アオのハコ#248 「どんなに世界が広がっても」SideB 夜は更け往く
まったく、言ってくれるよ。私がどれくらい悩んだか、どれ程言葉を選んだか、想像くらいはしてほしいな。
あんなにもアッサリと、でもあんなにも熱く。――同じ言葉を返してくれるなんて。
一生を共にしたい、そうお互いが願うなら。それが叶わないなど、ありえない。
私の右手薬指、銀の指輪に落ちかけた夕陽が煌めく中。私たちは手を繋いだまま、浜辺を歩いていく。
いつぞやの民宿へ、今度はアクシデントではなくそこを目指して。
心臓は早鐘を止めず、一息毎に夏の暑さとは違う熱が肺を焼いてるのが分かる。輝く世界の光彩が瞳を輝かせ、風の音さえ違って聞こえる。受かれてるな、これは。
胸に溢れるのは不安か期待か、それとも。それとも……なんだろうな。まあ、良いか。大喜くん――大喜が隣にいるんだ、大丈夫。
うんまあ、万が一にもおかしな事にはならないとは思うけど。思うけど、ね。
ちょっと一人になると色々と考えてしまう、不器用な頭が恨めしい。
潮風を浴びたしちょっと日にも焼けた、コンディションを整えないといけないのに気が鎮まらなくて仕方ないったら。
思えば一昨年は大雨と土砂崩れでやむ無く一夜を共に過ごしたけど、今回は故意に泊まるわけだ。大喜と一緒に、大喜の隣で。
この前同じベッドで――寝た、時はキスだけして寝落ちしちゃったからなぁ……。目が覚めても身体に違和感は無かった、なにも起きなかったという訳で。
……大喜は何て言うか、何て言うか。安心はできるんだけど、もうちょっと積極的に来てほしい。
私から迫っても平気だろうか、引かれないだろうか。それが心配なんだよ私は。花恋にも変態ちーとか言われるし、そこは否定しないのか親友。
それこそ考えたって仕方ないんだけど、さ。
お風呂に浸かりながら思考は堂々巡り、ぐるぐるぐるぐる回るだけ。
勢いでどうにかするしかない、かな。
食べ過ぎてお腹が出やしないだろうか、なんて一瞬悩みはすれども成長期の胃袋は加減なんか効かない。さすがに大喜と同じ量は頼んでないし、平気だ平気。
またあの晩みたいにゲームなんかしても見るけど、深入りはしない。大喜が広縁で寝ちゃってそのまま朝になってた、なんてのはちょっとね。
ちくたく、ちくたく。
楽しい時間を過ごしながら夜は更けていく、さすがに大喜も何かを察したのか少しだけ表情に緊張が見える。
いや、いやいや。いやいやいやいや、緊張するのはこっちですからね。そっちはほら、痛い思いをするわけでもないんだから。
などと口にするのは野暮だから、私は気付かないふりをしながら――視線をすっと布団へと落とした。
もうじき、もうじきだ。
もうじき、その時が来る。どうなるか、どうするか。それは……さて、考えてどうにかなる事じゃない。
分かっているのは、一つだけ。今夜が私たちにとって、大きな意味を持つということ。
さぁ、出があるよ。