Front Mission 5 ~Curse of the past~   作:。(くてん)

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 追体験ではなく、実際に過去に戻っていると確信を得たウォルター。訓練期間を終え、全ての試験を終了してから三ヶ月後。







02-1 Return the past

 

 

 

 

 ブリーフィングルームには大勢の同期がいた。それもかつての話である。ヴァンツァー戦による度重なる消耗を経て、第二次ハフマン紛争終結時に生還した第21期生は、五人だけだった。

 

 ダモン、ジェイミー、クリスティン、ジム。

 そして俺の五人だけが……。

 

 その時に、ランディはS型デバイスの酷使によって記憶を喪失したグレンの手によって殺された。俺はその時の経験が原因で、かつてリンを庇ったあの時まで笑えなくなっていた。

 死に場所を求めていた、と言うべきだった。着いてきてくれていたダモン達には申し訳なさもあったが、それ以上にグレンを見つけて倒し、あるいはそこで死ぬ、あの時はそればかりを求めていた。

 

 結果として覚悟してはいたが、その通りになったのだが。

 

 首を回して辺りを見渡す。昔の合格した第21期生は11名だった。今期……といっても、過去と今はまったく同じである。

 今期は何名残ったろうか。変わらなければ11名のままであるが───数え上げてみれば、見覚えのない訓練生がいた。

 

 若い女性で、茶髪を後ろに緩く纏めたような、目尻の垂れた温厚そうな表情を浮かべている。

 

 興味が湧いて、その訓練生に尋ねた。

 

「よう。調子は?」

「あ、ウォルターさん。ぼちぼちです」

「ぼちぼち、か。合格は出来そうか?」

 

 その問いに、彼女は少し呻く。

 

「……どうでしょうか。私もランディさんと同じで、皆さんの倍以上に搭乗時間が長いですから……」

「そうなのか?」

 

 ランディを見る。俺たちの話をこっそり聞いていたランディは、こちらに近寄ってきて彼女に言った。

 

「おい、俺たち落ちるなんて言わないよな、エルシャ?」

「いえ、その……えへへ」

「おいおい頼むよぉ……」

 

 エルシャ、とランディが呼んだこの女性兵士は、ここにいるということはヴァンツァーの搭乗資格試験に合格したということなのだろう。落伍者はこの時点で全員振るい落とされ、歩兵として治安維持活動に当たっているためである。

 

 反応が面白いので黙っておくが。

 

 エルシャはランディと同じく不出来なようで、しかしここまで食いついてくる意地は持っているようだった。ここにいるのはこれで12名。つまり今までの11名の中に、エルシャが加わった形になる。

 

「ウォルターさんは緊張……しませんか?」

「ああ。俺はあまり」

「あ、クソ。余裕かましやがって。お前はいいよなぁ。全項目で好成績だったんだろ? 俺とかエルシャなんか怒られた記憶しかねえよ。なあ?」

「デニス軍曹の怒鳴り声がずっと頭に残ってます…」

 

 まあ、ここにいる時点で合格確定なのだが。それだけランディもエルシャも訓練に熱意を持っていたという事である。

 

 ……反応が面白いので黙っておくが。

 

 特に何事もなく時間が過ぎていく。端の席に座っていたダモンが離席したと思うと、爆速と言うべきスピードで戻ってきた。これは確か、トイレに行ったんだったか。その隣にいるクリスティンも驚いている。

 ちなみにジムは後ろの方に座ってブツブツ言っていた。多分祈っているんだろう。

 

 ジェイミーが俺たちに話しかけてきた。

 

「よ、ウォルター。余裕そうだな」

「まあな。そっちは?」

「やるだけやった。合格しなかった時のことは考えないようにしてるよ。もし合格したら、バディはお前と組みたいぜ。お前は強いからな」

 

 その言葉にランディが食ってかかる。

 

「あ、おい。組むのは俺だぜ。ずっと親友なんだもんな。なあウォルター?」

「ふっ、さあなぁ。案外ジムあたりかもしれないな?」

「……えっ? 俺?」

 

 ボソッと振ったのに食いついてくる。ジムはそういう奴だ。ただ、ジャマーとして秀でた才があった。空気を読まない性格のせいで、キャラクター的には残念な感じだが……。

 

