友達のままでいられたら、まだ良かったのに。
あの頃は大喜と匡くんと私、三人でいたら怖いものなんか無かった。真っ先に駆けていく私の背中に大喜が続き、匡くんは後ろでささえてくれる。そんな関係のままで、いたかった。
でも私はもう、気が付いていた。大喜と匡くんに向ける気持ちが、微妙にずれ始めていた事に。
二人は大事な友達だった、だけど大喜への想いはそこでは留まってくれない。
好きだから、好きだからこそ。中途半端な所にいられない、何もかも伝えきりたい。でも関係を崩したくない、とグダグダと引き伸ばした挙げ句。千夏先輩に大喜をかっさらわれ、私は正面からフラれたのだ。悪手も悪手、酷いものだ。
そこから一度は友達に戻れた……筈だったのに、な。
千夏先輩が猪股家を離れて、大喜は少し調子を崩していた。
晴人が追い上げてくるし匡くんや他の部員たちとの差も付かなくなって、しかもお母さんが入院して。
公私共に疲れきった大喜を励ましたい、というのは本音の一つ。そこに突け込もう、なんてのも有ったけれど。
二人きりだと警戒させるからにいなちゃんたちも誘って、でも途中で抜け出して――キスをした。唇ではなかったけど、ほっぺただったけど。
千夏先輩に出来ないことを私がしてあげれば、大喜の気持ちを動かせるかもしれない。いずれ二人の関係に割って入る事もできるだろう、そう思ったのにな。
あんな顔するなんて、想像もしなかった。
さすがにあれを見ちゃうと、試合の応援とかは気まずいなー……。まあ行く気はそもそも無いんだけどさ、晴人にあれこれ言われるのも嫌だし。あれも面倒なんだよなぁ、余計なことばかりしてくるし。大喜は後輩をちゃんと躾ておけ、本当に。
それに私が公式戦に行くとなると、良くないことを思い出してしまいそう。一年の夏、あんなにも気落ちした大喜を初めて見たから。
いつも元気で猪突猛進の大喜が、ああなるなんて。それに文化祭前の練習試合でも、鬼気迫る顔だった。あんな大喜、知らなかった。
いつのまにか皆、変わっていっているんだろうか。もしかしたら大喜はもう、私の後ろになんかいないのかもしれない。匡くんも私たちを支えたりしない、とか。それは――……なんか嫌かな。ずっとずっと、あの頃のままでいてほしい。
ふと見た窓の向こうは、すっかり陽も高い。そろそろ大喜はコートの上かな、夕方くらいにメッセしておくか。顔を見たら色々思うだろうけど、それくらいならいいだろう。
千夏先輩は、ちゃんと応援に行ってるんだろうな。付き合ってるんだし、当然か。ああ、羨ましい。
どうして私じゃなくて、千夏先輩が選ばれたんだろう。先に大喜を好きになったのは私だし、距離だって近かった。どうやったって、私だろうに。
そりゃまあ、悪い人ではないけどさ。
……私だって、ずっと親友で居続けたいよ。でも、もう無理なんだ。
私の髪が赤い限り、私の心は変わらない。
私の命が続く限り、私は誰にも譲らない。
誰であろうとなんであろうと、負けない。