旅をしたいのに周りが許してくれない! 作:どこにでもいる名無し
めっちゃ遅れました。
この人過去も相まって設定が難しいですね。
あと刃の昔の名前が応星だったことに今更気付きました。これは投稿者の白痴が見られてしまいましたね。お恥ずかしい限りです。
仙舟「羅浮」と呼ばれる場所は名前の通り、超弩級方舟型スペースコロニーである。舟は六つ存在し、その規模も一つの舟でヤリーロⅥと同等の大きさを持っている。
仙舟には二つの星神が派閥を広げ争っている。巡狩と豊穣、変化と停滞を齎す神々は互いに相容れない存在とし永い戦いを強いている。
そして、そんな場所でも願いはある。
誰が為の王となれ、弱き民に永遠の豊かさと平穏を。そうして願いの申し子は願いを聞き入れ、自らを王の器として変容させた。
仙舟「羅浮」そこでの名前を『
…
……
………
空気を張る音、または斬る音、二つの影が重なり合うように連続して起こる現象を幼い少年『景元』は息を呑んで見ていた。
ここは稽古場、雲気軍たる彼等が己の力に磨きをかけるための精進の場。そして見ていたのは景元だけではなかった。雲騎軍の兵、または上役、その面々が固唾を飲んで二人による決闘をその目に焼き付けていた。
水面のように滑らかで洗練された剣の一太刀が振るわれれば、樋の部位に稲妻の如き一打が払われる。一つ一つがおよそ人を殺めるには十分なモノで、それが連続して、絶え間ない様はまさに雨天の中に起こる雷の様。
「…やはり、この程度では不足か」
「二年も鍛錬を怠った罰が来たのだ。だが体が慣れてくるのも時間の問題。久方振りなのだ…我に彼の拳を見せてみよ」
「…よかろう。我が剛の拳、とくと味わうがよい…」
空気はより張り付き始め、あたりにスパークが発生し始める。その時だった。
「やめないか二人とも」
「むっ…」
「………」
緊迫した状況が一転、緩やかに変じさせたのは二人の男だった。一に刃、二に飲月、どちらも羽交締めされた二人に引けを取らない強者である。
死合いという言葉が似合うような試合は中断され、見守っていた兵士も安堵のため息をついた頃、一人の女は不満げであった。
「邪魔をするな応星。今日こそ決着を付け、我と僵尸の間にある因縁に終止符を討たなければならん」
「大層な物言いだが、結局のところ僵尸を好きにしたいだけだろう?」
「放せ飲月、彼奴は兎も角我を縛る必要もあるまい」
「念の為だ。我慢してくれ」
二人は場所も含めて見物人もいた事から手加減していたつもりだったが、その度量すら兵達にとっては巻き添えで怪我を負いかねなかった。故に中断された訳だが、鏡流は不満を抑えきれないのか妖艶さを含んだ美形な顔を微かに歪ませ、せかせかと何処かへ行ってしまった。
その様子に応星と飲月はやれやれと肩を竦ませ呆れた表情をしている。
「鏡流は行ってしまったか…。…して、どうして彼奴はあそこまでご立腹なのだ?」
僵尸は首を動かして己の肉体を解しながらあっけらかんと二人に質問する。向けられた質問に対して二人は「「はぁ?」」と人に向けるべきではない表情を浮かべていた。
「……いや、僵尸のことだ。感情の機微に疎い事は前々から知っている。なんらおかしな話ではない」
「だがあの女から向けられる感情に気づかないのは些か鈍すぎる気もするぞ?」
「これで羅浮の最重要上役を担っているのだから不思議だ」
「疑問を呈するだけでこの言われよう」
表情こそ顔の前に垂らされた布によって見えないが如何にも解せない様子を見せる僵尸。彼は仙舟における重要な立ち位置に座する者なのだが、ご覧の通りどこか能天気な節がある。
「ふむ、そろそろ責務を果たすとしようか」
「そうだ、僵尸」
「どうした?」
仕事に取り掛かろうとする僵尸に応星は一言声をかけて静止させる。
「今宵、鏡流に声をかけてやれ」
「藪から棒だな。理由を聞いては駄目か?」