 という目を向けると、ジムは席を移してこちらに寄ってきた。

 

「おい、今凄い失礼なこと考えてなかったか?」

「気のせいだろ。さ、もうすぐ教官が来るぞ」

 

 時計は既に10時を回っていた。もうじきデニス軍曹が来る頃合いだった。みんなを席に着かせ、俺も着席する。ランディが扉をちらちらと見ていたが、やが教官が来たことで背を正した。

 

 今日は2090年の6月4日。

 ……あの第2次ハフマン紛争が始まった日でもある。

 

 ランディがボソッと呟いた。

 

「クソ、誰だよ余計な事したのは……。O.C.UとU.S.Nの国境をようやく行き来できるようになってきたってのに……」

「静かに。始まるぞ」

 

 

 

 それは、教官の言葉だった。

 

 どれだけ技術が発達しようとも、それを操るのは人間だ。能力を磨け。ヴァンツァーの性能は、諸君らの能力に他ならない。決して怠るな。

 

「分かったか」

「サー・イエッサー!」

 

 デニス教官が訓練生の座る席の間を抜け、壇上に立つ。振り向いて全てが終わったことを告げる。

 

「これを以て、全カリキュラムを終了する。 諸君、合格だ。おめでとう」

 

 その言葉と共に全員が立ち上がり、喜びを表した。ランディやエルシャ、ダモン達も立って喜びの意を示している。

 

「やったな!」

「ああ、ついにここまで来たな、ランディ」

「よかった……てっきり落ちるのかと……!」

 

 全員が各々で喜んでいると、ブリーフィングルームと廊下とを繋ぐドアが開く。そこから現れたのは、数々の勲章を得て大佐へと上り詰めた、ローランド大佐だ。

 

「残ったのはこれで全員か。落伍者は何名出た?」

「91名であります」

 

 デニス軍曹が敬礼をする。

 

「この中に味方を踏み潰すやつはいるか」

「おりません大佐。全12名、即お役に立てる状態です」

「よくやった。あとは私から伝える」

 

 軍曹はローランド大佐に敬礼をし、部屋の隅に下がる。そして改めて大佐が壇上に立つと、合格者となった訓練生、つまり俺達を見て言葉を繋いだ。

 

「よくやった諸君。楽にしたまえ。さて、本来ならば休暇前にパーティを満喫してもらいたいところではあるのだが───」

 

 そして告げられる緊急事態宣言。話の概要としては、ラーカス地区を襲撃したO.C.U側が、今回の事件はすべてU.S.N側の狂言であるとこちらを逆に糾弾する内容であり、これに対するU.S.Nがこれらを宣戦布告とみなしてO.C.Uへの報復攻撃、及びに侵攻作戦を開始する……というものである。

 

 それに続いて説明される作戦の内容も聞いたことのあるもので、ペセタへ四個師団を向かわせて敵の戦力を排除しつつ前進し、同時に航空より一個師団が強襲降下作戦を実行する事で陸と空から挟み、敵を殲滅する、というものだ。

 

 当時の観点から見れば確かに、史上類を見ないヴァンツァーの大規模戦闘だ。

 

 しかし、ヴァンツァーに乗って実戦をするのが初めてである第21期生は、激戦となるだろう第一陣、その後詰となる第二陣からは除外され、彼らが取りこぼした残敵を掃討する第三陣に回ることになる。

 

「……以上だ。何か質問は?」

 

 その問いに返す者はいない。全員がその全容をしっかりと把握していた証左である。

 

「よろしい。詳細は軍曹から説明される。今後は彼の指示に従いたまえ。諸君らの活躍を期待する」

 

 ローランド大佐はそう言い、退室していった。

 

 ここから全てが始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (エルシャ)は戦えるのだろうか。

 ()()()()()()を、かつての友を前に。

 

 もちろんそれらは全て、O.C.Uから亡命してきた時に覚悟していたことだ。それでも私に重責としてのしかかってくる。

 

 デニス軍曹からバディを言い渡される。私と組むのは、ランディさんだった。

 ランディさんは親友のウォルターさんと一緒に組めなかったのを不安そうにしていた。私じゃ不安なのも仕方ないかもしれない……。

 

「ううっ、ウォルターとは別のチームか……だ、大丈夫だよな。な、エルシャ?」

「きっと大丈夫、だと思います。 ……多分」

 

