旅をしたいのに周りが許してくれない!   作:どこにでもいる名無し

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 オンパロスが終わってしまった…。私の体たらくで書きたい話を書く前にオンパロスが…みんなが。
 それにしても話が複雑で面白かったですね。あれってエリオの正体がアレでいいんですかね?
 他も考察する余地がありますが、とりあえず読み直す必要がありそうですね。


壊滅を理する崩壊

 その惨状を己が眼に写し、彼が冷静に物事を処理できないなら、それは紛れもなく『地獄』と言えよう。

 

「……俺、なんで生きてんだ」

 

 オレ、ではなく俺と自身の俗称を定めていない彼の心情は穏やかではなかった。服は戦火の余波でボロボロに、土で汚れ、懸命に駆け回ったのか靴は底がなくなり、裸足に近しい状態であった。

 漠然と、口にした言葉は事実を基にした根拠のある発言だった。

 オンパロスにおいて、彼は紛れもなく誰よりも弱い存在だった。純粋な腕力なら雑兵一人にすら負ける。列車の皆と行動した所で役に立つ筈もなく、だからこそ彼は単独行動を選び、今際の際まで一人でいることを選んだ。

 しかしそれは、鉄墓に壊滅の道筋を示すまたとない経験を与えてしまった。

 ライコスの策略により、まんまと嵌められた彼に待っていた末路は諸人に見送られる死ではなく、守るべき人々の死を眺め、悲嘆に暮れること。

 

「…は…ぁぁ……」

 

 人の死には慣れているつもりだった。誰よりも生き物の死というのに触れて見送ったつもりだった。あの日、あの時、自分が人として生きると決めた理由の出来事から幾つの別れを送って来ただろうか。

 しかし、こんなにも己の無力を痛感し、仲間たちを皆殺しにされるのは耐え難い苦痛であった。苦痛に慣れることができなかった彼はその場で蹲り、その身を掻き切る。

 

「あぁ…くそ、最悪な気分だ」

 

 吐き出されない不快感に悶え、血が滲むほど掻きむしる彼の顔は虚無だった。胸に空いたような空虚の感覚も失った命に対する感情の摩耗か。

 

「やることは…ある」

 

 それでも、諦めずに進まなければならない。人間として、この地に生きる一つの命として、報いる為に進むことを選んだ。

 

「まずは、星…ベクターの所にいかないと」

 

 目指す先はこの物語の主人公。この状況を打開出来るとすれば彼女しかいない。鉄墓の完成はもう変えられない、しかし彼女に付いている記憶の少女ならあるいは…。

 そう思い、探し出すのには然程時間は掛からなかった。

 

「ファイノン…!」

 

 白髪の青年、火を追う旅の救世主。懐かしの顔に出会い、思わず顔が綻んでしまう。男の腕には星がいたのも彼にとっては好都合で、同時にいいしれない不安もあった。

 ファイノンは膝を地につけ、天を仰ぐような姿勢に不安が残るが、それでも彼が抱える一人の少女を見て安堵で見ない事にした。

 

「よかった、無事だったんだな。ファイノンがベクターを守ってくれたのか?だとしたらありがとな」

 

 感謝の言葉を述べ、打開策を練ろうと話をしようとした時、彼は確かに見た。

 

「………」

 

 ファイノンは泣いていた。清廉な瞳から一筋の涙を流して、隣にやってきたウェクトルを見つめていた。

 どうして泣いているのかわからなかった。この状況は最悪で、それに対して泣いているのかと思ったが、それで泣くような心の弱い人ではないのは今まで過ごした時間でも理解していた。

 ならば何故か、その答えは直ぐに見つかった。でも、わかりたくなかった。わからないままでいたいから、見ることを放棄した。

 

「……ごめん」

 

 溢された一言は誰に対しての者か。ファイノンだけを映す瞳はやがて視野を広げて、星の姿を無意識に捉える。

 

「…………は?」

 

