アオのハコSideB #101~   作:扇町グロシア

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アオのハコ#210 「すべて詰まってる」SideB 終わりじゃない、終わりたくない

 明日も普通に学校へ来てしまいそうな、そんないつも通りの空気が流れる教室。部活を引退して以来、放課後にここで駄弁る時間が増えていた。早く帰るのがなんだか億劫で、意味もなく。

 自由登校期間になってもそれは同じ。せっかく暇になったんだから家にいても良いんだけど、それはそれでやっぱり抵抗がある。日々のルーティーンとして朝は学校に行くものだ、物心ついて以来続けた習慣はそうそう変わらない。

 ここにいれば皆いるし、退屈もしない。気の合う連中となんとなく過ごすこの時間は、なかなかに心地好かった。

 だけどそれも、今日限り。終業式も既に終わってるし卒業式も今しがた終え、学校での予定は全て消化した。

 受けとる物も残す物も、もう何一つ有りはしない。

 ああ、終わってしまったんだな。私が栄明で過ごした、六年間が。

 

 バスケが好きだから、スポーツが強い栄明に進んだだけ。まあ勉強したくないなーってのもあったけどさ、うん。ここ偏差値低いし高校受験せず持ち上がりだし、楽そうだなと思ったのも有る。

 本物の天才だった夢佳、天性の求道家千夏。あいつらの二歩三歩後をどうにか付いていく、女子バスケ部のモブAという日々はまあ――色々と思う部分はあったな。私は所詮引き立て役、天才どもを支えてナンボの下積み担当。アホらし屋の鐘が鳴るわ、となった事もあるさ。それでも辞めると言う選択が無かったのは、そんな立場もまた楽しめていたからだ。

 なんだかんだ言ったって、あいつらは大事な友達。追い付けなかろうがなんだろうが、一緒にいたい。

 でも、まさか。その一人が、欠けるとは思わなかった。

 突然夢佳がいなくなり、相方を失った千夏もまた精彩を欠くようになって。段々と不協和音を奏だしたバスケ部を、なんとしてでも繋ぎ止めにゃならなくなって。まあ頑張りましたよ、私はさ。

 分を越えて尽力し、どうにかこうにか部を維持して約一年。やっと落ち着いてきたのに今度は千夏までいなくなるらしいとか聞いたときは、生きた心地がしなかった。

 結果的にはどうにかなって、残ってくれたけど――まさか男子のいる家に居候するなんてね。サプライズしか出てこないのかね、あの子からは。

 とは言え、だ。その同居人くんこと猪股大喜くんのお陰もあって千夏さんは往時の輝きを取り戻し、そして小耳に挟んだ話だと彼は夢佳と千夏さんの関係修復にも一役買ったんだとか。肖りたいやら金借りたいやら、ってね。いやまあ夢佳が彩昌でバスケに復帰したのもそのせいらしいんだけどね、そうなると素直に喜んで良いか悩むけど。

 

 クラスメイトが三々五々散っていく、その中に千夏の姿は無い。どうせ体育館だろうな、嬉しそうに駆けてったから。彼氏と待ち合わせとは羨ましい限りだ。青春しやがってまあ、柄にもなく。

 ……しかしまあ、気が付けば千夏も夢佳も彼氏持ちか。私は手がかかる天才どものお陰で必死に走り続けてたから、そんな暇も無かったのにさ。

 身近にはロクなのいないし、焦って作っても仕方ないんだけど。一度しかない花の女子高生生活、色気もなく過ごしたもんだ。

 まあ良いんだけどね。今さら。夢を叶えきったとは言わないし悔いも未練もあるけれど、栄明での日々はこれで御仕舞い。これにて語り仕舞い済み済まし、ありがとうよってね。

 さてと春になったら県外で新しい生活だ、どうなるんだろうなぁ本当に。

 多分これからも、ああいう連中の世話ばかり焼いていく気がする。性分かねぇ。

 

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