アオのハコSideB #101~   作:扇町グロシア

12 / 141
アオのハコ#111「ご褒美」 SideB 人の世話を焼く場合かな

「そう言えば、今日だっけか」

 うとうとしたまま見上げたカレンダーの日付に、小さく思い出すのは親友と交わした話。最近出来た彼氏の誕生日が、確か本日1月15日だと聞いた記憶がある。良い子の日、なんて出来すぎな気もするけどね。

 長い付き合いではあるけどちーは結構めんどくさい子だ、それに合わせていられるんだから相当に良い子なんだろう。健吾からも部活の後輩として色々と聞いてるけど、中々にがんばり屋で期待しているとか。……「死んでも本人の前では誉めないけどな」って付け加える辺り、あれは素直じゃないんだよね。もうちょっと優しくすれば良いのに、ってまあそれは難しいか。健吾にとっては、自分を追い越そうとするライバルなんだから。

 猪股大喜くん、親友の彼氏にして恋人の後輩。友達と呼ぶには距離が遠いけど、赤の他人とも言い難い。

 果たして彼は今、どんな誕生日を過ごしているのやら。

 

 気にはなるけど好きと言う程ではないかも、なんて言っていたのが9月の末辺り。久し振りに泊まりに来たちーは、頬を染めながら打ち明けてくれた。

 気持ちに名前を付けるのを躊躇っている風に見えたのは、きっと気のせいではなかったんだろう。あの子は自分が不器用だと知っているから、ここで誰かを好きになってしまったら、心がそれ一色になってしまうかもしれないと警戒していた。

 分かるよ、私もそうだったから。

 理想と現実はいつだって噛み合わない。夢を追い続けるので精一杯の状態で誰かを気にするのは、――好きになるのは正直怖かった。

 健吾はいつも私を支えてくれる、でもあっちだって叶えたい事がある。私は健吾に寄りかかって良いのか、かなり悩んだのを覚えている。

 そこを乗り越えて今があるんだし、ちーにもそうあってほしいとは思う。思うけど、押し付けたくはない。そんな都合の良い事を考えつつも何かアドバイスくらいはしようとしていたのに、いつも騒々しい我が愚妹が乱入してくれたお陰で場がお流れになってしまったのは残念だったな。

 あぁ思い出した、あのあと適当についた嘘をあの子が本気にして、あれから暫く大騒ぎしてたっけ。バスケが上手くて背も高くて今は海外にいる年上ワイルド系イケメン、なんて栄明にいるとは思わなかった。いや何でいるのよ、そんな都合の良い人材が。あの学校どうなってんの。

 しかしあれからもう3ヶ月くらいかな、今やあの二人は交際中。それだけならまだしも、同じ家に住んでいると来たもんだ。ちーは「大切にしたい」って言ってたし大喜くんも大喜くんで純な子っぽいし、まあ……変なことにはなってない……だろうけど……うん。ちー自身は触れたくて仕方がないみたいだから、色々と危ういかも。

 さてどうなるのかな、どうなるのかな。

 

 星の瞬く冬の夜空を窓越しに仰ぎ、手に取りかけたスマホをソファに放り出して私は大きく伸びをした。今頃何をしているのかは分からないけど、不粋な事になっても困るから連絡はしないでおく。ちーはどうも危なっかしいから、距離を置いて見守るくらいはしたいんだけど我慢だ。

 さすがに預け入れ先の家族がいる家で不埒な真似はしないと信じよう、ちーだって多少は理性を働かせる筈だ。そうであって欲しい。

 それに、ちーは最後の夏を控えた身だ。家族と離れてでも追い求めたバスケの道を、あの子が易々と捨てる訳がない。一度決めたら曲がらない、どんなに傷付こうとも歩みを止めないのがちーだ。恋愛の事ばかり考えたりはしない、出来ない。そこまで器用なら、もっと折り合いを付けて面白おかしく生きられているさ。そして大喜くんも、ちーと同じく不器用で真っ直ぐな人間。そんな二人が一緒にいれば、プラスは倍でマイナスは半分になってくれる気がする。

 ……そこまで都合よく行くかなー……行ってくれるといいなあ……。

 まあ、私が悩んだって仕方がない事ではあるんだけどね。

「っと、あぁそうだそうだ」

 一度放ったスマホを取り直し、タップするのは彼氏の連絡先。時間はちょっと遅いけど、おしゃべりするくらいなら構うまい。

 私たちは私たちで、まだまだ手探りで模索中。他所を心配する前に、自分の事をちゃんとしないと。

 さて、何を話そうかな。言いたいことも聞きたいことも、いっぱいある。それ以外にも、何でもない話をノンビリとしたい気分。

 好きって難しくて大変だけど、楽しくて何よりも――愛しい。ちーにも目一杯それを味わってもらいたいな、親友としてはさ。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。