旅をしたいのに周りが許してくれない!   作:どこにでもいる名無し

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 なんだか知らない間にお気に入りが増えててびっくりしました。差し支えなければ高評価もお願いします!
 あとちょっとしたアンケートを取りたいと思います。


クラーラの場合

 

 彼は旅人である。数多の宇宙、数多の星、数多の人と出会いと別れを繰り返している。

 彼は複数の名前を有している。時代の風景、状況に応じて合う名前を駆使する。だが勘違いすることなかれ、全ては真名であり決して偽名などではない。

 彼は人との出会いを何よりも尊重している。その為時折り旅ができなくなる選択肢を選んでしまう時がある。

 さて、そんな彼は次の文明でどのような巡り合いをするのだろうか…。

 

 旅をしたいのに周りが許してくれない!

 

 …

 ……

 ………

 

 かつて、星穹列車は星核が眠ると言われているヤリーロⅥへと足を運んだ事があった。

 そこは極寒の地、人々が生活するには過酷な環境下の星で、今も尚その寒さは衰えていない。だからと言って人類がいなくなったわけではない。名をベロブルグ、人類最後の希望。

 彼はその星に適応する為の名を『カイス』とした。

 

 カン…カン…カン…と何処かで鉄が叩かれる音が聞こえる。

 ここは下層部、ベロブルグの地下と呼ばれるこの場所では、貧困に追いやられた人々が隠れ潜んでいた。

 昔は行き来すら隔絶された場所ではあるが、その大元の理由となった星核がなくなった今では外交の問題も解消され下層部の人間は上層部の空気を吸えるようになっている。

 そんな下層部にて、一人の流浪人が動けなくなった機械に改造手術を施していた。

 ある時は金槌の音、またある時はドリルの音、果てに至るまでの作業は一人の少女に感銘を与えると同時に着々と終わりつつあった。

 

「………ふぅ、無事完了だ」

 

 特徴的なガスマスクから発せられる男のその言葉に白髪の少女は喜びの感情を露わにする。

 彼女はクラーラ。下層部に住む子供で、ロボットと暮らしている少女である。幼いながらに独自の価値観を有し、己ができる事を探せる強い子だ。

 

「カイスさん、ありがとうございます。この子怪我が酷くてクラーラじゃどうにもならなかったから…」

 

「気にすることはないさ。君はまだ若い上に飲み込みがいい。わしの動きを真似れば一年も待たずしてできるようになるさ」

 

 カイス、と呼ばれたその男は手拭きで拭いてからクラーラの頭を撫でる。妙に老人を想起させる落ち着きをはらった声を聞いてから見るとその光景はさながら孫と祖父を思わせる構図だ。

 満更でもない顔でカイスの手を堪能する少女の横には下層部を守る旧時代のロボット『スヴァローグ』の姿があった。どうやら一部始終を眺めていたらしい。怪しく光る一つの目はカイスを捉えている。

 その視線に気付いたのか、彼もスヴァローグに目を向ける。

 

「君も、この子ならできると思うだろう?」

 

「回答…クラーラは独自で機械を修理する術を持っている。貴方の技術もいずれは超える形で習得できるだろう」

 

「すっスヴァローグ!?」

 

「はっはっは!それは本当に…楽しみだ」

 

 聞き手によっては失礼なスヴァローグの発言に、クラーラは驚き、カイスは愉快に笑う。

 特に気にする様子もない彼に内心ほっとするクラーラを他所に、カイスは修理が完了したロボットを優しく撫でる。

 

「クラーラがそうなれば、わしの役目も終わるな」

 

「………っ」

 

 本人にとってはどうでもよく、何気ない一言だったかもしれないが、クラーラにとってはそれが何処か誰も知らない遠くへ行くんじゃないかと不安を掻き立てる言動だった。

 少女の胸中には逆らいがたい焦燥と哀情が渦巻いている。人間の複雑な感情はスヴァローグにはわからない、一人物憂げな表情に変わるのを気付くものは一人もいなかった。

 

「あの…カイスさんは、クラーラの事が好きですか…?」

 

「ん…?あぁ…好きだとも、君も、スヴァローグ君も」

 

 クラーラは大胆な事に自身の評価を確かめてきた。己の感情に始末を付ける為には当の本人にどう思われているのか聞くしかない、カイスに「好き」という言葉を聞いて一喜したが、その後に付け足された言葉になんとも言えない顔をする。

 

「好きだから…そうだな。クラーラにはこれをあげよう」

 

 すると彼は身に纏っていたマントを脱ぎ、クラーラに羽織らせる。身長に差があるせいかどうにも着こなせていない感が否めないが、彼女の内心は穏やかじゃなかった。

 

(ーー〜〜ッッッ!?かっかかカイスさん!!??)

 

 顔が赤くなる感覚を自覚しながら密かにマントを堪能するクラーラ。

 

「君は裸足でいつも寒そうだったから不安だったんだ。本当は靴でもプレゼントしたい所だが、君は靴とは相性が悪いと聞く、どうかコレで許しておくれ」

 

 耳元から聞こえる彼の声に背筋からゾクゾクとえも言われぬ未知の感覚を感じて、ただでさえ赤い顔が更に真っ赤になる。その様はさながらリンゴ、後門にマント前門にカイスで、最早自身の心はキャパオーバーだった。

 

「ッーーー!」

 

「おや、そんないきなり走っては危ないよ」

 

 我慢ならず走り去ってしまったクラーラに注意の言葉を送る、距離も考えて聞こえていないのはわかっているので、すかさずスヴァローグに「行ってきなさい」の意を込めたジェスチャーで指示を飛ばした。

 

「依頼の要請、クラーラに関する事も含め内容を受理」

 

 あっさりと了承し、クラーラの元へ向かう後ろ姿に手を振って見送る。見えなくなる二人のベストパートナーにマスク越しから微笑むカイスは独り言を呟く。

 

「…六月かな。あの子ならきっと、オレの数千年を超えれるだろうな。いやぁ…楽しみだ」

 

 カイス、星穹列車での名前をウェクトル。彼は知らない、先の少女クラーラに向けられている感情を。選択肢次第では刺されかねない彼の未来に幸あれと願わざるを得ない。

 





 カイス
 賢いが由来。
 技師として優秀な研究者で、下層部では一日中ロボットを直している変人として見られているし、関わると性壁を曲げられることから要注意人物にも指定されている。

 クラーラ
 無自覚に性癖を曲げられた可愛い女の子。渡されたマントの匂いを嗅いでは甘い痺れに体を悶えさせているとかなんとか。

 スヴァローグ
 保護者

掲示板的な何か

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