旅をしたいのに周りが許してくれない!   作:どこにでもいる名無し

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 多分、あと一週間以内に次の話も出せそうです。


オンパロスの場合

 

 列車の切り離しにより、外部とは隔絶された星『オンパロス』に向かった列車組の一同。

 不慮の事故により、星と丹恒とは別にウェクトルは巨岩の下敷きとなって倒れていた。

 だいぶ情けない姿で気を失っているウェクトルだが、それも仕方ないことである。

 この地に向かう為、降り立つ列車に突如として隕石が追突、そしてその隕石の落下地点にいたウェクトルはその被害をくらい、隕石諸共不時着を行うことになった。

 現に彼の上で押し潰している巨岩は列車と激突した物である。

 

「ふ…不幸すぎる」

 

 己の不運を呪いながら、なんとか脱出しようと試みる。しかし非力な身で自身の数倍の大きさを持つ岩はぴくりとも動かない。それは当然であり、むしろ下敷きとなってひしゃげていない事実は驚くべき点だろう。女にすら押し倒されるくらい弱っているのに身体の丈夫さは誰よりも上なのだから始末におけない。

 

「仕方ないか…ヴァルツェスー」

 

 嘆息して、観念したのか一つの名を呼んだ。彼の着ている服のフードからもぞもぞと動き出し、ソレは自身の名を呼ばれたことで顔を出した。

 

[……]

 

「ごめん、オレだけの力じゃ無理そうだから頼んだ」

 

 その言葉を皮切りに、ヴァルツェスと呼ばれた黒い龍はフードから離れ、巨岩目掛けて赤黒い息を吐けば、接触した箇所から塵になって消えていく。背中にかかる負荷がなくなるのを確認したウェクトルは、ゆっくりと立ち上がり体についた土を払う。

 

「ふぅ…ありがとう、助かった」

 

 ふよふよと彼の周囲を漂うヴァルツェスに感謝を述べる。その頭に手を当てて、撫で回しては目を細めて堪能していた。

 

「それにしても、随分な場所に落ちたなぁ」

 

 複雑な地形、俗に言うギリシャを思わせる雰囲気の作り、彼はその光景に欠片程の既視感を抱かずに散策していれば、ここがどれだけ人里から離れた場所なのか察しがついた。

 聞く話によるとオンパロスという星は、外からの観測は不可能とされている。「8」の字を思わせる捻れたメビウスの輪のような星の形をしている。ウェクトルも永い時にこういった特殊な星は見たことがあるが、ガーデンの鏡でしか写し取れない「8」の字の星。それが何を意味するのかを彼自身思うところがあった。

 

 人里すら見ない彼が辿る場所は幻想的な森の中、あてもなく彷徨い続け、ようやく進展があった。

 

「ミュミュ?」

 

 周囲を飛び交う珍妙な生物、毛が生えた動物のようでありながら、飛ぶ為の翼も無しに空を飛び交うソレを種族の括りで名乗るとすれば妖精がふさわしいだろう。

 新雪を思わせる白い毛並み、青々とした空を連想させる瞳、そしてくるりと反った特徴的なアホ毛。ふと上を見上げた時に覗き見るような仕草のソレと目が合った時、静かに面を食らった。

 

「ミュ〜?」

 

「かわいいね、この星の原生生物かな?…ごめん、悪かったから頭噛まないで」

 

 他の生物に、よりにもよって愛玩動物のような可愛らしさを持った生き物にうつつを抜かすウェクトルが許せなかったのかその頭をガジガジと噛み始める。当人はぶつけられる感情に悪い気はしなかったが、噛みつかれるのは身体が保たないのでなんとかやめさせた。

 

「とはいえ、このまま迷子ってのもな。君は人が沢山いるところとか知らない?」

 

 深い森の中なだけあって方向感覚を失いそうな自然の迷路に困り果てた末、目の前の精霊にそう質問する。

 

「ミュ〜」

 

「そうだよなぁ、わかった」

 

 補足として、ウェクトルは妖精の言葉はわからない。目の前の存在がこちらの質問に対しての行動が首を傾げる様子だったため、それが何を意味するのかは理解できた。

 

