うんまあ、そうだよね修学旅行の夜は恋バナだよね。そうなるよね、うん。
その直前に彼氏と別れてきたとか、想像するわけないし。て言うかなんでこのタイミングでする、お騒がせな。
まさか人がお風呂前のだらだらした時間を楽しんでいた隙に別れ話をしていただなんて、私としてもびっくりしたよ何なんだろ。
本人はけろっとしてるけど、気を遣うよ周囲としては。
あの時菖蒲やにいなちゃんが、そうしてくれたように。
もうあれから、一年以上になる。一年の秋、合同合宿の夜。私の恋は、本当に終わってしまった。
どんなに押しても揺らしても、大喜の心は動かせない。どうしようとどうなろうと、私を好きになってはくれない。そんなのは分かっていたけれど、でも私は何処かで期待していたのだ。いつかは上手くいく、努力は実を結ぶと。それが只のワガママで、なんの意味もないのだと気づきもせず。
あのあとひたすら泣いて、落ち込んで、荒れて拗ねて暴れて――。酷かったなぁ、私と来たら。……まあ菖蒲も悪いっちゃ悪いよね、余計なことしてくれたお陰であんなフラれ方したんだし。
私は立ち直るまで暫くかかったし、恋人と別れた事も無い。だから別れて即ああいう顔を出来るのが、演技なのかどうか分からない。
菖蒲は慣れているからリカバリーが速いのか、どうなんだろうな。
しかしそうなると、――匡くんはどうするんだろうか。
気持ちを残したままでいる辛さは知っている、でも私はその先を知らない。もし大喜が先輩を諦めていたら、なんてのは……考えなかったとは言わないけど自分からそうなるよう仕向けた記憶はない。それに匡くんも相手が別れたならもしかして、なんて思えるタイプではないと思うし。
ここからはもう、私では関与できない状況だ。無責任だけど、まあ菖蒲だって無責任に背中押したんだからおあいこおあいこ。
なんて余計なことを考えているのが伝わったのか、不意に話の流れが動いてそして。
「――雛なつかれてるよね、卓球部から見てるけど」
突然来た流れ弾を、なつかれてないよ受け流す私。同じ部屋にいる以上恋バナの対象にはされると思ってたけど、そっちか。まあ私と大喜の件は黙ってて貰ってるから、そうそういじられはしない。大喜と先輩の仲は傍から見ても強固だし、割り込む隙はないしね。
話に出たのは晴人のこと、なんだか人気はあるっぽいな。バカで不躾でバカなのに、まあイケメンではないかもしれないな。
でもまさか私みたいにワンパクでたくましい子相手に、あれが靡くとは思えない。大喜に勝ちたいみたいだし、近くにいて話しかけやすい先輩ってだけだろうな。
そう言えば頼まれた御守りも一応買ったけど、効果出るかな。私としては晴人と大喜、どっちが勝っても、……いや……? 思えば晴人がどうなろうと、前の私ならば気にもしないし「買ってくる義理なんか無い」と突っぱねてただろう。そうしなかったのは、それはまさか、えー……と。
白熱する恋バナをなんとなく聞きながら、口のなかだけで小さく溜め息を一つ吐く。
もしかして、もしかして――もしかするんだろうか、私は。それは……でも疲れるなぁ、面倒だなぁとか思ってしまう辺りつくづく色気がない話だな、私と来たら。