アオのハコSideB #101~   作:扇町グロシア

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アオのハコ#243 「努力」SideB ノーサイド・ゲーム

 応援してやらない、と言った手前もあって俺は後ろの席から試合を見守る。まあ売り言葉に買い言葉、てやつだけど。

 しかし柊仁のやつも大喜先輩も、楽しそうな顔しやがって。県予選の決勝だぞ、いくらインハイ決まってるからって楽しみすぎだろ。

 試合中の自分の顔なんて見たこと無いけど、きっとあんな顔はしてないだろう。歯を食い縛って必死でくらいついて、膓を煮えたぎらせてコートを駆け回っている筈だ。

 羨ましいとは思わないし憧れもしない、俺は俺だ。――別に怒りでも良いじゃないか、原動力は。怒れるのは渦中にいるから、辛かろうがそれはそれで幸せなんじゃないか。

 蝶野先輩の言葉は、俺に力をくれた。こんな俺を肯定してくれた、だからじゃないけど俺は……やっぱりあの人が好きなんだ。

 

 インハイ出たら付き合ってくれ、とかよく言えたな俺。ああいうのは勝ちを確信してなきゃサマにならないってのに。

 勢いで飛び出した言葉だ、食い気味で撃ち落とされたって別にそこまで傷付きはしない。しないけど、少しは凹んだりするさ。  ああ、そうか。俺は男子として見られてさえいないのか、と。

 仕方ない話ではある、だって蝶野先輩の好きな人は大喜先輩なんだから。

 大喜先輩は彼女さんがいて、それを蝶野先輩は知っている。知った上でも諦めてない、少なくとも俺にはそう見えていた。

 人が人を好きになる理由なんて、俺の頭じゃ分からない。分からないけど、出来る事は一つだ。大喜先輩に勝とう、そうしたら俺を見てくれるかもしれない。

 それは俺にとって、ラケットを振るう理由の一つになってくれた。お陰で俺は強くなれた……筈だ、肝心の大喜先輩には勝てなかったけど。

「……ったく、未練がましいったら」

 思考を切り替えようと、かぶりを振って天井を仰ぐ俺。

 ああ、そういや夏休みが近いな。

 柊仁も大喜先輩もインハイ行ってしばらく留守にする、そして終わったら引退か。俺は……どうしたもんだろう。練習漬けの夏ってのも芸がないな、うーん。

 それこそ、蝶野先輩でもさそってみるか――って。

 結局未練タラタラじぇねぇか、切り替えられてないにも程がある。

 まあ、無いだろうなそんなの。向こうだってインハイがある、……あれ新体操ってインハイあんのかな。どうだっけ、あー……まあいいや今度聞こう。

 

 ――と。

 目を離した隙に、試合は激しく動いていた。

 柊仁が1ゲーム取りポイントも先行してる、でも。だけど、俺は骨身に染みている。それで気持ちが折れるほど、大喜先輩は簡単じゃない。点差も何も関係ない、とにかく引き下がる事を知らない。愚直というか猪突猛進というか、勢い良くぶつかっては道を抉じ開けてしまうんだ。

 それであんな楽しそうにしてるんだから、凄いものだな。

 他人事みたいに思いつつ、俺は拳を握ってコートを見据えた。

 ここで終わる訳がない、何かを起こす人だ。見届けよう、最後まで。

 決着は、すぐそこまで迫っている。

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