アオのハコSideB #101~   作:扇町グロシア

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アオのハコ#201 「大切に」SideB 知らない街を歩いてみたい

 知らない街を歩くのは楽しい、観光地なら尚の事。部活の遠征とかで他所の土地には行くけれど、旅行なんて久し振り。たまにこういうのも良いものだな、うん。

 でもふとした瞬間、思ってしまう。千夏先輩と一緒に歩きたかったな、と。一学年違うんだから並んで修学旅行になんか来れるわけないんだけど、考えてしまうのは仕方ない。

 別に一年差で生まれたことを悔やみはしない、歳が違うからこそ良かった事だってあるだろう。

 同じ視点で、でも高さだけ少しズレていて。俺たちは同じじゃないけど、だからこそ一緒にいられる。

 ――去年の今頃、千夏先輩はどう思ったんだろうか。

 

 一月に付き合いだして、誕生日を祝ってもらって。バレンタインを経て、修学旅行の日が来た。

 先輩が家を空ける事自体は珍しくない、夏はインターハイがあったしそれ以外にも合宿や遠征があった。ほんの数日、それだけだ。……なんて嘯いても、実際結構寂しかったな。まさかそのあとで、同居解消が前倒しになるとは思わなかったけどさ。

 でも寂しかったのはきっと、先輩もだと思う。まだ公言してなかったから大っぴらに旅行写真を送ってきたり通話したりは無かったけど、良いタイミングでメッセが来たりしてたし。

 一緒に回りたいな、とか隣にいてほしいとか、思ってくれたんだろうか。そうだと良いな、なんて。

 まあでも、京都は来年も再来年もある。この先どこかで予定を取って、二人で旅行に来るという選択もあるか。

 来年俺は栄明を卒業する、そのあとバドをどうするかは考えていない。先輩がバスケに一区切り付けたように、俺もそうなるかもしれないんだ。プロを目指す道は、……どうだろうなぁ……。俺にはちょっと難しいか。

 なんにせよその後は今よりは時間が出来る訳だし、大学生と言えば大人な訳で。

 団体旅行ではなく二人だけで、何日もかけて呑気に京都を廻るのも楽しそうだ。

 そういう事もしていきたい、色々と。俺は千夏先輩が、好きだから。

 

 千夏先輩がいたから今の俺がある、そしてこの先に俺が歩む道にも千夏先輩はきっと寄り添ってくれる。そうならなかった俺なんて想像も出来ない、したくもない。俺はそこまで強くも逞しくもない、それでも今を疑いたくないから。

 これからも二人で過ごしたいと願うなら、頑張らないと。   

 それにしても卒業後、か。俺もそうだけど、皆はどうするんだろう。雛は新体操で更に上へ行くだろう、匡がどういう進路を選ぶかは分からない。弟妹の面倒も見ないといけないから、と言ってたけど就職では無いと思う。

 俺が卒業する頃は、晴人がバド部の纏め役になっていそうだ。匡とはベクトルが違うけど、なんだかんだで部長向きな気がする。あかりは……まあ女バドの部長とかそういう柄じゃあ無いな、続けてるかどうかも……いやまあ失礼な話だけど。

 とは言え人の事まで俺が考えても仕方ないな――って。

「あれ? 匡……?」

 ふと顔を上げると班のメンバーは何処かに消え、俺は一人で金閣寺側を歩いていた。え、これは――まさか。

 あいつら、はぐれたのか? なんでフラフラ歩いていくんだよ揃いも揃って。

「あー……まったくさぁ……」

 それこそどうするんだろう、だ。こっちがちょっと考え事するとこれだ。

 とりあえずメッセして居場所探るか、いっそ俺も好きに動くか。

 さぁ、どうしようかな。

 

 

 

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