旅をしたいのに周りが許してくれない!   作:どこにでもいる名無し

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 不定期とはいえ、ここまで遅れるとは思いませんでした。
 それと3rdでスタレコラボ来るって聞いて目ん玉見開きました。正直Fate以上の衝撃です。
 Fateの場合はそんな伏線ありましたからね。


番外「ザイチクの場合」

 

「この書類、後で片付けておいてください」

 

「はい」

 

 それは彼が地球へと帰還して一波乱あった後の話。

 

「差し入れの珈琲です。感謝して受け取ってください」

 

「はい、ありがとうございます」

 

 それは慣れた手つきでパソコンに打ち込む彼に差し入れで贈られたコーヒー缶。

 

「疲れました。肩を揉んでください」

 

「…なぁ」

 

「はい、どうかしましたか?」

 

「成り行きでブローニャの手伝いをすることになった訳だけどさ、これいつまでやるの?」

 

 あれやこれやと指示を下され、その内容をせっせかと完了させる虚無の時間。現在ウェクトルはブローニャの下で働いていた。

 とある一件でウェクトルはその命を燃やしたと報告をされていたのだが、キアナが滞在していた月でその姿が発見された事でキアナと共に帰ってきたのだ。

 報告が上がったのはつい最近で、それこそ地球の課題である崩壊問題に一区切りのカタが付いた頃であった。

 実際はずっと前からウェクトルは月に滞在し、キアナとの時間を過ごしていたのだが。もっと早く報告しなかったのはキアナが「せっかく二人きりでいられるんだもん、そんな勿体無いことしたくない!」と駄々を捏ね、報告を怠っていたからである。

 帰ってきた際に見たツヤツヤのキアナと枯枝のようにげっそりしたウェクトルの姿を見た雷電芽依とブローニャはなんとも言えないような顔で出迎えたのはここだけの話だ。

 

「キアナと同じようにバカですからね貴方は。だからこうして管理する役割を私が受けている訳です」

 

「あはは…」

 

 キアナの破天荒さも変わらないが、ブローニャの毒舌も変わっていないと彼は再認識した。聞けば七年という歳月が経っているそうじゃないか。

 七年、そう…七年だ。七年という歳月を得て、ブローニャは身体的に大きく成長した。少女体系から女性らしいハリのある体へと変化し、今では雷電芽依とキアナに負けず劣らずの美女になっている。

 これにはウェクトルも「おお…体が大きくなった」と感心しきりだ。

 

「気付けばすぐにいなくなって、その癖帰ってくればあちこちに傷を付けてくる。貴方がいなくなった日なんてそう。一体どれだけの人が悲しんだと思いますか?」

 

「説教はキアナに嫌というほど聞かされたよ」

 

「嫌というほど聞いても立ち止まらないのが貴方でしょう」

 

 ぐうの音も出ない正論である。

 彼自身、自分一人犠牲になればそれが至上の幸福であり、結果なのだと信じて止まない節がある。それは今でも変わらず、本人も自覚はしているが…それでも、誰かが身を投げ出すような事態になれば彼は率先してその身を捧げる事だろう。

 学園時代から彼との付き合いがあるブローニャだからこそ、こうしてキツく説教をしているのだ。

 

「…へへ」

 

「…何故笑っているのですか」

 

 説教をくらっているというのに、ウェクトルの顔は喜色で溢れていた。その理由がわからない為、ジト目で問い詰めれば彼は答える。

 

「お前にこうして説教くらってたらさ、なんか帰ってきたんだなって自覚が益々できてさ。何もなかった俺に、こんなにも多くの人が集まってくれるって考えたらどうしても嬉しくて…。

 これも全部みんなのおかげだ。

 ありがとな、ブローニャ。大好きだ」

 

 恥ずかしげもなく、ひたすらに純粋な顔で好意をぶつけられたブローニャは目を見開き、次第に片手で顔を隠そうとしてそっぽを向いた。

 自らの薄く染まった頬を隠すように。

 

「ステムのそういう所、良くないと思います」

 

「?」

 

 純粋というべきか馬鹿というべきか、戦乙女たる私達にどう思われているかもわからず好意をぶつけてくるのは如何なものか。

 ブローニャは火照り始めた身体を自覚しながら、内心で目の前の男の無謀さに疑問を抱いていた。

 いや、もちろん知っている。この男は昔からそういうやつだ。学園当初、問題児のキアナと共に知られている不良児それがウェクトルなのだから。

 自由奔放で、いつだって他人の背中を押して導く。

 そんな人間だから、ゼーレもあそこまで入れ込んだのかもしれませんね。

 

「…ブローニャ?」

 

 様子のおかしいブローニャに肩を掴まれたまま、流れるような動作で押し倒されてしまった。

 いつもと違う様子にウェクトルも困惑の表情を形作っていた。

 

「昔、貴方は言っていましたよね。我慢は身体に毒だって」

 

 両の頬をその華奢な指で包み込めば、互いの鼻が接触し合う距離まで顔を寄せる。端正な顔立ちに、どこをとっても美形と称するに相応しい節々のパーツを集めた相貌がウェクトルを0距離で見つめている。

 

「私は心のどこかであなたに依存していました。でもそれももうやめます」

 

「今度はステムが私に依存する番です。覚悟してくださいね?」

 

 瞳の奥底には、確かにハートを形作ったナニカが混在しており、息も荒立っているようだ。口に当たる生暖かい風がソレを証明している。

 ウェクトルは悟った、『あ…これキアナにされたのと同じことされる』…と。残念だがここから抜け出す方法は皆無に等しい。潔くされるがままになる他ない。

 

「バカな貴方を愛しているのは、何もキアナだけじゃない事を教えてあげます」

 

 このあと、栄養失調かと見紛う程に痩せ細ったウェクトルの隣で艶々としたブローニャが寝床を共にしていたのはここだけのお話。

 2p.mから11p.mにおいて、二人部屋として専用に使われる個室から甘い声が漏れていたことを社員は知る由もない。





 

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