 安心させようとした返事は、後ろへ行くにつれて頼りなくなってしまう。うう、こんな事でバディが務まるのかな……。ランディさんにも申し訳なくなってきた。

 

 けれど、軍曹は私とランディさんをしっかりと評価してくれていた。じゃなきゃここに今、私たちは立ってない。そのはずなのだから。

 

「各員。機体のセットアップは済ませてある。お前達、訓練の成果を存分に発揮しろ。以上!」

 

 デニス軍曹の言葉で全員が格納庫へ向かう。ペセタシティへ向かい、残った敵を倒す任務だ。ヴァンツァーに搭乗して初の実戦、上手くやれるかな。

 

 不安が渦巻く中、ウォルターさんはダモンさんと組んでいた。ダモンさんの機体はランチャー。ミサイルを搭載して遠距離制圧に特化したヴァンツァーで、ウォルターさんは機動力と近距離での火力を活かしたアサルト。

 

 特にウォルターさんは、全期最高の素質の持ち主と言われるほどに操縦技術が高いという話だ。訓練中でも小隊長としての資質を見せていて、一目置かれる存在だった。

 

 反面私は悲しい事に、優柔不断だから小隊長には向かないし、決断力が低いからストライカーにも向かないという理由でガンナーだ。射撃能力だけは高く評価してもらえたから、このジョブは妥当だと思っている。

 

 ランディさんは、味方の衛生兵の立場になる、メカニック。平均的な操縦技術だったそうだけれど、アサルトみたいに戦いつつ味方を後ろから援護するにはベストだとも言われていた。

 

「タンゴ15! エルシャ伍長! いるか?」

 

 後ろから追いかけてきたデニス軍曹の声に、恐る恐る振り返る。確かにその声の主は軍曹だったが、何か怒っている様子でもない。何かやらかしたわけではないので当然だが……。

 

「は、はい、教官! あ、いや……軍曹どの!」

「うむ、ランディ・オニールはどこだ?」

「ぇ……あ、あっちです、サー!」

 

 私じゃなくてランディさんに用事があったらしい。指を差すと、その先にランディさんを見つけて軍曹どのは歩いていった。

 何かあったのかな……。

 

 あまりその事を考えたくないので、私はセットアップされたヴァンツァー、レクソンのコクピットに入った。

 既にセットアップされている通りで、武装はライフル・ウィニー。バックパックはターボアイテムで、出力を強化しつつ少量のアイテムも携行可能な優れものだ。

 それ以外は全てレクソンの基礎フレームで構成されている。訓練で搭乗したものと変わりなかった。変わっているのはバックパックが元々ターボだったという点だけで、使用感は変わらなさそうだ。

 

 よし。

 訓練通りにやれば生き残れる。

 

 ……そう信じよう。

 

 

 

 






 ウォルター・フェン(二周目)
 Walter Feng.

 基礎訓練過程全てを最優良成績で終えた、第21期生を代表する訓練生。
 ヴァンツァーはフロスト。装甲の堅牢なフレームであり、ショットガン・ゲイルとパイルバンカー・プレスニードルを装備し、リペアアイテムをバックパック・ターボアイテムに搭載している。


 ダモン・マンフィールド
 Damon Manfield.

 ジョブ・ランチャーに適性を持つ、ウォルターの同期となる訓練生。
 ヴァンツァーはシャイアン。ミサイル・ドンキーを装備し、遠距離からの攻撃において優勢に働く。バックパック・アイテムターボにミサイル予備弾倉を装備する。


 ランディ・オニール
 Randy O'Neill.

 ウォルターと同じホーム出身の、大食いで知られる訓練生。
 ヴァンツァーはエルドス。シールドとマシンガン・ラプターを装備し、バックパックにリペアを装備して味方の援護に優れた機体。攻撃と味方の支援で戦線を支える。


 エルシャ・ハヅキ(オリジナル)
 Erusha Haduki.

 ウォルターの知る過去には存在しなかったはずの、後ろ暗い由来を持つ第21期の訓練生。
 ヴァンツァーはレクソン。ライフル・ウィニーを装備し、バックパックにリペアアイテムを複数搭載している。狙撃というよりも、中距離での射撃戦を得意とする。

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