大喜の不調は多分まあ、千夏先輩との事が原因なんだろう。あの二人の話だから深刻になんかなるわけない、バカが無い頭使ってバカな考えに到ったせいで拗らせただけ。
言ってしまえば、いつもの事だ。私がどうこう言う事じゃない、というか別にどうでも良い。
朝練の時間に遅れるのも部内で勝てないのも、それは言ってしまえば私の範疇外。
私は前のように、友達として大喜に接するだけなのだから。それが良い、それで良い。
楽しい毎日は続いていく。これからもずっと、きっと。
大喜を好きな気持ちを自覚して、衝動を抑えきれないまま告白して。……いやあ、楽しかったけど大変だったなあの頃は。気付かないふりを続けていた時期が長かったし、どうして良いかも分からないし。大喜は千夏先輩が好きで、その間に割り込めるほど私は強くも図太くもなくて。
いや無理かな、私じゃあ。
なんにせよ上手くいかないまま、あの秋合宿で最後通帳を突き付けられて諦めた……筈だったんだけどなあ。
大喜は優しいし、良いやつ過ぎる。縁を切るなんて出来ないし、隣にいれば――好きになってしまう。修学旅行で見せたあの不躾な優しさは、言い方悪いけど不意討ちにも程がある。彼女持ちのくせして他所の女に親切にするなよ、この人たらしめ。また好きになるぞ、なんてね。それこそ焼け木杭に火がついたというか、消えきってない所にガソリンぶちまけたというか、そんな風に私の気持ちは再び燃え上がってしまった。
でももう、告白はしない。好きだと言う気持ちは表向き友愛に留めて、大喜と親しい距離を保つのが最優先。
好きな人がいる生活を、また一から味わいたい。でも辛いのはもう願い下げ、大喜とは付き合うとか付き合わないとかの話は二度としない。
もし先輩と大喜が険悪になったりしたら、私は親友として二人の関係を取り持つ。
何にも縛られず、バカな話で盛り上がれる間柄は大切だから。
それを大喜がどう思うかは考えない、考えたくもない。我ながら自分勝手な話だけど、面倒は御免だ。修羅場は数をこなすと楽しみに変わる、って前にどこぞの女社長さんが言ってたけど、私にはそういうの合わない。修羅場で遅れを取る気はないけど、それはそれとしてめんどくさい。
しかしまあ、晴人に負けてるとはなあ。一年の差は大きい筈なのに、本当に大丈夫かあれは。朝遅れたのもそうだし昼は学食にいたし、おばさんに何かあったのかも。こっちから首を突っ込むべきじゃないけど、気にはなるな。後で匡くんにでも聞いてみよう、それでダメなら仕方ない。
そういうケアは、それこそ
私は大喜に、そばにいてほしいだけ。特別な相手になんか、なれなくても良い。無責任に適当に、この心地良い距離を味わうだけだ。
人が聞いたら眉をしかめるかもしれない、だけどもう傷付きたくはない。
……まあ晴人が苦労するとかなんとか言ってきたのは、私のこういう所が気に触ったのだろう。諦めたけど未練がある、なんて不合理で不自然な話だもの。
でもまあ、それはもう気にしない。躾の悪い後輩がどう思おうと、知ったことか。
私はそれで良い、それが良い。