そうですね。
あなたは、ジャンヌ隊長のご友人、真実を知る権利がありますから。
では、お話しします―」
半年前、僕がジャンヌ隊を離れた頃にはすでに、ジャンヌはフランス軍内で孤立していたらしい。
戦況が膠着したため、パリ奪還の方針を『長期の外交政策』へと変更した国王らにとって、短期決戦を主張するジャンヌは邪魔者となっていたようだ。
その証に国王は、ジャンヌ救出の軍も出さず、ただ静観しているだけだという。
ジャンヌを見捨てたのか?
フランス救国の聖女を?
つい半年前までは、あんなに褒め称えていたじゃないか!?
なんてことだ…!
ジャンヌは……ジャンヌは好戦派なんかじゃない!
ジャンヌが短期決戦を求めたのは、僕との約束を果たすため…!
(国王様とも約束しちゃったの…。
パリを取り戻すまでは軍にいるって…)
国王とそう約束したからだ!
早く戦いを終わらせるためだ!
一日も早くドンレミ村に帰りたかったからだ!
なのに………それなのに!
ジャンヌが現れるまでは、ロシュ城に隠れていた
かつての生活に戻りたがっていたジャンヌを軍に縛りつけたのは、お前のせいだ!!!
国王らへの怒りが溢れ、僕は取るものも取らず飛び出した。
(無事でいてくれ、ジャンヌ!)
そして、単身で馬を走らせると、彼女が幽閉されているという、ボールボワールへと急いだ。
「待てっ!」
司令官が呼び止める声がするも、無視する。
「反逆罪に問うぞ!」
もう反逆罪なんて、怖くない。
あのジャンヌを見捨てた、臆病者・シャルルに忠誠など誓えない。
ジャンヌを取り戻し、ドンレミ村に帰るんだ!