応援してやらない、と言った手前もあって俺は後ろの席から試合を見守る。まあ売り言葉に買い言葉、てやつだけど。
しかし柊仁のやつも大喜先輩も、楽しそうな顔しやがって。県予選の決勝だぞ、いくらインハイ決まってるからって楽しみすぎだろ。
試合中の自分の顔なんて見たこと無いけど、きっとあんな顔はしてないだろう。歯を食い縛って必死でくらいついて、膓を煮えたぎらせてコートを駆け回っている筈だ。
羨ましいとは思わないし憧れもしない、俺は俺だ。――別に怒りでも良いじゃないか、原動力は。怒れるのは渦中にいるから、辛かろうがそれはそれで幸せなんじゃないか。
蝶野先輩の言葉は、俺に力をくれた。こんな俺を肯定してくれた、だからじゃないけど俺は……やっぱりあの人が好きなんだ。
インハイ出たら付き合ってくれ、とかよく言えたな俺。ああいうのは勝ちを確信してなきゃサマにならないってのに。
勢いで飛び出した言葉だ、食い気味で撃ち落とされたって別にそこまで傷付きはしない。しないけど、少しは凹んだりするさ。 ああ、そうか。俺は男子として見られてさえいないのか、と。
仕方ない話ではある、だって蝶野先輩の好きな人は大喜先輩なんだから。
大喜先輩は彼女さんがいて、それを蝶野先輩は知っている。知った上でも諦めてない、少なくとも俺にはそう見えていた。
人が人を好きになる理由なんて、俺の頭じゃ分からない。分からないけど、出来る事は一つだ。大喜先輩に勝とう、そうしたら俺を見てくれるかもしれない。
それは俺にとって、ラケットを振るう理由の一つになってくれた。お陰で俺は強くなれた……筈だ、肝心の大喜先輩には勝てなかったけど。
「……ったく、未練がましいったら」
思考を切り替えようと、かぶりを振って天井を仰ぐ俺。
ああ、そういや夏休みが近いな。
柊仁も大喜先輩もインハイ行ってしばらく留守にする、そして終わったら引退か。俺は……どうしたもんだろう。練習漬けの夏ってのも芸がないな、うーん。
それこそ、蝶野先輩でもさそってみるか――って。
結局未練タラタラじぇねぇか、切り替えられてないにも程がある。
まあ、無いだろうなそんなの。向こうだってインハイがある、……あれ新体操ってインハイあんのかな。どうだっけ、あー……まあいいや今度聞こう。
――と。
目を離した隙に、試合は激しく動いていた。
柊仁が1ゲーム取りポイントも先行してる、でも。だけど、俺は骨身に染みている。それで気持ちが折れるほど、大喜先輩は簡単じゃない。点差も何も関係ない、とにかく引き下がる事を知らない。愚直というか猪突猛進というか、勢い良くぶつかっては道を抉じ開けてしまうんだ。
それであんな楽しそうにしてるんだから、凄いものだな。
他人事みたいに思いつつ、俺は拳を握ってコートを見据えた。
ここで終わる訳がない、何かを起こす人だ。見届けよう、最後まで。
決着は、すぐそこまで迫っている。