ああ、格好悪いな。どうしようもなく胸が高鳴るのが、腹が立つ程止まらない。
傷心に付け込むような事はしたくないのに、気持ちは静まらないまま顔が火照っていく。
表情に出ていないと良いけど、自信はない。もしかしたら筒抜けだったりするんだろうか、それはさすがに気恥ずかしい。
弟妹を連れて来る時と同じように振る舞おう、それで一日を恙無く終えれば良い。
――今日は一緒に遊びに来れた、それだけで良いはずだ。多くを望むなんて俺らしくない、いつもの俺じゃない。
そう思いながら、俺は逆の事も考えてしまう。いつものままでいたら、また繰り返すだけだと。今度こそは、そうなりたくない筈なのに。大喜と千夏先輩を二人にしたのは、それを考えたからじゃないか。
何も言えないまま諦めてしまうのは、もう嫌だ。そうだろう、俺。
ずっと咲季を好きだった、それは確かな事。でも俺はなにもしなかった、なにも出来なかった。咲季が幸せならそれで良い、としか思えなかった。いやそれは正しくない、ただそう考えて傷を浅くしただけ。彼氏が出来たと聞いて、複雑な感情のなかで少しだけ安堵したのを覚えている。
これでもう、こんな気持ちを引きずる必要が無くなるのだと。咲季は変わらず俺の姉で、頼っても許される存在でいてくれれば良いのだと。
守屋さんに対しても、少し前までは同じだった。好意を抱き出して尚、必死で取り繕っていた。変な勘違いしなくて良かった、なんて自分を守るばかりで。
その癖二人が別れたと知って、高砂の気持ちも考えず喜んだりして――まったく格好悪い。
そんな俺が一世一代の男気で誘った今日を、無駄にするわけにはいかない。何処かで想いを伝えたい、そう思ってはいる……んだけど。
どうも妹たちを相手にするみたく、面倒を見る方を優先してしまうのも俺の悪い癖だ。いやそうしないと気になって気になって仕方ない、というのも事実だけどさ。
大喜は凄いな、やっぱり。好きになって、その気持ちを決して偽らず。なにがあっても、貫いた。だから今、二人は付き合えているんだ。
俺にも出来るだろうか、そんな事が。
あちこちを巡りながら、時間は過ぎていく。
もう陽は傾き、少ししたらライトアップが始まるだろう。その時間には大喜たちと合流して、この楽しい時間も終わってしまう。
元々あの二人を焚き付けるのが口実だったんだ、このまま現地解散とはいかない。
次にいつ来られるだろう、いやそんな機会は無いかもしれない。守屋さんは誰にも好かれる人だ、誘える状況に無い可能性も高い。
やり残しを抱えて、これからも生きていくのか。まだその機じゃない、とごまかし続けるのか。
それはまあ、仕方ないのかもしれない。
「……ッ」
そうじゃないだろ、俺。
勇気を出すべきは、今なんだ。人間恥じゃ死なない、いやそれで死ぬならいっそ死んでしまえ。悔いも未練も、迷いも弱さも火にくべよう。一切合財擲って、やってやろうじゃないか。
頭の奥で生まれた衝動は脊髄を降り喉を抜け、舌の上へと舞い降りる。
〽たった一言言わせておくれ、後でぶつとも殺すとも――だ。