Front Mission 5 ~Curse of the past~   作:。(くてん)

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02-2 Risk on Battle

 

 

 

 

 2090/6/10。

 

 6月の10日は、忌々しいあの紛争が始まった時間だ。思えばこの時から既に、モーガン・ベルナルドの陰謀は渦を描いていたのだろう。

 

 捕虜を移送する兵士に偽装し、実験体を確保する。至極単純で、だからこそ見破られにくい手段でもあった。

 

 グレンも奴の手にかかって……。

 

 それを避ける未来を探したい。どうすればいいかは分からないが、やれる事を探すべきだ。

 

 ペセタ市から10km地点。俺たちタンゴチームは、第三陣として敵ヴァンツァーチームの敗走組の掃討を担当する手筈になっている。

 

 ランディから通信が来る。

 

『タンゴ6、聞こえるか?』

「……タンゴ14、私語は厳禁だぞ。どうした?」

 

 このやり取りをした記憶が蘇ってくる。あの時の俺は、実戦に身を投じるのに恐怖を感じていた。ランディもそうだった。

 

『すまねぇ。……なあ、グレンは向こうにいるかな?』

「! ……グレン、か」

 

 そうだ。この時はまだ、グレンが敵として現れることを俺たちは知らなかった。俺はいつ交戦したか思い出せるが、ランディは記憶を持っていない。つまり思い出すことさえ不可能なのだ。

 

 俺が変える必要がある。全部を。

 

 

 

 

 

 

 私はいつ訪れるかわからない戦いに怯えていた。実戦が怖い、それは当然だと思う。でも、向こうにいるウォルターさんは怖いものがないような素振りをさえ見せている。余裕を持っているんだろう。

 

『なあ、グレンは向こうにいるかな?』

『……わからん』

 

 ウォルターさんとランディさんが話す。共通の単語として《グレン》という男性の名前が聞こえてくる。それが気になって、つい口を出してしまった。

 

「あの、グレンさんって?」

『タンゴ15。私語は厳禁だぞ、お前まで……まあ、いいか。 グレンは俺たちの親友だ。O.C.U側のヴァンツァー乗りだがな』

「えっ……O.C.Uの、ですか?」

 

 グレンさんという方は、ウォルターさんとランディさんの親友でありながら、私たちと違ってO.C.Uの兵士で。それはつまり敵だということに他ならないわけだ。

 

 その事実を抱える苦しさは、理解できるものだった。

 

「私も……O.C.Uに友達を残してきちゃってるんです。兵士では無いんですけど、心配で」

『そうか……それは気の毒に。無事だといいな』

『まあ、その、あれだ。グレンも無事だから、エルシャの友達もきっと無事だろ』

 

 ウォルターさんはそれに同情してくれる。ランディさんも慰めの言葉を掛けてくれた。

 同調してくれる人がいるだけで、不安は安心へと変わっていった。本当に彼はきっと無事だと思えた。ウォルターさんとランディさんが一緒に共感してくれるだけで……。

 

 

 そして雑談は終わりを告げる。

 

『タンゴ1より各機、スクリメージ(交戦準備)

 

 それは、敵の敗残兵が友軍の殲滅網を潜り抜けて来たことを示していた。つまり臨戦態勢を取れという意味であり、本番が近いこともまた意味していた。

 

『タンゴ6、スクリメージ了解』

『タンゴ14、スクリメージ、了解!』

 

「タ、タンゴ15! スクリメージ了解!」

 

 全員が交戦準備指示を了解すると、中隊長機タンゴ1の軍曹が繰り返す。

 

『全機、スクリメージ。各機担当エリアの全敵掃討を以て、作戦完了とする。貴様らのデビュー戦だ、気合いを入れていけ!』

 

 その声に応じ、全ての機体が前進を始めた。

 

 

 

 

 

 

 私とランディさんの担当するエリア7には、3機の敵ヴァンツァーが移動してきていた。

 見た限り、ストライカーが1、アサルトが1、ガンナーが1だ。チーム構成としては向こうに分があるが、向こうにメカニックはいない。こちらはガンナーとメカニック。同じ敵を集中攻撃していけば多分大丈夫なはず。

 

 一部のエリアでは既に交戦を始めているようだった。

 

『エルシャ、頼りにしてるぜ……』

「うぅ……やってみます……!」

 

 エルドスとレクソンじゃ、レクソンの方が打たれ弱い。ランディさんに前衛を担当してもらい、彼が耐えている間に私が可能な限り数を削る。作戦とは呼べない陳腐なものだが、今思いつく限りでは一番ベストなはずだ。

 

 遠くで銃声や爆発音が聞こえてくる。もう既に始まっているらしい。ランディさんの方を見る。私よりも少し前に立って、マシンガンを握りしめている。

 敵チームの機体はところどころが破損していたり、煙を吹いていたりで手負いだとひと目でわかる。

 

 しかし、それでも集中砲火を浴びれば撃破される危険性は大きい。

 

 しばし見合っていたが……──ストライカーが動いた!