 ファイノンの腕には星が眠っていた。息はしていない。命の鼓動も感じない。ぐったりとした姿はこのオンパロスの惨状ではごくありふれた状態で…だからウェクトルも理解が早かった。

 

「嘘だろ…」

 

 そこまでするか?と呟いた言葉はあまりにも小さくて、ファイノンは気付いてはいなかったが、今二人に渦巻く感情は同一のものだった。

 危惧はした。しかしそれは脚本としてあまりにも破綻した内容で、認め難い過程の話で、だからこそこうして起こってしまった現実に、二人は語る口を失ってしまった。

 

 ーーー星は死んだーーー

 

 考えもしなかった最大のイレギュラー、それはこの詰みきった状況を戻す唯一の方法をもった少女との繋がりが途絶えた証拠だった。話として、完全敗北を知らせるには十分な内容だった。

 丹恒も、なのかも、ウェクトルの知る列車の仲間は死んでしまった。挫折すら覚えた彼は力が抜けてしまった。

 

「僕のせいだ。僕がもっと強ければ、相棒が死ぬことはなかったんだ…」

 

 悔恨の言葉を聞く余裕は今のウェクトルには無かった。今の自分たちでは鉄墓を倒すのは不可能。鉄墓との戦闘でヴァルツェスをけしかければ、この星は間違いなく壊れる。仮に倒せたとしても、この先の未来に最悪しか存在しない。どう考えても、この事態になってしまった以上敗北は確定したのだ。

 

「………諦めなければ、道はある」

 

 それでも、彼は前を向いた。

 オンパロスで出会った人々の思い出、その暖かな感情に触れて、旅の記録に残るような体験をした。将来を誓い合うような人だっていた。この先の未来に可能性を願う人もいた。悪い人もいたけど、それでも歩んでいく人達の姿はとても眩しくて、尊くて、手を伸ばしてしまった。

 だから、そんな彼等に報いる為にも、ウェクトルは二度目の消滅を覚悟した。

 

「最悪な形にはなったけどさ、まだやり直すことはできる」

 

 提示した希望の道、しかしそれはあまりにも細い道で、行えばタダでは済まない破滅の啓示でもあった。

 それがなんなのか知らないファイノンは、言い知れない不安と共にその方法を問うた。

 

「俺の中にはさ、星と同じ物質の他に、外の世界からの贈り物があるんだ」

 

 本当は消える筈だったけどな…と付け足しながらも言葉を続けた。

 それは彼にとって望まぬ贈り物で、切っても切れない縁なのだと知る望外の力。災いしか呼ばないコレも、その力を利用すればこの状況を変える手助けになるだろう。

 

「崩壊、壊滅とは違う似通った運命の力」

 

 地球での一幕を知る人間はいない。ここにいる顔馴染みに似た彼には決して知り得ない話だ。

 

「………でも…それをすればタダでは済まないんだろう?」

 

 もしそれができるなら間違いなくこの状況を変える一手になるだろう、いつものファイノンなら喜びすらしてたかもしれない。しかし、共に火種を探した時間の中で、ウェクトルの過剰なまでの自罰的な行動を知れば、それにデメリットが存在しない訳がないのだ。

 そうでもなければ、こんな詰みきった状況でこんなこと話すわけがないのだ。

 

「まぁ、戻った世界に俺がいなくなるだけだよ。大した損失じゃない」

 

 あまりにもあっさりとした返しに、ファイノンの眉間に皺が寄った。

 

「記憶だって戻った時と同じもので固定されるから何も心配いらない。多分、みんなオレのこと忘れちゃうだろうけど、きっとオレがいなくなった影響は理が上手く調整してくれるさ」

 

「…………だろ

 

「認める認めないの話じゃない。この宇宙が壊れる瀬戸際なんだ」

 

 手段は選べない。ウェクトルは既に決めていた。

 

「ふざけるなッ君が君自身の価値を決めつけるな!」

 

