アオのハコSideB #101~   作:扇町グロシア

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アオのハコ#200 「近づけたらと思うから」SideB 初日は過ぎる

 上手くいっているようで何よりだな、皆。

 修学旅行の喧騒の中で、俺は小さく息を吐く。嫉妬してるとかそんな事はないけど、でも多少の感情はある。俺だって受かれたいんだけどな、せっかくの旅行なんだし。どうも素直にそうできないのは、俺の悪い癖だ。

 ゴールが見えると足がすくむ、結局は届かない。咲季も守屋さんも、そうだったから。

 

 咲季に彼氏が出来たときショックだったのは、隠そうともしてなかったという事。彼氏連れで家に入った所を見られたのに、あれこれと言い訳する事もなかった。つまり咲季は俺を単なる弟分としか見ていなかった、男だと思っていなかった訳だ。そこから何年も経って、去年の文化祭でも大して変わってはいなかった。彼氏に焼きもち焼かせる為の当て馬として、或いは隣に置く為のカカシとして俺を必要とはしたけれども。

 ――好きな人がいる、と俺が言った時に一瞬見せた表情。あれは所有物を取られて悔しがる顔、俺が思い通りにならなくて困惑する顔だった。あそこでキスして、付き合ったとして。彼氏がよりを戻そうと頭を下げてきたら、俺はまた都合の良い存在へと戻されていただろう。必要なときだけ押入れから引きずり出される、古ぼけた人形のように。

 

 ふと隣を見ると、大喜がバスの窓越しに写真を撮りつつニヤけてる。

 多分と言うか絶対、千夏先輩に送るんだろう。あの二人の事だし、一緒に修学旅行行きたかったとか並んで観光したかったとか、そんな話をするのは間違いないな。側で見守ってきた身としては上手くいって喜ばしいけど、さすがにちょっとだけ熱にあてられそう。

 ……そう言えば前に「想いが叶った奴に言われてもな」とか嫌味ったらしい事言っちゃったっけ、何処かで謝りたいけどタイミングが掴めないままだ。

 守屋さんが高砂と付き合い出した事に、俺の存在は関係ない。しかしまあ、まさか咲季にああ言った直後にああなるとは。俺を助けてくれたその足で高砂の告白を受け止めた訳で、大した胆力だよ。いや皮肉でもなんでもなく。

 もしあれが夢でなかったら、告白できていたら。間に合ったのに、あんな思いはしなくて済んだのに。

 俺はいつの頃からか、守屋さんを好きになっていた。

 でも彼氏が出来たなら引き下がるしかない、……筈なんだけど未練がましい俺は振り切れずにいる。思えば蝶野さんは、大喜が千夏先輩を好きだと知っても果敢に向かっていっていた。負けると分かってても、何を言われようと羽ばたいた。そして今やすっかり立ち直り、大喜とも千夏先輩とも仲良くやっている。

 俺ももし、ああなれていたら。この口惜しさは、消えるのだろうか。

 それこそ柄じゃない、かな。

 

 しかし何故うちの学校は宿泊代をケチるのだろう、三人一部屋で一人仮設ベッドとか無いだろ普通。合宿で雑魚寝は馴れてるけど、こういうのはちょっと予想外だな。

 じゃんけんで負けてベッドを取れなかった工藤はまだグチグチ言ってるけど、生憎俺は忙しい。

「俺副班長の仕事あって」

 だからこれ以上聞かんぞ、と立ち上がるとするのに被せるように大喜も部屋を出ていく。まあこの時間だ、千夏先輩に電話だろうな。そう言ったら工藤が絶対やっかむから、ただ見送るけど。

 修学旅行二泊三日は、まだ初日が終わってもいない。ここから何が起こるか、どうなるか。まあどうにかして俺が面倒見てやる事になるんだろうな、俺の性分としては。

 

 

 

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