分かっていた筈なのに、どうしてこうも迂闊なのか。
窓の外から差す冬の陽は弱々しく、なのに肌へと刺さってくる。
これはきっと、罰なのだ。
ああそうだ、あっちは何も悪くない。全ては俺のせいだ。雛の穏やかな優しさに、気が付けば甘えていたんだ。
日にち薬というように自然に何もかも治って、また元通りになれる。少しの間冷却期間を置けばきっと、――
有り得るわけがない、一度起きた事はもう覆らない。それを承知して雛はあの日、俺に想いを伝えてくれたんだから。
もう半年近く前、夏の
誰かに好きだと言われたのは生まれて初めてで、それに考えれば雛は俺より遥かに格上のスター。嬉しい気持ちは勿論あって、でもそれ以上に大きかったのは、こんな事をしていて良いのかという罪悪感。
雛は知っている、俺が千夏先輩を好きだという事を。それでも構わない、と言うのはきっと本心なんかじゃない。
もし千夏先輩の隣に、他の誰かがいたとして。その人を好きなまま千夏先輩が俺の告白を受けて、「二番目に好きな人」にしてくれたなら。……多分俺は絶望で押し潰される。好きな人の一番になりたい、自分だけを好きになって欲しい。それはもう本能のようなもので、普通なら理性でどうにかなるものじゃない。それを抑え込んでまで俺を好きでいてくれる雛に、これ以上負担をかけて良いのか。良いわけがない、そんなの当たり前だ。
でも今拒絶すればもう、二度と元の関係には戻れない。親友どころか赤の他人より遠い存在になる、それが怖くて向かい合えずにいた。
守屋マネに唆されて二人きりになってようやく覚悟を決めた、その筈だったじゃないか。だからこそ雛とは付き合えないと言った、それなのに俺はまだこの通りなのか。
あの後守屋マネになじられ島崎さんにも文句を言われ、罪悪感にかられながらも「この不毛な関係を続けるよりは良い」と受け止めたのに。ほんのわずかな間に俺は、もう忘れてしまったのか。
千夏先輩を好きなのに揺れてしまいそうな自分を恥じたのは、一過性のものだったのか。
どうして俺は、こんなにも愚かなんだろう。
秋合宿以降気まずさから雛を避けるようになって、雛もまた俺を見ようとはしなかった。
そうやってマトモに顔を合わせる事も無いまま秋は過ぎ、冬の風が吹く頃になって漸く、形だけは以前のように振る舞えるようになっていた。千夏先輩がいない所でなら喋る事も増えてきて、クリスマス時期には遊びにも誘われたな。皆との初詣にも来てくれた、まるで――何事もなかったかのように。
だから俺は何処かで思ってしまっていたんだろう、島崎さんが言うように雛の中で俺は大した影響にもなっていなかったと。このまま
――そんなわけが無いだろう、何処まで雛に甘える気だ。恋愛感情は無くなったから友達に戻ろう、なんて雛が望むわけがない。そこまで器用な奴じゃないのはよく知っている、でも俺を傷付けないよう気を遣おうとする。中学からの長い付き合いだ、そういう優しい所もよく分かっている。
これ以上雛を苦しめるな、自分が傷つくことを恐れて日和るな。
言わなければならない、千夏先輩に告白した事も付き合いだした事も、ちゃんと全て。
バカな俺にも、通すべき筋がある。その後で何が起ころうとも、俺は受け入れなければならない。
向かい合い視線を交差させ、俺はゆっくりと口を開いた。これがきっと最後になる、と感じながら。