久しぶりの制服姿で、遊園地の片隅にて。まるであの時のように、笠原くんは私に言う。
あの水族館へのお出掛けをデートだと思ったのか、大喜くんを異性として意識したかどうか。
笠原くんの言いたいことはそこじゃなく、もっと深い部分にあるのだろう。
それは分かっているけれど、敢えてそこは受け流す。
そりゃ私だって、木の股から産まれた訳じゃない。思うところもある、でも――
「それは大喜くんにしか、教えない」
私の気持ちを知って良いのは、大喜くんだけ。
他のだれにも、見せはしない。
水族館へ出掛ける前の夜、どれくらい悩んだか。ただ男子と出掛けるからじゃない、相手が大喜くんだから。
私が日本に残る勇気をくれた、戦い続ける理由をくれた。真っ直ぐに前を向いて歩んでいく大喜くんに、私は既に惹かれていた。
その気持ちはあれど、厄介だったのが蝶野さんの存在だ。申し訳ないけどあの子は正直苦手、色々と愛称が悪すぎる。そんな蝶野さんがいつも大喜くんの側にいて、大喜くんも大喜くんで憎からず思っていて。
大喜くんがもし蝶野さんを好きだとしたら、この想いは有ってはならないもの。でも心に蓋をかけられる程、私は器用でもない。
どうしようもないくらいに悩んで悩んで、取り繕う時間がほしくて早めに猪股家を出立して。
大喜くんを待つ間も気が気じゃ無かったけど、まあ目の前で小銭ブチまけてあわあわされちゃったらね。もう悩んでるより可愛さが勝つよね、悩み続けたのが馬鹿馬鹿しくなったよ、うん。
そして水族館を満喫し、無神経な事を言ったのも謝って無事に終わった……んだけど。それからも波乱だらけの日々が続いたのだ、本当に。
だけどその中で、私は少しずつ理解していった。自分の中にある、この気持ちの正体を。
同じ感情が大喜くんの中にもあるのだと気がついてからは、もう止まらなかった。
でももし、私がそうなれなかったら。理由をつけて自分を守ってしまっていたら。きっと私は、砂を噛むような後悔の日々を過ごしていただろう。
今こうしていられる平和な日々は、数えきれない程の奇跡が折り重なって出来ている。これからもそれを積み重ねて行こう、一歩ずつ二人で。
今の私にとって大喜くんは、背骨であり心臓だ。大喜くんのお陰でどれほど救われたか、数えきれはしない。
有り難い話だ、お世話かけてます。
派手なアトラクションは苦手だった菖蒲ちゃん、そして大喜くんと合流して私たちは再び歩き出す。
私たちが四人でこうして過ごすのは、もしかしたらこれが最後かもしれない。こんな機会もそうないわけだし、私としては背中を押してあげるべきなのだろう。
菖蒲ちゃんの真意はなかなか見えないし察する事も難しいけど、笠原くんへの好意はあると思う。……多分。笠原くんも笠原くんで、意識しているわけで。
ここで力になれれば、あの日のお返しにもなるだろう。
さて、どうするものか。とりあえず二人にしてあげようか、まあ私が大喜くんと二人になりたいのもあるけれど。