 そんなことを聞かされて、堪らなくなったファイノンは怒りの矛先をウェクトルに向けた。襟首を掴み、普段の様子では見られない鬼気迫る顔で睨み付ける。

 

「親友、君はいつもそうだ。自分を顧みずただひたすらに助けてその身を削る。誰かの傷を代わりに背負うような生き方で…その左目だって()()()()()()()()()()()()()!その度にどれだけの仲間が心配する!?その心配を無下にしていると思っているんだ!!」

 

 怒りの炎の一端に触れるような怒号であった。普段見ない姿からは、彼自身が被った地獄があるのだと悟れる。

 それでも、止まるわけにはいかないのだ。今こそこの身を壊すべきなのだと決めたウェクトルの目は、ファイノンの怒りを真っ向に受けて尚揺らぐことはなかった。

 

「うん、君の言う通りだ」

 

 このまま行けば、鉄墓は作成者の狙い通りヌースとの戦争が始まり、やがて宇宙は壊滅に向かうだろう。永い時間をかけて構築された宇宙はその衝突により壊れ消えていくだろう。

 作るよりも壊す方が楽なのだから、壊滅の運命は楽なものだ。

 

「ファイノン、君の怒りを背負うことはできないけど、これ迄の布石を強化することはできる」

 

「それって…!」

 

「まぁ、君の想像通りだと思うよ」

 

 ウェクトルでは、火を追う旅は分不相応だった。過去から今まで悪質は変わらずに身を焚べる彼では、旅を完遂することは不可能であった。

 だから、託すしかできない彼はこれからに可能性を広げる。

 

「安心してくれ、神様の一人くらい微睡に誘ってやることはできるさ」

 

 突如、ファイノンの首に鋭い衝撃が走った。稼働していた脳が停止してしまう中でただ一つ、ウェクトルの顔を見て、一粒の涙を流した。

 

「じゃあな」

 

 眠りについたファイノンを星の隣に並べた彼の顔は複雑に塗れていた。嬉しいような、悲しいような、怒ってるような、最終的には微笑みを浮かべて、その顔に覚悟を携えてウェクトルは壊れ行く大地をその言葉と共に後にした。

 

 ………………………

 

 赤黒い色に染め満ちる暗黒の潮、悠々と終わる大地を見据えるのは終末を模る壊滅の体現者。それは鉄墓と呼ぶべき天災で、打倒すべき存在だった。ライコスの思惑は完璧な形で完成してしまった。オンパロスという舞台を基に、ありとあらゆる壊滅を理解した鉄墓は知恵の星神を消すべくして起動してしまった。

 今のオンパロスは暗黒の潮に呑まれ、全てが簡単に包まれた蠱毒の星となり、正気を保った人物は数える程しかいない。

 オンパロスという人類は敗北した。一人の天才によって起こされた実験、その果ての研究成果が完成し、人々は衰退して行く。

 

 全てが消える。

 

 その時だ。

 

「残念、それは無理だ」

 

 虚空が破れるように裂かれた穴、そこから巨大な顎が生える。狙いは鉄墓の胴体を捉え、気付いた時には見事に上と下に分かれていた。

 星そのものを覆い尽くし、何処からともなく現れた黒い顎によって、鉄墓の身体はその力ごと半分に砕かれた。

 

「あの知恵人形が警戒してたから身動きできなかったけど、流石に大君が誕生したとなれば手薄になるよな」

 

 崖端、そこに佇む一つの人物は至って冷静に状況を呟く。その目に打破すべき対象を見つめ、今自分がすべき行動を示すかのように。

 鉄墓は知っていた。どの演算にも姿を見せず、どのような事が起きても目を閉じていた男の姿を。

 そして、その男を何よりも警戒して行動していた機械生命体の姿を。

 

「オレのミスだ」

 

 男は語る。後悔の懺悔は尽きることがなく。普段そういった感情を晒さない目に失意の念を携えて、こちらを見ていた。鉄墓はそれを理解するも冷静であった。

 