「はぁ…どうすっかなー」

 

 状況は依然として変わらず、もはや嘆息しかできない姿には哀愁すら感じさせる。オンパロスという星そのものに聞く方法はあるが、わざわざ道案内のために星に聞くのも詮無い話だ。

 そうやって困っていた間に、どこからともなくヴァルツェスが現れた。

 

「あれ?ヴァルツェスどこ行ってたの」

 

 この森を彷徨ってた間は空間を引き裂いて何処かに行ったきり姿を見なかったことに疑問を感じ、それを口にする。

 

[………]

 

 しかしヴァルツェスは答えない。普段なら身振り手振りで可愛らしく説明する筈なのだが、今回はどうにも答えたがらない。こういった様子の時は何か隠しているのが常である。

 その様子を察してか、その頭を撫でて微笑む。

 

「まぁ、一日掛ければ抜けられるか」

 

 もっとも時間がかかり、もっとも労力がある方法を選び、いざ散策…と言ったところでヴァルツェスに服を引っ張られた。

 

「道案内…って、だからいなかったのか」

 

 流石オレの相棒。その有能ぶりに思わず鼻を伸ばして後方彼氏面をかましていた。

 そう言っている間にも服を引っ張られていたが。流石にされるがままでいるのもよくないと思い自身の足で歩き始める。

 森は変わらず似たような風景を映していて、とても素人が足を踏み入れていい場所ではなかった。ウェクトルも念の為を用意して通る道に存在する木の根元に生成した剣を突き立てていく。

 

「ところで…君はいつまでついてくるの?」

 

 歩く傍ら、何も言わずについてくる珍妙な妖精を見て訝しげな目を向ける。ヴァルツェスも新たなマスコット枠に興味があるのか妖精の周りを飛び始める。

 妖精とヴァルツェスは思いの外気が合うのか、ウェクトルの周囲で追いかけっこのように飛び回る姿に、彼はその順応の速さに思わず笑みをこぼしてしまう。

 

「よし、せっかくだし、一緒に行くかい?」

 

「みゅ〜」

 

 同行の許可を貰い、いざ出発。と彼の服、それもフードの中に入ろうとすればヴァルツェスに顔を噛まれる。どうやら自身の定位置を奪われるのが嫌らしい。無に等しい力加減で噛んではいたが、当の妖精は視界を塞がれてかなり驚いていた。

 仲が良いようで何より。当の本人はその光景を眺めて微笑んでいた。

 

 

 ………………

 

 

「おぉ〜!やっと着いたー!」

 

 場所は変わってそこは人が溢れる街であった。

 袈裟懸けの服装に共同浴場、どこか神聖な雰囲気を思わせる土地に信仰と神話を重んじる国民達は、その独自性の価値観によって現在を生きている。

 地球での文化で例えるなら、ギリシャ神話のような世界観。古代ローマに似た文化感を有していた。

 

「おっ!デジカメあるのか、なのかに渡したら喜ぶかな。いやでももう持ってるカメラで十分そうだけど…どうしよう」

 

 ウェクトルにとっては見慣れた風景、しかし違った人達との交流を楽しみながら、その街を出歩いていた。

 列車に戻った時の土産話も話せるように、個人が喜びそうな物品を探し回って、その度に待ち合わせがないことを悔やみながら。

 この星では信用ポイントは使えないのだ。

 

「にしても、二人ともどこ行ったんだろ」

 

 離れ離れになった星と丹恒の身を案じ、街の人達に彼等の特長を広めながら捜索もしていた彼だったが、一向の進展はなかった。

 二人も同じくして彷徨っているのか、それとも別の場所で他の者との謁見を行っているのか、現状を照らし合わせ、別の方法を模索する彼だった。

 

「…へ?」

 

 何処からか、遠い場所から声をかけられた気がして、その方向に目を向けると、3人の幼女が血相を変えて走っていた。三人とも赤毛だ。似たような容姿な事から同じ血筋なのが察せられる。

 しかしどうしてかあまりにも必死な顔、その姿に自然と身体が止まってしまった。

 

