努力の量だけで結果が決まるとしたら、それは余りにも残酷だろう。時間を費やした事が絶対的な優位に繋がるなんて、勝っている側に有利すぎる。
才能にしたってそうだ、生まれ落ちた瞬間にすべてが決まるなら生きている意味は無い。
負けた側が努力を怠ったんじゃない、才能が足りなかったんじゃない。たまたまその時、歯車が噛み合わなかっただけ。そもそも物事が上手くいくなんて、百回に一回あるか無いか。
――まあ人の百倍回せば、いつだって大当たりだけどね。
その為の機会を、私は大切にしたい。もしも誰かが道を見失っているのならば、前へ進む意思を汲んであげたい。
だからこそ、だからこそ。私は「その先」へ、羽ばたくのだ。
まだ顔を知らない、何処かの誰かの未来のために。何処かの誰かの笑顔のために。
私は恵まれてきた、と思う。もし何かが一つでも欠けていれば、きっと今の私はいない。
もし夢佳や渚に逢えなかったら。もし両親が私の我が儘を許さなかったら。もし大喜くんが、大喜くんがいなかったら。
バスケも辞めて日本からも離れ、遠い場所で違う人生を生きていただろう。それが良いか悪いか、は分からない。
分からないけど、分からないなりに。私はそれを、拒絶する。
格好いいと憧れたチームメイト、背中を預けあう親友、支えてくれる家族。そして大切な人が、私を作ってくれている。
でもそれは、依存する事ではない……と思う。
大喜くんはプロを夢見て歩んでいく、私もまた夢を追って行く。お互いの行く先は自分で決めるものだ、いつも隣にいるだけが絆じゃない。
手は繋がなくても心を結んで、道は違えど気持ちを繋いで。
一年間、私は大喜くんの側から離れて過ごす。不安はあるけど、きっと大丈夫。
私たちだから、私たちだもの。
滑って転んで、倒れて起きて。嬉しい楽しい、そんな日々を過ごしてきた。笑って、悩んで、でも幸せを手にする。……多分。さてどうなるかな。まだまだ、未来なんて見えやしないかな。
死力を尽くす試合はもう佳境を迎え、大喜くんは追い込まれている。このセットを落とせば敗北は決まる、インターハイが決まっていても、それは辛い挫折になりかねない。
でも私は、知っている。
ここからだ。大喜くんは、いつだってここからだ。
敗けを認めて折れたりしない、仕方ないと諦めたりしない。いつだって、戦うことをやめない。例え勝利を獲られなくとも、食い下がって戦い続ける。
そして戦いを終えれば、新しい目標へと進んでいく。
――私も、そうありたい。大喜くんを好きでいる為に、大喜くんに好きでいてもらう為に。
祈りを込めた声は脳を滑り降り舌へと飛び乗り、勢い良く口を飛び出していく。たった一人の、愛する人へ向けて。