アオのハコSideB #101~   作:扇町グロシア

28 / 141
アオのハコ#127 「震えるね」SideB 紆余曲折がありまして

 人生にはたまに、思わぬ形で出会いが訪れる。

 示し合わせた訳でも、付け回している訳でもない。特に理由もないのに、どういう巡り合わせなのか。 

 悪縁か因果同士かはたまた前世で仇の末か、分かりはしないがまあそれはそれで構うまい。

 かつての我が家こと木戸家から程近い小さな公園で、かつての親友と出会って思うのはただ一つ。

 会えて良かった、それだけだ。

 無心にボールを駆るナツの背中を見詰め、しばし私は足を止めて考える。 

 今日のこの瞬間には、どんな意味があるのだろうか。

 もしかしたらこれは、何かの符号なのかもしれない。

 でもまあ、――良いか。

 滅多にない機会だ、少しだけこうしていよう。どうせこの先、敵同士になる身だし。

 

 ナツの姿は、昔とそう変わらなく見える。成長していないのではない、芯がそのままなんだ。コイツはいつだって、ただ真っ直ぐ前を向いている。――いや、そんな簡単でもないか。悩んだり立ち止まったりもするんだろうけど、それさえ呑み込んで突き進む。要するに、良い意味でバカなのだ。

 まあ、人のことは言えないが。

 古ぼけたゴールを通り抜けて転がっていくバスケットボールを拾い上げ、私はナツに笑いかけた。

「――相変わらず練習熱心で」

「そこを夢佳に誉められたしね」

 まるでチームメイトのように、極々自然に。そんな話をする日が、また来るとは。

 そもそも今こうしてるのも、なかなかに有り得ない事なのに。

 ナツは時間的に学校の部活を終え、一旦帰宅してから出てきたのだろう。そして私は家に居づらい事情もあって、自主トレ兼ねてフラりと歩いてただけ。練習出来る場所はあちこちにあって、何処に行くかなんて分かるわけがない。

 それなのに、よくもまあ。

 気が合うのかなんなのか、どういうタイミングなのやら。考えてみればあの日まで、別段避けていた気もないのにすれ違う事すら無かったな。同じ街に住んでいて、なんでそうも。

 いやこれも、天の采配というヤツか。劇的な再開を演出するには、まああり得る手だろう。誰が得するんだか知らないけどさ。

 冬の始まりに、男連れで遊びに来ているナツを見掛けて――少しだけ腹が立ったのを覚えている。それで悪態を吐いて、少し後に言い合いになって。そこからあのチキンタツタ野郎がくれたウインターカップのチケットが、また私たちの間柄を変えることになる。

 同じ方向を向いていた私たちは、中三の別離の日からは180度反転して背をむけあっていた。それがまた、180度動いたのだ。……言葉で言えば一周して戻った事になるだろうが、実際首をそうやって同じ方向に回したらどうなるか。見た目はもしかしたら同じかもしれない、でも本質はどうしようもなく変わっている。

 隣に立つ事も背中を預けあう事も、最早無い。最後の夏を賭けて、私たちは戦うのだから。

 そしてそれが、嬉しくて仕方がない。全く因果なものだな、私と来たら。

 

 輝くように笑って見せるナツを見て、思う。きっとこの笑顔だけで、何もかも許されてきたに違いないと。それは無邪気で、優しい笑顔。将来これを独り占めすることになるであろう、()()()()()()には嫉妬してしまうな。出来れば私の前でもっと見せてほしいけど、それは贅沢な考えだし少々重いか。

 ――もしあの時、中学で一度折れなかったなら。学費の都合があるし栄明には残れなかっただろうけど、彩昌で一年からバスケを再開していたら。

 去年一昨年と、ナツたち相手に戦えたのに。泣いても笑っても最初で最後、インターハイを目指す最中にぶつかってそこで終わる。惜しいったら無いな、全く。

 まあでも、折れた事さえ無駄ではなかったと思いたい。挫折感さえ叩き潰し、踏みつけて上へと進む。それが私のやり方だ、誰にも否定はさせない。今の私は最強だ、負ける気はしない。その一言をもって最後まで勇敢に戦おう。

 勝つか負けるかは結果にすぎない、一切合財派手にブチまけてやろうじゃないか。

 さあ、出があるよ。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。