「捕まえたーー!!!」

 

 そして何故か、ウェクトル目掛けて突進してきた。

 突然の事だ。その突進は腹に直撃し、なんとも無様な姿を晒していた。倒れた姿勢は仰向け、その三人に馬乗りに乗られ、何故かビンタを受けた。

 

「うわっ…ちょぶ…ぶへ…」

 

 何度も何度も、三人から繰り出される絶え間ないビンタに狼狽して、思った以上に静止の声を出せない。

 

「ちょっと待って!オレ君達に何かしたー!?」

 

 なんとかビンタの嵐から隙を見つけて、これ以上されないように腕でガードしてから、この理不尽に疑問を呈した。

 

「しすぎたからこうしてるんでちょ!ちょっとはたよって!」

 

「意味がわからないよ!」

 

 理不尽な暴力に耐え切れず情けなく逃亡するウェクトル。ヒリヒリする頬を押さえて、持ち前の逃げ足でその場から離れると、訳も分からず走っていた。

 最初は三人だけかと思いきや、それが数十人単位での追いかけっこに変わった時はすかさずヴァルツェスに空間の穴を開けてもらい、場所を移動した。

 

「っはぁ〜!大変な目にあった」

 

 先程起こった出来事に自身の不始末を疑ったが、その答えが出る筈もない。幸先を不安にしながらも、これからの行動に気をつけるのも束の間、一人の少女がやってきた。この地特有の布面積の薄さとはまた違った特徴的な衣装を見に纏った紫の少女。どうしてか、彼を見た時の顔は実に嬉しそうであった。

 死の匂いが濃い少女だ。一目見てそれがなんなのか理解できた彼は特に何かするでもなく、軽い会釈で返す。

 

「…初めまして、こんにちは」

 

 その言葉で少女の顔は真っ青になる。口に手を当てて、信じられないモノを見るかのような仕草でうずくまってしまった。何か粗相を犯してしまったのかと様子を見れば、少女はうずくまったまま、少しだけ身体を震わせていた。気まずい空気に彼自身心配になりかけた所で、少女が起き上がると、花の匂いが鼻腔をくすぐった。

 

「えっと…?」

 

 両の頬に添えられた華奢な手に困惑して、胡蝶の少女の顔を覗く。

 

「あなただけに背負わせません…。私も、共に歩みます」

 

 初対面の少女にも、並々ならぬ感情を含んだ言葉を贈られ、挙げ句の果てには抱擁を交わされる。

 こんな経験、ウェクトルでさえ初めてだった。ドッキリかと思ったが、ドッキリにしては表に出される感情の表現が本物すぎる。それに見ず知らずの人間に対してするにしてももっと他にあるだろう。

 なんともいたたまれない空気に耐えかねたのか、少女の抱擁から逃れ「ごめ〜ん!」と間延びした謝罪をしながらその場を後にした。

 それからは他者から与えられる並々ならぬ感情の嵐。何かした記憶もないのにあらゆる人から謝罪、懺悔、いずれにしろ他人がしていい距離感ではないソレに圧倒されていた。

 

「スーたん!よかった…。ちゃんといたんですね……。よかった…本当に…よかった………」

 

 ある人は彼の無事を心の底からの涙を流す程安堵していたり。

 

「あの二人程じゃないけどさ…。トルっちが人を頼らない性格なのはわかってるつもりだよ…。だけどさ…ちょっとは頼ってくれてもいいじゃん…じゃないとお願いした意味もないよ…」

 

 ある人からは見覚えのないお願いに対してその信憑性の無さに問いていたり。

 

「見つけたぞ道化卿、さぁ今日も僕の為に芸を魅せてみろ」

 

 またある人には道化扱いされ、何故かチェスの誘いを受けたり。

 

「そうか…いや、どうしてこうなっているのかはわからないが…。それはそれとして魚料理を振る舞ってはくれないだろうか、星海の魚」

 

 この人…は多分飯を集ってるだけだろうから、望まれた通りに魚料理を振る舞ってあげた。

 何はともあれ、そのどれもが彼にとって見覚えのない人の異様な距離の近さ、これには彼も辟易していた。

 

