別れ話のジンクス、か。皆そういうの好きだな、私は嫌いだけど。冗談じゃないってんだ、縁起でもない。
行列から漏れ聞こえた話はでも、それほど興味をそそられる事もなく耳を通りすぎていった。ゴーカートも悪くはないけど、なんかオモチャ感が強くて今は乗る気にならない。
他にも聞き覚えのある声がした気もするけれど、そっちは多分気のせいだろう。いや気のせいであってくれ、こんな所でナツに逢いたくない。……今はきまずいんだよ、本当にさ。
宗介が一緒なのはまだしも、こんな――女子女子した格好なんだから。正直こういうのを見られる方が恥ずかしい、まったく宗介と来たら余計な事ばかり考えるんだから。
まあ別に構わないけどさ、せっかくの……デートなんだし。
「え? 夢佳と宗介くんってホントに付き合ってんの? そうは見えないけど」
なんだと、とまだ付き合いも短いキャンパスメイト?に軽くチョップ一閃。一応高校からの仲なんだけど、というか結構一緒にいるんだけどなんでそう思うんだか。
そう、本人同士は隠す気もないし公然の話だと認識している。それなのに、なんだか色気無さそうに見えているらしい。そりゃこんなワンパクで逞しい子ではあるけれど、世の中蓼を食う虫だっているんだぞ。
一体どういう事なんだろう、とりあえず聞いてみて私はその答えに固まってしまう。
「夢佳、あんたイケメン過ぎるからね。皆ノンケだと思ってないし、なんならBLカップル扱いでネタにされてる」
う。うー……それは、それは。
一時期の私がイケメンと言うか王子さまキャラだったのは事実だ、本気で告ってきたバカもいた。しかし私別にレズじゃないし、重い感情を向けられるのは苦手だったから常にゴメンしてきた。それはまだ良いけど、ガチ男扱いはちょっと心外だ。そりゃ長いこと制服以外でスカート履かなかったし、母さんにも『あんた女装似合わないわよ』とか言われてきたけどさ、けどさぁ。
あと宗介をそっちにするな、あれもノンケの筈だし色々と……まあ色々そういう面もあるわけだし。ニーソ履いてくれとかツインテにしてくれとか、バカばっか言うからなあれは……。私のタッパと目力で、ツインテなんて出来るかよ。
「宗介くんは絶対右側に置きたいね、私としては」
「はったおすぞコラ」
人の彼氏を増えない掛け算に組み込むな、ナマモノだぞ少しは遠慮しろ。
……まあそりゃ宗介は分類すると受けではあるだろうけど。
まあ、そんなどうでも良い雑談を経て。多少は女の子っぽくしてやろうかなと行状を改め始めた所、宗介が予想外に食いついてきて。その結果、こんなヒラヒラした落ち着かない格好で遊園地なんぞにいるわけだ。
なにやってんのかな、私は。
休日の陽はまだ高く、賑わいは盛ん。私がこんな所にいるというのは、なんだか不思議だ。こんな雑把でガラッパチな女が彼氏連れで、なんて。
一年間に休日はどれくらいあっただろう、その中のどれくらいをこうして一緒に過ごせるのか。
父さんと母さんがそうだったように冷めて消えるかもしれない、でもそうならずもっと長く寄り添って生きるかもしれない。
なんにせよ、考えてどうなる事でもないか。
「宗介ー、お腹すいた。なんか奢れ」
とりあえず今は、この時間を楽しもう。人生為るようにしか為らないものだ、為らないように為ったとか聞いたことないし。