繰り広げられる熱戦に、少しだけ迷ってしまう。私はどっちを応援したものだろうか、今になって尚悩んでしまうから。
大喜先輩――猪股先輩も晴人くんも、負けられない理由がある。勝ちたい理由がある。それをぶつけあうのが試合だ、決着は遠くない。
私は一体、どうしたら良いんだろう。
いやまあ、私が応援しようがしまいが結果がそれで動きはしないけど、さ。うん、それは分かってる分かってる。
笠原先輩には晴人くんが頑張ってると言った、それはそれで確かなんだけど……私は猪股先輩の頑張りも見てきた。
だからどっちに声援を送っても角が立つ気がして、声が控えめになっているのが現状。カッコ悪いなぁ私は。
正体不明の感情を歪な箱にいれなくて良い蝶野先輩から言われて、ああこれは恋じゃなかったんだなと納得したのがもう遠い昔に感じられる。
猪股先輩は好い人で、かっこよくて、そして強い人。遮二無二頑張って、必死にもがいてどんどん上へかけ上がっていく。その姿に、私は憧れたんだ。あんな風に真っ直ぐに生きられたらいいなぁって。
もし私が猪股先輩と付き合ったって、釣り合いが取れなさすぎる。千夏先輩くらい凄い人じゃないと、猪股先輩の隣には立てない。
しかしまあ出会ってもう一年と少しだけど、色々精神的にブン回されたなー……。
晴人くんとの腐れ縁は、小学生の頃からだから十年を越えている。中学が別だったからブランクはあるけど、それを引いても長いものだ。いつだってお兄さんに張り合ってて、いつだって直向き。私はお兄ちゃんに勝とうとか思ったこともないけど、男の子同士ってああなるものなんだろうか。
まさか栄明で再会するとは思わなかったし、ああも昔みたく無遠慮にイジってくるとも思わなかった。昨日まで同じ学校にいました、みたいな距離感は何処から来るんだ。
それにどういう縁か、晴人もまた蝶野先輩と繋がっている。今の晴人が頑張る理由の一つが蝶野先輩なんだ、だって晴人は――蝶野先輩の事が好きだから。
あの無愛想三白眼
私は蝶野先輩と話して、自分の恋が勘違いだと気付いた。
晴人は蝶野先輩といて、自分が恋をしていると気付いた。
不思議なものだな、人との出会いって。
試合は佳境に入り、凄まじい攻防はどんどんエスカレートしていく。私なんかが立ち入れない、もしかしたらお兄ちゃんだってあそこまでの熱戦はそうそうしてなかったかもしれない。
私が分かるのは、試合の空気くらい。始まってしまえば一対一、逃げ場はない。必死でくらいつくだけで、辛く苦しいのに、終わりが近づけばいつだって離れがたく感じてしまう。ああ、祭りが終わってしまう。
ここで晴人が勝てば猪股先輩は引退することになる。
ここで猪股先輩が勝てば晴人はお兄さんと戦えない。
どちらに転んでも、丸く収まることはない。
でも、だからこそ。どっちが勝っても、きっとそれを恨んだりはしないだろう。
あと少し、もうじき。最後の瞬間が訪れる。その時私は――誰の名を叫ぶのか。