 この星は間も無く終わりを告げる。供給源を絶たれた機械がやがて尽きるように、この星は衰退し、無に帰すだろう。

 それを今のウェクトルでは変えることはできない。たとえ、涯ての外側から星辰の神者として生まれ落ちた存在だとしても、それすら失った貴方では、この崩壊した世界を救うことはできない。

 

「ああ、そうだな。そうだろうさ、誰にも頼らないで、力も無いのに頑張ったからこのザマなんだろうな。一人の力なんてたかが知れてるのに」

 

 目に見える感情は悲しみに溢れていた。無表情に、冷徹に、寒々しくなる声色で自身の失態を語る。下に向いた視線がまた鉄墓を見れば、その眼には何も映らなかった。

 

「…まぁ、それも今日で終わりだけどな」

 

 男は自分の手で胸を貫いた。何を…と感情の乗らない目を向ければそこには一つの星があった。壊滅にも似たエネルギーの集合体、凝縮された虚数の塊がそこにある。

 まさか、だとでも言うのか。その器にしかなり得ない肉体で、そんな大願荘厳を叶える力が残っているとでもいうのか。

 暗黒の潮が虚数の源に吸い込まれていく、茜色に染め上げていた空が水色に変わっていく。

 

「みんないなくなった今じゃ、オレが何しても咎められないわけだ」

 

 そして、男は指で示す。裂かれた穴から鉄墓よりも遥かに巨大な黒い龍が現れ、そのまま鉄墓を襲う。星すら覆い尽くすその巨大が溢れる暗黒の潮を吸収し、鉄墓の持つ力を奪いながら襲いかかってきた。

 

「なら好きにやらせてもらう」

 

 その光景を眺めて、一人静かに宙へ向かう。

 行き先は壊滅の星神がいる場所。ゆっくり、しかし着実にその場所へと進む。悍ましい数のレギオンに襲われながらも、その足を止めることはしなかった。身体を切り刻まれ、刺され、臓物を曝け出そうとも、それでも前へ前へと歩み出る。囲まれ、動きを封じられようとも、身体の悲鳴も聞かずに意思の力で邁進する。

 不思議なことに、使令は来なかった。警戒する価値もないと思われているのか、それとも誘われているのか。答えはわからないが、それなら好都合と歩みを止めずに、やがて目的の場所に辿り着いた。

 壊滅の星神ナヌーク。オンパロスの元凶の元凶の元凶。見下すように一部始終を眺める神を前に、ウェクトルは平然とした態度でいた。

 

「こうして会うのは何億年ぶりかな?」

 

 ナヌークは語らない。その眼に一人を映すだけで何も語らない。

 相変わらず寡黙な奴だと嘆息して、ウェクトルはその本題に入った。

 

「あまり長々と話すとアレだからな、さっさと終わらせるか」

 

 手を翳す、その手の先には虚数エネルギーの塊、神々からすれば両手で抱える程度の大きさでしかないソレは少しずつ微細に砕けて彼の手に吸われていく。背中からは翼が生え、腕は人間の形を保っただけの異形の手に変態し、顔の半分は形容し難いナニカへと変わっていた。

 終焉の繭、それはウェクトルが違う宇宙にいた時に起こる現象の元凶である。本来ならウェクトルの体内に残ってる筈のない力であった筈だが、それは魂の根底にまで取り憑いていた崩壊の残滓が今も残っていた。

 およそ力の4分の1、それでも強大な力だ。壊滅の星神に一矢報いる程度なら望める出力なのは確かだった。

 

 存える時間が崩れていく。

 ウェクトルがしようとしているのは至って単純な事だった。オンパロスのシステムを応用した時間を逆行させること。勿論、壊すことしかできない力しか持たない崩壊では時を戻すなどできない。そこでウェクトルの特異な性質が効いた。

