私は間違ってない、間違えている訳がない。私はいつだって正しいし、そうでないとおかしい。
だって私は、蝶野雛だから。
一度の挫折で諦めるなんて私らしくなかった、大喜が振り向くまで攻め続けるべきなんだ。私がする事が報われないなんて、それこそおかしい。
勝って勝って、勝ち続ける。負け方を知らない私が、倒れてたまるか。
大喜の頬の感触を唇に思い返しながら、私はベッドの上で寝返りを打つ。
また一歩、前進だ。一回『付き合えない』と言われたし千夏先輩と付き合いだしたと聞いてから何ヵ月も経つ、それでも私は負けきってはいない。
負けない限りは立ち上がる、立ち上がれるなら挑んでいける。挑む気概が残っていれば、まだ負けていない。立て不死身の身体、不屈の闘志。
蝶野雛は、負けたりしない。
大喜が目に見えて弱っている、それはよく分かっていた。晴人や匡くんたちに勝てなくなってきて、お母さんが入院して。――千夏先輩も、いなくて。一人で堪えるしかない大喜を、誰が支えてあげられるか。
そんなの、私しかいないじゃないか。親友というカードを切れる私になら、大喜も弱さを見せてくれるかもしれない。
もしかしたら。そうしたら、もしかして。今までよりもずっと強く、大喜の心を揺さぶれる筈だ。
汚い卑怯は負けた側の屁理屈、勝てばそれで良い。弱りきった所へ一気に攻め込んで、大喜の中に私を刻み込もう。
そう思っていたんだけど、な。せっかくのファーストキス、あんな顔はしてほしくなかった。あれじゃまるで
まあ、今は良いか。これは私と大喜の、二人だけの秘密だ。千夏先輩にアドバンテージを取りうる、現時点での切り札。あの二人がキスを済ませたとは思えない、私が先を越したんだ。多分、きっと。
しかしなあ、しかし……ちょっと惜しかったかな。あそこで転進してなかったら、もっと先まで――って。
「いや、いやいや。いやいやいやいや、それはちょっと待て私」
傷心に突け込んで一気に攻め落とす、はともかくキスより先はまだまだ早すぎる。私の体調にも関わるし。
でもやろうと思えばあの後、大喜の家に押し掛ける事も出来たんだよね。お父さんとお祖父さんがいるとは言え、まさか強く咎められもしないだろうし。
そうやって少しずつこっちへと気持ちを向けさせていけば、いずれは私が押しきれる。去るものは日々に疎し、距離が空いた以上その空白を利用するのは上作。私に間違いはない、どうなっても私の行動は正解になる。世の中はそうなってる。
大喜は今ごろ、寝てか覚めてか。思い出してか、忘れてか。欲を言えば、私の事で悶々としててほしい。
千夏先輩の事より、私の事を考えてくれたらそれで良い。あの人を嫌いではないしいい人だとは思うけど、恋敵な以上は手加減しないから。
大喜の隣に一番似合うのは私、大喜の一番の味方も私。そこは譲らないし譲れない。
にいなちゃんも菖蒲も匡くんも、私の側にいてくれている。なら負けようがない、勝つ以外の選択肢が何処に有るか。――有るわけがない。
私はお姉ちゃんみたいにはならない、逃げるのも諦めるのも性にあわない。
蝶野雛は、蝶野雛だ。折れず曲がらず、腐らず止まらず。輝いて輝いて、なにもかも掴み取る。
さぁて、お立ち会い。出があるよ。