 

「タンゴ14、来ます!」

『援護頼むっ!』

 

 まだ機動力を損なっていなかった敵ストライカー・シンティラが走ってくる。武装はナックル・ボーンバスターが二振りのみ。冷静に対処すれば楽なはずだ。

 

 タンゴ14から放たれるマシンガンの弾道がシンティラのボディを捉える。9発のうち4発が外れ、有効弾5発中2発がレッグを穿ったが、しかし止まる様子は無く。

 

 シンティラの右腕が、エルドスのマシンガンを保持するレフトアームを深く殴打する。続く二発目を与えようとするストライカーの攻撃を躱したタンゴ14は、下がりながら二度目の連射を浴びせた。私もそれに重ねるようにライフル・ウィニーを立て続けに二発撃った。

 

 一発は外したが、残る一発はシンティラのレッグを完全に破壊する。ローラーによるダッシュが不可能なため高速移動ができず、こちらのスピードについて来れないはずだ。

 ストライカーだから武器もボーンバスターだけで、近距離以遠への攻撃手段は持たない。なら───!

 

「タンゴ14、敵アサルトを倒しましょう!」

『わかった! 援護してくれ!』

 

 シンティラを放置して向かう先は敵アサルト・ウォーラス。マシンガン・ラプターを装備しており、正面からの撃ち合いに向くヴァンツァーだ。

 

 立ち止まり、ウィニーを二発放つ。しかし移動してすぐの射撃で狙いが定まらなかったのか、二発とも外してしまう。

 

 タンゴ14が交戦を開始する。付かず離れずの距離を維持し、ローラーダッシュで互いに立ち位置をずらしながらの射撃戦で、消耗を狙う作戦だろう。敵は武器を保持していない腕が完全に吹き飛んでいて、その他のパーツからも煙が吹いている。

 

「フゥゥーーッ………───うあっ!?」

『タンゴ15、狙撃されてるぞ!』

 

 私がウォーラスをもう一度銃撃しようと狙いをつけたその時、ボディに大きな衝撃が走る。

 敵ガンナー・強盾(Kyojun)からの狙撃だ。追撃を躱すために左方向へローラーダッシュし、的を絞らせないよう移動を始める。タンゴ14とは距離が離れてしまうが、まだ狙い撃てば届く範囲だ。

 

 狙いはもちろん、ウォーラス。タンゴ14と共同で敵を減らせば、それだけこっちを攻撃してくる敵が減る。

 

 一時的に動きを止め、両手でウィニーを保持し、向こう(強盾)からの妨害攻撃が命中しないことを祈りながら、狙いを定めて(エイム)ゆっくりと引き金を引いた。

 

 一発目、命中。ボディに有効弾1。

 

 強盾が私の邪魔をしようと接近しつつ射撃してくるが、向こうも焦っているのか弾は二発とも地面に大穴を開ける結果で終わる。

 

 二発目も同じく命中。レッグを削った。続いたタンゴ14がレッグ狙い(フォーカスdown)でラプターを乱射し、そのうちの数発が関節部を撃ち抜いたようで、膝をつきそうになっていた。ウォーラスはそのまま後退しようとするが、制御の利かないヴァンツァーを無理矢理動かそうとして、隙を晒すように大きく横転した。

 

 その際にトリガーが引かれ続けていたのだろう。ラプターが横薙ぎに払うように放たれ、私とタンゴ14の機体に数発命中する。

 無論致命傷ではない為、そのまま追撃しようとする───が、やはりというべきかウォーラスを守るように強盾からの狙撃がこちらを襲う。

 向こうは敵ヴァンツァーとどう戦うべきかのノウハウがあるのか、反撃されないよう射程距離外のタンゴ14を執拗に狙っている。

 

 だが、気になっていたのは強盾が動かない理由。ひたすら同じ場所からウォーラスの援護をしていたのには理由があるのだろうか。

 

 ひとまず接近しない事には二人で攻撃ができない。タンゴ14が撃たれながらもバックパックのリペアで各部位の損傷を修復しつつ前進する。私は牽制のために強盾に対し、狙いを定めた(エイム)

 

 一発目は命中した。レッグを撃ち抜いたが……動じる様子は無い。

 

 そこで気付いた。

 あの強盾は元々レッグが破損しているのだ。姿勢を最低限支える機能しか持てなくなっていた為に、移動に時間を費やすより援護に徹底していたのだろう。

 

 なら、トドメを───そう考えていた私を、ボディへの衝撃が襲った。後方からの一撃で姿勢制御システムの許容以上の衝撃を受け、前のめりに倒れそうになる。

 

 ……シンティラか!