 彼は運命を持たない、またはいつでも別の運命を掴めると言うのが正しいだろうか。力を別のものへと変換して、その力を行使する。そうすることで異なる力の流れをウェクトルというフィルターを通して濾過した後で別のナニカに変換する。

 逆行させるのが彼の目的だが、それだけでは終わらなかった。

 ナヌークに流れる時間が遅く、重くなっていく。神を取り巻く時間が止まり始めていた。ウェクトルは出し惜しみとナヌークにすら干渉していた。

 

(やっぱこれじゃ足りないな…。だったら)

 

 翳す手とは別の手で自身の身体を抉る。取り出したるは万界の癌である星核。それすら完全に分解して別の概念に変えてしまう。だがまだ足りない。もっと根本的なナニカを犠牲にしなければ、神の時すら逆行させ、あまつさえ止めようなど不可能だ。

 

 ならばどうするか、ウェクトルにとってその答えはすぐに出た。

 

 自分という存在が虚になる。世界そのものから忘れ去られていくのを感じる。ウェクトルは、自身の存在価値すら投げ打って、この勝負に挑んだ。

 知恵、記憶、壊滅。この三つはオンパロスを形作る運命だ。しかし、時間に干渉するのはそのどれかでもない。

 如何なる知恵があろうと時は変わらない。記憶に干渉しても時は戻らない。壊すだけの力に、時間は関係ない。

 だから掴むのだ。そのどれでもない、全てがたどり着く末路の運命を。

 そして、彼は見た。いや、見られた。

 

「…うん。止められるのは精々あいつらが成長した頃か」

 

 本当に、弱くなったな…。と呟く間も彼の頬にはヒビが入り始める。それは陶器が風化し、朽ちていく様で、欠け落ちていく破片は光の粒となって消えてしまう。眼球は破裂し、赤黒い液体を目尻から流して、指先から欠けていくのを自覚しながら、その力を振い続ける。

 

 崩れる、全てが、彼を取り巻く一切合切が。

 彼と共に培った知恵も、共に過ごした記憶も、彼自身の死でさえ、終局の果てへと辿り着いてしまった。最早この世界で彼を知る者も認知する者もいない。

 

 時間の逆行、それは成功した。しかし大きな代償を受けるのと同時であった。

 ウェクトルの身体が壊れていく、元々壊れた肉体から切り離された中身を仮初の依代に移しただけなのだ。肉体は崩壊の力に耐えることができなかった。

 誰もいない世界、孤独の空間で足を光に消えた彼は無様にも倒れ伏せる。誰からも忘れ去られた世界、取り戻した星の先に彼はいない。

 真の意味での死が、ウェクトルを待ち受けていた。

 

「…一人ってやっぱり寂しいよなぁ」

 

 人の想いも願いも一身に背負って、何の支えもなくその重みに潰された男の末路、それは壊滅の神とそれに使える使令の時を止めるという形で終わる。何もかも手遅れな世界に一石を投じた末路がこれではあまりにも情けない。

 身を捩り、なんとか仰向けになるウェクトルの顔はどこまでも清々しかった。

 

「前はキアナに看取られて死んだっけ、だからなんだって話だけどさ」

 

 自重気味に語る、はははと笑う彼の側には誰もいない、何もない。孤独に朽ちていく末路をなんとまぁ自分らしいと嘲笑うウェクトルは大きくため息を吐いた。

 

「オレがここまで頑張ったんだ。みんなも頑張れよ」

 

 彼の行った行動は些細なことだ。星神に対しての行動抑制と、それを巻き込んでの時間逆行。人から見れば人智を超えた所業となるだろうが、星神にとって彼に止められる時間など、瞼を閉じて、開くの動作を行う程度のものでしかない。

 意味はあっても、そこに付随する価値は無い。

 実に愚かな末路だ。人から、星から、世界からも忘れられ、また一粒の望みに賭けて時を戻す。そう言って、光の粒と消えて死んでしまった。

 