「私たちの言葉からは出せん。お前が気づかなければ意味がないのだ」
凍てつき刺すような感情に、いつまでも気付くことのないこの男に少しでも早く気づいてもらうよう尽力する。でないと時折見せる彼女の情の狂気に身を強張らせる毎日である。
正直な話を言うと夜の密会に対して二人は大した期待は込めていなかった。理由は当の本人が唐変木なのもあるが、今の五人で酒を酌み交わす関係も捨てきれないのが真実。もちろん二人がくっつこうともそこに亀裂が入るとは微塵も思っていないが、鏡流の執着ぶりは群を抜いている。
ともかく、今夜で何かが起これば赤飯、何も起こらなかったら不感動、これに尽きる。
三人は各々の仕事に取り掛かる事にした。
……………………………
時刻は宵が登り、空を深い雲が覆い隠した時。
僵尸は二人に言われた通り、鏡流と話をしようと、いそうな所を隈無く探し続けていた。
「ここにいたか」
月の光が美しく反照する川の端で仰いでいる姿を確認した。
「…… 僵尸か」
「少し話をと思ってな。探したぞ」
こちらの気配に気付き、顔をこちらに向けるのを確認しながら隣に並び立つ。
そこから少しの沈黙、分は一を刻まないくらいだろう。共に空を眺めていた。
「こうして月夜を眺めると、ある日の故郷を思い出す」
「故郷と言っても、星々を転々と移る中で見つけた思い出深い場所なだけだがな」
意味深く呟くその姿は何処か遠くを見据えており、己の居場所はここではないと暗に言っているようで、その様子が鏡流にとって言葉では表せそうにない感情を掻き立たせる。
「………月が、綺麗だな」
「そうだな。願わくばお前たちとの関係がこれからも続いていくことを望むのだが」
「そうか。…だが、我が聞きたいのはそれじゃない」
「ふむ?」
鏡流は夜闇にて怪しく光る真紅の瞳を僵尸の瞳と合わせる。鼻の先がぶつかりそうな程に近づいたことで僵尸は退こうとするが手摺が腰にぶつかりこれ以上の後退を許さなかった。
「お前にとって我はどう映る?」
「綺麗だが?」
「……ふむ、そうか」
瞬時に答えられた内容に鏡流は目を細める。それに一体どんな感情を抱いたかはわからないが妖しく弧を描くような笑みを浮かべた瞬間。
「……っ?」
「…………ふふ」
口と口の接触。触れるだけの簡易な接吻を交わす。不意にやられたことで多少の狼狽えを見せる僵尸に愉悦を感じた彼女は事を成したとばかりに室内から廊下へと繋がる扉に手をかける。
「今は口だけに留めよう。だがしかし、いずれはその心も…ふっ止そうか」
バタン…と戸締りのする音を呆けて眺める。やがて気を取り戻せば己の唇をそっと触れて困ったように苦笑いした。
「願いに汝の身体を御所望…か。流石に化けの皮も剥がれるというもの」
「…ははっこれは一本取られたなー」
何気ない日常、明日をどう生きるかを模索する毎日、彼等彼女等はそんな暗闇の中を二人三脚で歩み続ける。束の間の楽しみも決して離さないように。
常に輝きを見せる人々に己はどう奉仕できるだろうか、期待に応えているのだろうか、王の重責は計り知れない。
願いは人それぞれ、個々の願いを全て叶えることは不可能であり、聞き届けた願いに矛盾が生じれば叶えることはできない。
鏡流の望みを薄々理解した僵尸は苦悩する。
しかし、そんな余裕があるのも今が平和な証、彼はこの時間を尊んでいる。
ーー願わくば、こんな日常がいつまでも。
某日、景元も成長し、共に酒を飲み明かせる時間が流れた時。魔陰によって全てが狂わされた。一人また一人と輪から外れていく、そんな泡沫の泡と消える光景を、彼はどう思ったのだろうか。
時折り、斉天大聖は豹変したかのように態度が尊大になる時がある。それはかつて仙舟を総べる覇王に酷似していた。
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