アオのハコSideB #101~   作:扇町グロシア

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アオのハコ#247 「一緒に食べよう」SideB この髪が赤いからには

 カレンダーを見やり、ふと気が付いた。もうすっかり、あの日を過ぎていた事に。

 たかだか二年前なのに、もう忘れかけている。生涯初めての告白を、あの夏の日を。

 インターハイ終わってその興奮を引きずったまま大喜に思いの丈を打ち明け、そして逃げ出した。返事を聞くのが、というかフラれるのが怖かったから。わざわざ千夏先輩が試合している時間を狙って、なにやってんだか。

 逃げ回ってトドメ刺されて、それでももしかしたら……なんて都合のいいこと考えては大喜を振り回して。

 あんなにも未練がましくもがいたりしたけれど、今やこうも気にならないのか。 

 意外と薄情だな、私ってさ。

 

 

 大喜を好きだったのは勿論嘘じゃない、でも焼け木杭に火をつけてまですがり付いたのは好意だけのせいではない。

 私は大喜を好きになって、強くなった。誰にも負けたくないと歯を食い縛り、結果をだし続けた。もし大喜への気持ちを失ってしまえば、せっかく手にした力さえ失ってしまいそうで――必死に取り繕っていただけ。

 でもまあ、そんなのはまさに杞憂だった。

 大喜に滔々とお説教され完全に諦めても、蝶野雛が蝶野雛である限りは何も変わらない。無理を通して道理を蹴飛ばし、全力で突き進む。立て不死身の身体、不屈の闘志。この赤い髪に賭けて、私は負けないのだ。

 そりゃまあ、インターハイが思い通りの結果だったとは言えない。とは言え、とは言え。私はまだまだ引退なんかしない、大学でだってその先でだって新体操を続けるつもりだ。

 勝つまでやれば、絶対負けない。赤毛の美しい女が、負けっぱなしでいるものか。

 

 

 そんな事を熟と考えながら、ふと思う。

 そういや千夏先輩の誕生日って、確か今くらいだったような。もしや二人で過ごしてたりするんかな、してるんだろうなぁ付き合ってるし。

 まあ末長く爆発してくれればいい、そうでないと友達として心配だよ。こうも私を振り回しておいて、あっさり別れたりしたら怒るぞ。

「あー……いや私が怒る義理もないか……」

 しかし誕生日、か。私のは寒い時期だし、あんまりアクティブな思い出無いんだよね。て言うか雛祭り前日生まれだから雛、って正直なんかスカってるよお父さん。当日ならまだしも。まあ姉さんよりは良いけど。麦だもんなぁ、21世紀なのに。あの人踏まれたら萎れる弱い麦だ、まさかの名前負け。

 次の誕生日でやっと18、卒業直前に成人するって早生まれはなんか損だ。

 ……卒業、か。色々有りすぎた栄明での六年も、もう半年とかそこらしかない。私はちゃんと大人になれるんかなぁ、不安不安。

 そう言えば、そう言えば。晴人のバカとの腐れ縁も、卒業したら終わるんだな。まさか追っかけてはくるまい。

 あいつにも相当振り回されたな、余計なことしか言わないし不躾だし、大喜は後輩にどういう教育してんだか。

 苦笑しながら思い出したのは、この前――インターハイ県予選を控えた時期の事。

「インターハイ行けたら付き合ってください、か」

 全く先輩をからかうなよ、後輩。本気でもない癖に、人を使って奮起しようとしてさ。

 ――ま、怒りはしないよ。卒業が近付いたら、頭でも撫でてやるかな。だから不肖の先輩を見送っておくれ、不出来な後輩くん。

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