旅をしたいのに周りが許してくれない!   作:どこにでもいる名無し

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 凄い遅れましたが、お久しぶりです。
 ピノコニー編も少し目を瞑れば終わり、オンパロスという崩壊勢も涙目の章に突入ですね。
 中でもケビン顔のファイノン、どんな曇らせ方されるのか気が気じゃありませんが、この小説では星とウェクトルとファイノンの三人で野球でもさせたいなと思ってみたり。
 あとキャストリス、あの子いいですよね。鎌の少女体型な所を見るとゼーレモチーフでしょうか。公式の動画見て、「あれこれ…パクリになっちゃった?」とかこの話書いててなりましたね。

 今回は主人公の過去を掘り下げた話を書きました。


幕間『奇縁再会』

 

 宇宙ステーション「ヘルタ」にて、ウェクトルは害虫駆除に勤しんでいた。

 天才クラブの一人がやってくるということで、模擬宇宙の協力者である星の下に顔合わせの依頼がでたのだが、単独行動をしたくなったウェクトルはその案件に乗じて宇宙ステーションに無断で向かったのだ。

 別の場所では星が動いているが、弱いと自称しているこの男は列車組の目を掻い潜って単独行動をしていた。

 

「繁殖の使令のクローン…ねぇ?天才ってほんと何考えてんだか」

 

 周囲に刻まれた衝撃の傷が、ついさっきまで戦闘をしていたという事実を示してくれた。一人愚痴る彼の周りにはスウォームの残骸が立ち所に存在していた。

 ウェクトルにとってスウォームとはタチの悪い文字通りの害虫だ。

 昔ならいざ知らず、今となっては一匹相手するにも苦労。集団で来られようものなら全てをかなぐり捨てて逃げの一手を打たなければ生の一文字は勝ち取れない存在。繁殖の神様が残した子孫であり、そこには理性はなく、ただ無差別に本能だけで行動する。その為か集団としては統率性はない。

 奴等のタチが悪いと言われる所以はその繁殖力にある。「繁殖」の運命から引き出したエネルギーによって無限に自己複製を行うことができる。繁殖の神様がいなくなったことでその権能は弱まったが、今でも各星に蔓延り、その文明を糧にして繁殖を繰り返している。

 

 そんな野蛮極まりない生物の頭とも言えるスキャラカバズのクローンを造り出した天才クラブの人間の噂を聞いた時は柄にもなくゲンナリしたことだ。

 友達のゲームデータを全て消したといわれるスクリューガムしかり自身の少女姿を人形にして操作しているヘルタしかり、天才という存在はウェクトルの中では近寄り難い集団のイメージがあった。

 

「一匹ならなんとかなるけど、それ以上はなぁ…弱ったなぁ…」

 

 今のウェクトルは全盛期と比べれば月とすっぽんはおろか、太陽と米粒程に弱っていた。使令のクローンが生み出す残党ですら苦戦を強いられる自身の至らなさに嘆く彼はある事に気づく。それは目に見える異変ではなく、人が感じ取る空気の変化であった。

 

「……懐かしい気配だ」

 

 空間そのものに歪みが生じる程の威圧感が近づいてくるのを察知した。徐々に重々しい空気が浸食してくるような感覚に彼は焦ることもなく、ただその一言で片付ける。

 

 来る。

 

 理解と同時に視界は真っ暗に。

 宇宙ステーションの室内は面影を残すことなく暗闇に飲み込まれてしまった。暗闇の中で、無数の赫い光が灯される。ずり…ずり…と這いずるような音と共に動く光は間違いなく彼を凝視していた。

 光が間近に迫り、とうとうウェクトルの眼前へと来たその時、彼は放った。

 

「久しぶりだな、ヴァルツェス」

 

 暗闇が晴れ、いつも通りの明るさを取り戻した室内には一人の人間の前に立つ巨大な龍がいた。

 ドラゴンを彷彿とさせる姿に、八つの不規則な動きをする翼、両腕の手のひらには宇宙のように底知れない深さが存在する。

 首の両端には、根本からその顔面まで光を灯す瞳が無数存在しており、ドラゴンと称するには余りにも異形で、しかしドラゴンのような尊大さを放つ存在がウェクトルを見つめていた。

 