 

 すぐに納得はいったものの、放置していた機体が追いついてくるほどウォーラスと強盾に時間をかけすぎたかと感じ、すぐさま姿勢を立て直す。踏みとどまった脚でそのままローラーを動かし、勢い良く前方に移動することでどうにか立ち直ると、振り返ってウィニーの引き金を引いた。

 

 シンティラのボディを二回連続で穿てば、いくら壊れにくく頑強なヴァンツァーであっても、機能を維持することは不可能だ。

 大きな爆発と共に、シンティラが無力化される。

 

 タンゴ14は接近しにくい位置でウィニーを撃ち続けてくる強盾に対し、損傷をリペアで補いつつ追い詰めている。

 

「待たせました!」

『遅いぜタンゴ15! 早いとこ頼む!』

「はいっ!!」

 

 ローラーダッシュによる高速移動で手早く接近する。ライフル同士なら反撃は可能だ。タンゴ14を庇うように立ち、ウィニーを向けてトリガーを引き絞った。

 放たれた銃弾が強盾を鋭く貫くが、無力化には至らず、反撃を受ける。同じくボディにダメージを負うが、そのまま構えて次弾を発射した。二発目もまた強盾のボディに打撃を与え、それによって元々損傷を負っていた強盾は倒れる。

 

 これで2機、撃破………。

 

 あとは、ほぼ無力化したも同然のウォーラスを倒せば任務は終わる。タンゴ14と目配せし、互いに挟むように回り込みながらウォーラスを囲む。

 

 しかし、敵ヴァンツァーが機能停止したかと思うと、コクピットの中から両手を挙げたウォーラスのパイロットが出てきた。

 

 降伏したんだ…終わった……。

 

 安堵で報告を忘れそうになったが、そこは私よりもしっかりしていたタンゴ14がデニス軍曹どのに回線を繋いでくれた。

 

『こちらタンゴ14、エリア内の全敵を掃討!』

 

『よし。各隊このまま進軍を再開するぞ。 フリーダム侵入後は郊外地区に待機。引き続き残敵の掃討を任務とする』

『イエス・サー!』

 

 一連の会話が終わって、ほっと息を吐いたあと、ふと気になってレクソンの機体装甲損傷状態を確認して、引きつった声が出た。

 

 ……被撃破直前。

 アームやレッグは大したダメージではなかったが、ボディに何度もダメージを受けていたのを思い出した。

 

 戦場で身を守る手段なしにヴァンツァーから抜け出すなんて……考えたくもない!

 

「ラ、ラ、ランディさん……なお、直して……」

『んん? ……うおっ!? ギリギリじゃねえかよ!』

 

 コールサインで呼ぶのも忘れて名前を呼び、ランディさんにボディを直してもらった……夢中になると周りが見えなくなる癖、やめないといけないなぁ。

 意識して治すには、まだ時間がかかりそうだった。

 

 






 ボーンバスター
 KN(ナックル)。

 ヴァンツァーのアームは非常に頑丈で、攻撃にも用いる事が可能であった。しかし対ヴァンツァーや対通常兵器のための武器としては威力不足でしかない。
 このボーンバスターを含んだナックルと呼ばれる武器種別は、軽量ながらヴァンツァー等の相手へ対する攻撃力を持たせる為の武器である。軽量のため、弾倉が尽きたランチャー等の火力補助の為に運用される。


 ウィニー
 RF(ライフル)。

 ヴァンツァーがアームで運用する武装としては最高クラスのレンジを誇る、狙撃〜中距離射撃用のライフル。威力も申し分なく、削った相手への決定打として使われる事も多い。
 ガンナーが標準装備するもので、ミサイルランチャーなどで取りこぼした敵の掃討や、戦闘ヘリなどの脅威を排除するのに用いられ、無論威力の高さから対ヴァンツァー戦闘においても有用。


 ラプター
 MG(マシンガン)。

 アサルトやジャマー、メカニックなど、その汎用性の高さから職種を問わず様々なヴァンツァーでの運用に適する機関銃で、ショットガンよりも長いレンジから遣い手を選ばない。
 様々な改良発展型が開発されていく中で、ラプターも内部機構などの改善を挟みつつ、U.S.N軍に好んで運用されている。威力、連続発射可能弾数、射程距離など、バランスに富む。

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