別に本気で文句を言いはしない、旅行ってのは好きな方だし。とは言えさすがに寺なんか見てもな、というのが正直な感想だ。そりゃまあ
それに、……それにどうも、蝶野さんたちは苦手だ。栄明はスポーツ進学校だからああいうアスリート気質が一般的で、私らみたいなのは少数派。だからこそどうも、馬が合わない。いつも全力で頑張ってキラキラしてて、ぶっちゃけそばにいると劣等感が込み上げてしまう。菖蒲がいなかったら、多分関わらないまま卒業したんだろうな。
いつの間にかその菖蒲も、あっち側に行こうとしている。私らの友情は、何処へ行ったんだろうなぁ。
栄明の高等部に入ったのは、学区内では偏差値が手頃だったから。公立高は親が世間体もあって嫌がった、それにまあ私も行きたいとは思わなかったな。
特にスポーツなんかしてないし部活も興味ない、そういうのはクラスの中で一塊になっていくのが自然で、菖蒲たちと仲良くなったのもそのお陰だった。
話が合うし趣味も近い皆と、楽に楽に適当になんとなく過ごすのは心地好い。好きなことしかしないし合わないなら逃げる、いつだってヘラヘラ笑って生きてきた。それが私らで、そして菖蒲のはず――なんだけど。
その菖蒲がバド部のマネージャーなんかやると聞いたときは驚いたな、うん。……まあオトコ目当てだったんだけどね、しかもそいつ他所の学校のバド部員で練習試合くらいでしか会えないんだけどね。
宛が外れたなら辞めちゃえば良いのに、珍しく続いてるんだよ不思議なことに。あれがマネージャーなんて、よく勤まるもんだ。
やることはやるけど無理も無茶もしない、失敗は笑ってごまかすし物事は頑張らない。そんな無責任でふわふわした感じだった菖蒲が、まさかあんな真剣になるとは。例の男子の他に良さそうなのがいたのかな、って思ってたら全然違う所の男子と付き合い出す、あれはやっぱり何考えてんだか分かんない。
高砂くんも高砂くんで、菖蒲のタイプではなさそうなんだよね。即飽きて振る展開を予想したけど、年が明けても続いてる。これもまた、不思議なものだ。今までは適当な理由で適当に別れていたのに、どうして高砂くんはこんなに長持ちしてるか見当もつかない。重ね重ね、不思議なものだ。
不思議と言えば蝶野さんとの付き合いもそうだな、片想いに首突っ込んで盛大に玉砕させたとは風の噂で聞いたけど、それでもまだ友達でいられるんだから向こうも大概だろう。大物なんだか底が抜けてるんだか。その辺が、神は二物を与えずって事なのだろうか。
栄明のスーパースター、血筋も努力もズバ抜けたエースオブエース。そういうのは私らの世界にはいない、いなくて良い。努力は必ず実を結ぶし勝つまで諦めない、そんなまるで――主人公みたいなのは。私だってずっと頑張らず生きてきた訳じゃない、夢だってあったし希望に燃えた時期もあった。でも、それを続けるのは無理だったんだ。頑張った結果がマイナスになる事もあるし、裏目も引く。結局は届かない、逃げた結果がこの体たらく。
あんな風に一途に頑張られると、自分が惨めに思えてしまう。上手くいってない自分が悪いんだけど、だからってそこを突かれたくない。
菖蒲無しであれと一緒にいるのは、やっぱり無理だな。まあ同類の島崎さんがいるし、ほっといても構うまい。私らは私らで遊ぼう、うん。
菖蒲は今頃彼氏とデート中かな、肖りたいやら金借りたいやら。
「……さて、どうするかな」
制服姿の女子三人、行ける場所は限られてる。でもその中で楽しもうじゃないか、せっかくの修学旅行だ。
私らは蝶野さんたちとは噛み合わない、でもどちらかが間違ってる訳じゃない。これで良いんだ、これで。