 ヴァルツェス。

 それはウェクトルが権能をその身に残していた頃、力を最も有していた時期に生み出された滅びの舞台装置。きっかけは彼が思う以上に惑星に居着く生命体に星自身が汚染された為に自浄作用となることを頼まれる機会が多いことで創られた存在だった。

 身体は果てない闇で構成され、宿した力は極超新星すら容易く超える。一切合切を喰らい尽くし、原始の海である宇宙に還すことを目的として生まれた。

 ヴァルツェスはたった一つだけ異能を宿している。

 『悪因悪果を喰らう』。そこにどれだけ力を込められていようが害するという結果が込められているならば等しく降すことができる力であった。

 

 そんな物騒極まる龍の生みの親であるウェクトルはというと、思いがけない再会に心を高揚させて、万感交々至っていた。

 

「随分と大きくなったなぁ、親として嬉しい限りだ」

 

 龍は頭を下げ、何かを強請るような視線を向ける。ウェクトルも理解してか両手を下顎、頭部へと伸ばした。

 ゴルルル……と低い唸り声を発しながら自らを撫でるその手を堪能する龍に愛嬌を感じたウェクトルはたまらず破顔した。

 

「…ひょっとして、この辺のスウォーム狩ってたのお前か?」

 

 ヴァルツェスは顕著な反応は見せずに、ただ鼻を鳴らすだけだった。その風圧でウェクトルの髪が逆立つが、その意図を理解して感謝を示した。

 

「そっか。ありがとな、弱いオレのために」

 

『………』

 

 宇宙ステーション内でウェクトルが出会ったスウォームは片手で数える程しかいなかった。端末を通して星と連絡を取り、遭遇した数を照らし合わせるとそれは明らかに異常である。

 だが、こうしてスウォームを陰ながら狩り尽くしてくれた相棒がいたことにウェクトルは嬉しさを禁じ得なかった。

 

「わぷ」

 

 いきなり上半身を喰われた。厳密には甘噛みでしゃぶりつくような勢いであるが、側から見れば事故現場にしか見えないだろう。これがヴァルツェスの愛情表現、およそ産みの親であるウェクトルにしか見せない行動である。

 

「そうかそうか!お前も嬉しいか」

 

 噛まれた状態からでも、口の隙間から腕を伸ばして撫でる。あぐあぐと絶妙な力加減で独自の愛情表現を見せるヴァルツェスにウェクトルも応えているのだ。親と子、表現するならこの相互関係が相応しい一人と一体は再び出会えた喜びを噛み締めていた。

 

「ウェクトル、無事!?」

 

 しかしそんな時間もいずれは終わる。間の悪いことに、星が少量の汗を流しながらやってきた。それもウェクトルがヴァルツェスに甘噛みされている現状を残したまま。

 星から見れば彼が謎の怪物に喰われている凄惨な現場。数瞬思考が停止した後、たまらずバットを構えた。

 

「ウェクトルから離れて」

 

「あ?その声ベクターか?ちょうど良かった」

 

 戦闘体制に移る星に目もくれず、ひたすら主人に甘えるヴァルツェス。その主人であるウェクトルもくぐもってはいたが確かに星の声が聞こえたことで決めていた行動を取ることにした。

 口を摩り、離してほしい意を伝えればヴァルツェスは名残惜しそうにしながら渋々噛むのをやめた。

 ヴルル…と星を威嚇する姿に苦笑しながら宥め、緩んだ顔で星を見やる。

 

「この辺はあらかた片付いた。そっちはどうだ」

 

「使令のクローンを見つけたけど…なぜか自壊した。あとでルアン・メェイに問いたださないと」

 

「そっか、じゃあ先に列車に戻ってるから。ヴァルツェスの紹介もしないとだし」

 

「ヴァルツェス…ひょっとしてその子の名前?」

 

「ああ、自慢の相棒だ」

 

 意気揚々とそう話す彼に対してヴァルツェスは相棒、という言葉に反応したのか頬擦りし始めた。その様子を見て愛嬌を感じた星はヴァルツェスに乗じてウェクトルに体当たりしてきた。

 

「急にどうした」

 

「愛情表現」

 

 彼女の普通とはズレた行動は共に行動しているのでわかるつもりだったが、完璧にわかる訳ではない。これが愛情表現?ヤギじゃあるまいし。ツッコミを入れる彼は内心ちょっと面白がっていた。

