まったく、大喜くんと来たら。心臓に悪いなぁ、実際。
俺はあの時から先輩の事好きでした、なんてとんでもない事をあっさりと言ってしまうんだから、困ったもんだ。
「私も好意はあったよ」
反撃として撃ち込んだ言葉は、しかしてちゃんと着弾したようだ。
大喜くんの大仰な驚き方にニヤけそうになるのを堪え、ラジオ体操は続いていく。二年前と同じ曲なのに全然違って聞こえるのは、お互い顔が火照りあっているからだろうな。
私はあの時、大喜くんを――好きではあった。誇らしい片想いとして、胸にしまっておくつもりだったけど。
大喜くんには蝶野さんがいる、私はバスケで結果を出さなければならない。色恋沙汰なんて、私には無縁なはずだったのだ。
少なくとも、あの頃の私には。
インターハイ進出が決まって忙しくなり、大喜くんと話す暇も無くなっていって。
不用意に近付きすぎた事を気にしすぎる余り、これ以上距離が縮まるのは良くないと勝手に線を引いていた。
……私はどうも、余計なことばかりちゃんとやり遂げすぎる。そうこうしている間に蝶野さんが私を追い越していった、あれは少し凹んだな。
盗み聞きみたいな形で知ったときは聞き違いかとも思ったけど、面と向かって鞘当てに来たからなぁ……。私が告白したんだから手を出さないで、と。
二人が付き合いだしたのなら私は身を引くべきだろう、なのに未練がましく大喜くんを頼っている私がいた。
そんな自分が嫌になるけど、気持ちは止められないし大喜くんは不躾に優しすぎる。夢佳とまた友達に戻れたのも大喜くんのお陰、そもそも日本に残れたこと自体が大喜くんのお陰だ。
そんな大喜くんを、どうして遠ざけられようか。
どうして良いか分からないまま時間だけが過ぎて、ウインターカップが終わり猪股家での時間も残りわずかとなって漸く。漸くにもほどがあるくらいのギリギリで、私は自分の気持ちと向き合う覚悟を決めたのだった。
……しかしまあ、まさかあんな前から大喜くんが私を好きだったなんて。両片想い、というやつだったんだな。
こんなワンパクでたくましい子を好きになる人がいるとは思わなかったけどなぁ、まさかそんなことになっていたとは。
そう分かっていれば、もっとやり方もあったかもしれない。もうちょっと物を考える癖を付けないといけないな、うん。
とは言え〽たった一言言わせておくれ 後でぶつとも殺すとも、なんて気持ちのまま迎えたあの時間は、幸福以外の何物でも無かったのだけど。
不安は山ほどあって、問題も山積している。現実逃避といわれても仕方ない、あれもこれもメチャクチャ話ではある。
しかしまあ、どうだろう。今や私たちは無理を通して道理を蹴飛ばし、新しい日々を歩んでいる。
これから何が起ころうとも、私たちは私たちでいられそうだ。
たった二文字の言葉じゃ足りなくて、今は言わずに黙って寄り添うけど。鮮やかに大好きと心は叫んでる。
まずは大喜くんの高校バド最後の夏を、私はそばで見守ろう。これからもずっと、こうしていたいから。