「何がなんなんだ…?」

 

 訳のわからない出来事から逃げ続けてはや数分、息も絶え絶えにしながら、やってきたのは廃墟であった。

 辺りはボロボロで、瓦礫だらけのここには目新しい物はない。人気もないことから少し休憩を取る意味でも彼は周囲を散策する。

 

「…やけに親切な人が多かったな」

 

 先の件、見ず知らずの人間が彼を昔から知っているかのように接してきた時を思い出す。もちろん、彼自身に親しくした記憶も、以前ここにきた記憶もない。

 どころか、自身を死人じゃないかと疑う者までいた始末だ。可笑しいのは明白であった。

 

「…まさか、未来のオレがなんかして、それでみんな…って感じなのか?」

 

 ただの勘、対して考えもしない頭から溢れた答えの一つを彼は一笑する。

 

「だとしたらそれは繭を解き放った時になるな」

 

 そんなことをすれば自分は死んでしまうが。なんて言葉を足して、瓦礫の中から自身の手のひら程ある石ころを掴む。

 身体の不調はない。強いて言うなら今掴んでいる石ころを握力だけで砕けないのが弱くなってしまった自身の不甲斐なさを感じて辟易するだけだ。

 

「そんなことしたら死ぬし、やるとしたらよっぽどのことじゃないと…いや待て?さっきから感じる異質さはそれなのか?」

 

 何かを察し始めた辺りで、死角から瓦礫が崩れる音がした。その方角からは人の気配もする。まさか、こんな所に人が来るとは思うまい。

 

「……しん…ゆう…?」

 

 と、言い訳を自分に聞かせながら、ここからの行動を思案するのも束の間、背後からやけに聞き慣れた懐かしい声を受けて、振り返ってみれば一人の青年がいた。

 空雲を思わせる白い髪に青空のように澄んだ青色の瞳、前いた世界でのキアナと、そしてもう一人の青年に酷似している容姿の男性がいた。

 そう、崩壊現象に誰よりも目を向け、誰よりも律者に立ち向かった一人の英雄の瓜二つがそこにはいるのだ。

 

「…」

 

 ケビン…なんて言葉はついぞ出ることはなかった。

 それよりも先にウェクトルに強い抱擁が交わされたからだ。

 

「…え〜…っと…?」

 

 訳のわからない状況にどうすればいいかわからず、そして行き場のない手はどこに留まれば良いのかわからずに宙を彷徨う。ケビン似の彼はウェクトルよりも背が高い為に抱きすくめるような形になっていた。

 

「ごめん…。僕が不甲斐ないばかりに、君に自己犠牲を強いてしまった…本当に…ごめんなさい…」

 

 その時、彼は微かに呟いた謝罪の言葉と同時に、男の身体が震えていたのを感じた。

 状況は未だにわからない。だが、感情をむき出しにして接してくれる相手を無碍にもできないウェクトルは、受け入れたように男を支えた。

 

「俺は君のことを知らない。でも、君がどんな人なのかはわかってるつもりだ」

 

 行き場のない手を男の背に、片方の手をその頭に添える。

 

「俺はウェクトル。あなたの名前を教えてくれませんか?」

 

 そう言って、彼は手を差し伸ばした。

 向けられた手を泣き腫らした顔で見つめた後、男は確かに、その瞬間を嬉しそうに掴むのだった。





 どうしてこんな流れになってるかと言うと、大体主人公がやらかしてます。オンパロスは原作通りループをしていて、そこに変数である開拓者一同が来るのも原作通り。
 そこに願いの申し子たるウェクトルがやってきて、なんか色々とやってる内にこんな現在が生まれてしまいました。
 何故かカイザーも生きてるし、トリビーもその数を減らすことなくいますし、ファイノンも怒りの炎を宿しながらもこの地にいます。

 ただ、やりすぎたせいでオンパロスの住人から向けられる視線は並のものではなく、これからのお話は恐らく彼の扱いによって問題が起こることになるでしょう。

 追記
 抜けている部分がありましたので、文を加えました。

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