夏の終わりを待つ、今年もそんな時期が来たと実感する。
大会が終わって先輩方が引退した、或いは自分が見送られた。その実感が湧いてくる頃に、狙い済ましたように私は誕生日を迎えるのだ。
でも今年は、去年までと少しだけ違うことがある。誰に内緒にするでなく、大手を振って――大喜くんと一緒に過ごせるから。
去年はお互い別々の合宿で、夜の時間にちょっと合流しただけ。その前はアクシデントで一夜を過ごしたけど、由紀子さんたちには嘘を吐く事になった。……由紀子さんには隠せたのに、まさか渚にバレるとは思わなかったな。
もう隠すこともない、家族公認の仲として、私たちはあの海へと向かう。半年先にやって来る、小さな別離を抱えながら。
インターハイの結果を大喜くんにどうこう言おうとは、私は思わない。大喜くんが自分でいうならともかく、私がほじくるべきではないから。
去年怪我でチームを負けさせた私に、大喜くんはただ寄り添ってくれた。不甲斐ない私を見捨てず、でも根掘り葉掘り聞いたりせず隣にいてくれた。
私もまた、そうありたい。
晩夏の浜辺を一昨年のように歩いて、とりとめのない話だけして。あの民宿で、静かに過ごそうと思う。
しかし私が高校時代に迎えた誕生日は、どれも大喜くんが関わっているんだな。一年生の時だって、そうだった。
夢佳を失った栄明女バスを渚たちと共になんとか支え、雑誌の取材なんか受けたりもしたけれど、いつだって不安だった。私なんかが、と言い続けていた。そんな日々でも折れなかったのは、毎朝同じ時間を共有した大喜くんのお陰だ。持ち上がりとは言え中三の夏休みなんてあれこれ忙しいだろうに、毎日毎日朝練に来ていたその姿に、どれほど救われただろう。
あんなにも直向きな後輩がいて、俯いてなんかいられない。見下げ果てた先輩になんかなれるか、しゃんとしなきゃ格好がつかない。
大喜くんはずっと前から私のことが好きだったらしいけど、私だってきっとそうだったんだ。自覚がなかっただけで。
さてしかし、だ。私たちは付き合っているわけで。民法上は成人なわけで。
……ほんの少し、考えてしまうことはある。うーん、大丈夫かな私たち。ここで大きなトラブルは良くないんだけどなぁ、どうしよう。流れでお泊まりする予定にしたけど、如何なものか。
「んー……ふー……む」
まあ、大喜くんだし平気かな。大喜くんは何て言うか、大丈夫そうだ。一つ屋根の下に二年も一緒だったのに何も無かったんだから、私が攻めこまない限り何もしてこなさそう。いやそれはそれで、と言うか我慢が効くのか私。いつぞや花恋にも変態ちーとか言われたしなぁ。
なんにせよまあ、一々事前に考えなくてもいいか。動きながら考えるのが私たちだ、打つ手も上げる手も無くたってとりあえず立ち上がって走るんだ。
どうにかなるさ、なんとかするさ。次の春からの一年間だって、なるようになる。
波瀾万丈でも平々凡々でも、きっと結果は明るい。そう思って生きてきたんだから、そうなるに決まっている。