 その末路を、ヴァルツェスは許さなかった。

 

[………]

 

 粉々となった鉄墓の残骸を足蹴に、遥か彼方を見渡す。オンパロスと呼べる星は戦いの余波で粉々になり、最早運命が混じることのない宇宙の藻屑と化していた。

 映る惨状を無機質な瞳に、その身体を粒子と消えて逝く彼の最期を見届けるまで動くことはなかった。

 元より、あの男がすることなどわかっていた。星と人間を天秤に掛けて、何方かに傾けることなく水平に保つような男が、人間を犠牲にして事を解決させるなどありえなかったのだから。

 それをわかっていながら、彼の好きにさせてしまったのも、彼に創られた命として、主の造物体として尊重したい気持ちがあったから。

 

[……おこった

 

 だが、それももう終わりだ。

 物言わぬガラクタを踏み砕き、口端から空間そのものが歪曲する吐息を吐く。そうして、龍は飛び立った。

 所は変わり、そこは泡の外、無数ある宇宙を俯瞰して眺め、ここならば己の力を行使しようと壊れる心配はないと確信する。

 気が遠くなるような年月、常に力を使い、その身を弱くしたウェクトルとは違い、ヴァルツェスは星を喰らい続けその力を高めていた。

 その力はとうに造物主の全盛期に近づき、一つの運命を身に宿している。

 黒き龍、外なる領域から生まれし慮外者から生まれし星の終焉機構。

 その力が、今振るわれた。

 時の流れを掴み、好き勝手に弄くり回す。小さな歪みによって大きな問題が起こらないよう繊細に扱いながら、戻り行く時の設定を書き換えて行く。

 横から、何かが嘲笑う気配を感じた。ちょうどいい、コイツの力も使ってしまおう。ソレが何かはわからないが、掴んで絞るだけ絞る。力はいくらあっていい、自分の力の温存を図れるならそれ以上のことはないのだから。

 あるモノは現在と同じように、ある者はその記憶を継いだまま。流れて行く世界に乗せていく。大掛かりな時間の操作は、思いの外手間の掛かるものであったが、それがなんだというのか。

 ウェクトルの諸行によって逆行していく世界を眺めながら、その法則を歪に歪めていき、こねくり回す。散々迷惑をかけたのだ、ささやかな報復をしつつ、逆行前の影響を虚数の樹諸共ダイレクトに与えていく。

 そして…時は戻り、時間は今に至る。

 

「ふ、不幸すぎる…」

 





 バッドエンド『鉄墓の完成。星の死亡』
 鉄墓が先に完成してしまい、その余波でオンパロス住民死亡。おまけに列車の皆死亡。
 完全に詰み切った状況で、主人公は魂にこびりついてた崩壊も使って宇宙丸ごと時を戻して鉄墓の完成をリセットしました。あとついでに一瞥されないようにナヌークの時も止めました。


 ヴァルツェス
 ビキビキにキレてる飼い龍。こうなった原因の鉄墓をボコリつつ、逆行していく因果を操作して、なんとかウェクトルを生還させた。
 ささやかな復讐として、オンパロス住民に彼の体験してきた地獄を一部だけ見せた。

 鉄墓
 オンパロスのラスボス。ヴァルツェスに完封されてあえなく敗退。

 ライコス
 この一件で、鉄墓完成させる前にヴァルツェスなんとかしないと意味無くなることを理解。

 ナヌーク
 久しぶりの顔見知りがこっちに向かってきたから何するんやろーと軽い気持ちで勧誘。そしたら時止められた。くぅ〜〜!ナヌナヌ〜〜!!

 壊滅の使令面々
 鉄墓がボコボコにされてて沸いてた。
 『生まれてこの仕打ち。うんうん、これもまた壊滅だね』無敵か?

 愉悦
 戦闘の余波に誘われて来てみたら面白そうなことやってたので観戦、そしたら力絞られて利用された。くっそウケるww。

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