 

 程なくして、星穹列車に帰ってきた彼は列車組の面々に正座で座らされていた。

 

「誰のことわりもなく、宇宙ステーションに向かったと思えば…。ウェクトルさんは…」

 

 丹恒は眉間に手を当てて、困った人間の対応をする時の顔をされて。

 

「本当だよ!なんで無茶するのかなー?」

 

 なのかからは顔を掴まれて、漆黒の瞳を否応なく見せられたり。

 

「あなたの行動は列車の仲間を不安に陥れるものよ。それを自覚しなさい」

 

 姫子からは教え諭されたり。

 

「……いよいよ首輪を付けることを考えなければいけないな」

 

 ヴェルトは聞き捨てならないことを考えていたり。

 状況は説教地獄である。列車から勝手に抜け出した事実に面々は激怒、ただでさえ集団の中で弱いのに、一人で行動したかったからなんて理由で体中ボロボロで帰ってきたなど許せる要素がなかった。

 昔からそういう奴だという理解はあったが、こうも危なっかしいとリードの一つでも繋いで手綱を握った方が良いのではないかと本気で考えてしまうくらいヴェルトは悩んでいる。

 他もそうだ。丹恒はさん付けで呼ぶくらいには敬愛しているが、彼の無茶な振る舞いは欠点であり、矯正すべき要素であると密かに世話を焼くほど。姫子は教育者として導き甲斐のある生徒のような扱いはしているが、あまり度が過ぎればどうなるか。

 

「ねぇ、なんで一人で消えようとするの?何度も言ってるよね何かするなら教えてからって。いい加減にしないとウチ…」

 

 なのかに至っては尋常ならざる気配を抱いてウェクトルを捕まえている。ギリギリと万力を思わせる力で顔を掴まれている彼は「ごっごめんなひゃい…」とおちょぼ口で謝罪をしていた。

 

「なのか、それくらいにしよう。これ以上はウェクトルの顔が変形しちゃう」

 

「星は黙ってて。ウェクトルからゴミの匂いがすることについて後で言及してあげるから」

 

「…………はい」

 

 諌めようと星が乱入するが、氷のような冷たい視線に死刑宣告を受けてすごすごと立ち去る。

 

「これに関しては謝ることしかできないけどさっ、悪いことばかりじゃないんだぜ!?見てくれよ、ジャジャーン!相棒であり実子でもあるヴァルツェスだ!」

 

 なんとかこの空気を変える為、なのかの追撃から逃れ、今日得られた出会いの紹介をする。何もない空間から突如として黒い穴が現れてそこから黒い龍を模した異形が姿を覗かせる。

 

「……実子?ねぇ実子ってどういうこと?ウチが知らない間にウチの知らない女と乳繰りあったってこと?ねぇ答えてよ」

 

 焦りでいらないことまで話してしまった。実子に関しては間違いない、総計2000億個の星が協力して創られたのだから。やーいお前の母ちゃん銀河規模〜。

 この後、ヴァルツェスの説明と各面子のご機嫌取りでニ時間程有し、なのかに関しては一日中買い物に付き合ってもらう約束を取り付けられ、この事態は収束した。





 ヴァルツェス
 星喰いの黒い龍。星たっての希望で舞台装置として銀河規模の総力で創られた存在。それは一つの宇宙であり、かの龍が起こす滅びは星の意思である。
 悪しき概念を喰らう特殊能力が備わっており、それは病や呪い、強かろうが弱かろうが関係なく食す。
 好きなもの : 食べること 寝ること ウェクトル
 嫌いなもの : 自己犠牲の精神を出したときのウェクトル
 産まれたばかりの頃は淡々と仕事を熟すだけの機械人形だったが、生き物たらしなウェクトルと行動をしたことで、やがて星に滞在する文明が作る食べ物に興味を持ち始めたり、暗黒星雲で寝床を作るなど好き放題するようになった。
 昔はつまみ食いで一つの星に滞在していたスウォームをまとめて平らげたこともある。

 ウェクトル
 バッドコミュニケーションの記録更新者
 なのかのただならぬ雰囲気に押されて約束をしてしまった。

 三月なのか
 ヘラった美少女。デートの約束ができてご満悦。

 星
 惑星の方じゃない星。多分ゴミの匂いがする。

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