旅をしたいのに周りが許してくれない! 作:どこにでもいる名無し
符玄は当てました。
仙舟「羅浮」様々な問題を抱えているこの星では、太卜司と呼ばれる組織が存在する。大卜司とは仙舟の情報データを推断し、解析する部門のことだが、そんな太卜司の面々の中に一人だけ風変わりな人物が存在する。
自由気まま、驚天動地、神出鬼没、まさにその三つの言葉が似合いそうな男。太卜司に属しながら、太卜司らしからぬ行動で世間を賑やかせる快男氏。
景元に匹敵する実力を持ち、あの符玄の予測を上回る存在。
人々は皆口を揃えてこう言う。
長の檀那、仙舟の漫遊者、またの名を『斉天大聖』
……………
「まったく、将軍は何を考えてるのかしら」
大卜司の長である符玄は現在進行形で不機嫌だった。幼さを含んだ整った顔立ちからは、形の良い眉を吊り上げ、ツカツカと荒々しい様子で帰路を歩いている。
先刻、符玄は仕事の処理で将軍『景元』との面会があった。景元は実力こそ将軍の名にふさわしい実力を持つが、一見して怠け者のようにしか見えない為、皆から無眼将軍と貶されている。彼女は勤勉に対して景元はどこまでもマイペースな人間、形として見ればそこに馬が合う筈もなく。実際符玄は景元のだらけ振りに頭を痛めている。
「よっ、今日も随分とお疲れのようだな」
不意に、後ろから声が聞こえた。
符玄は絶賛不機嫌中だったが、声の持ち主が持ち主だった為に怒りの矛先が向くことはなく、ただ彼女を振り向かせるだけとなった。
額に輪を付け、旅装束を見に纏う彼は大卜司に属す仙舟の変わり者『斉天大聖』である。
「おまえ、今までどこ行ってたの」
「魔陰の身に関する事件を解決…て言えばわかるか?」
ジト目で睨む彼女に彼はどこ吹く風とばかりに飄々としている。
「はぁ…道理で人身処理に関する書類が多いわけだわ」
「被害が少なく済むのは良いことだろ?」
「予言から大きく外れた動きはしないでって言ったのよ!!」
符玄は小さい形から大きな怒号を喰らわせる。しかし悲しきかな、様になっていないせいか寧ろ可愛げすらある。斉天大聖もこの通り腕を頭の後ろで組んでる始末だ。
「予言って言われてもな。それ当たらないじゃん」
第三の眼である「法眼」を額に付けている。これは所謂計算機で、符玄は予言をする際に使っている。窮観の陣も用いれば予言は未来視と称するに相応しい的中率を誇る。
そんな羅浮において変え難い人物である符玄でも、予言できない存在が斉天大聖だった。彼は民にも言われた通りの神出鬼没振りを常に発揮している。そも符玄の法眼に彼は映らない。彼自身を占おうとも先の光景にはノイズ塗れ、まるで
その事実に何も思わない符玄ではないが、そんなことは彼にとって預かり知らぬところではない。
「殴られたいのかしら?」
彼女は何処ぞのサボり娘が仕事をほったらかして牌を打っていた姿を見つけた時の顔を向ける。
「はいはい、じゃあ大人しく何処かで居眠りでもしてますよーと」
「待ちなさい。別に私から離れても良いとは一言も話してないわ」
「じゃあどうしろと」
一見仲が悪い様にも見える二人。この光景は彼等を知るものにとってはごく見慣れたものであり、もしこの場に大卜司の人間がいたならば微笑ましい目で眺めていただろう。
立場なら上司に当たるが、容姿だけを見るなら少年少女の戯れなのだから。
「てか、その様子じゃまた無茶してるな?」
「…だから何よ?」
「…お前なぁ、いくら偉い立場にいるからって無茶するのは良くないって前にも言っただろ?」
「ふんっそんなこともう忘れたわ」
「はぁ…こりゃダメだな」
彼は困ったように頭を掻く。これも幾度と繰り返された流れだ。何ら気にすることはない。
「あとどれくらい残ってるんだ?」
「皮肉な事におまえが解決した件を含めればあとは書類整理だけよ」
「皮肉は余計だけど…まぁいいや、手伝うからさっさと終わらせようぜ。そしたら一緒に飲みに行こう」
「……ふんっなら早く戻って仕事に取り掛かりましょう」
「へいへーい」
二人は作業場を目指して歩幅を合わせて並列して進む。
多くは語らない。そう存りたいと願う彼女の要望に彼は応える、その様は卜司の人間には熟年の夫婦とも例えられるくらいのものだ。故にこれで付き合っていないと言うのだから愁傷も抱いてしまうというもの。仕事に向き合い続ける彼女と自由を好む彼、そんな正反対にも思える二人は奇妙な縁があった。
見た目は年若い少年少女、共に過ごす様は人々が羨む理想系の夫婦。これからの動向に要チェックである。
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