アオのハコSideB #101~   作:扇町グロシア

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アオのハコ#104 「1月4日」SideB 後輩の為にも

 まったく何処まで行きやがったんだ、あのバカは。

 ちょっと行ってくると走り出した後輩を見送ってもう何時間経ったか、日も傾いてきているのに戻ってくる気配がない。まあスマホがあるんだから何かあったら連絡してくるだろう、それに荷物は匡に預けてたから一人で帰ったりすることは無いと思う。……ただアイツ、途方もないバカだからなぁ。どうせまた余計なことやらかしたな、絶対。

 にしたって家の近くじゃないんだ、用があるったって大した事でも無いだろうに。スキー旅行を抜け出してまで、長野で何をしようってんだか。

「ん、……そういえば……?」

 長野と考えてふと思い出したのは、正月に届いてたちーからの年賀状。年末年始は長野にある父親の実家で過ごすとかそんな事が書いてあった気がする。

 まさか、まさかあのバカ――会いに行きやがったのか。

 バカは考えた末に最悪の決断をするとは言うけど、本当なんだな実際。

 そりゃ大喜がちーを好きなのは知ってるけど、なんなんだその要らない行動力は。帰省中に押し掛けてきただけでも厄介なのに、それで万が一告白なんかされた日にゃ、幾らちーでも怒るぞ。

 しかし、俺はもう一つ知っている。一度火が着いてしまった気持ちは、どうやったって止まらない事を。俺だって一応、そういう事態を経験しているのだから。

 

 花恋を友達として見られなくなったのは、いつ頃だっただろう。

 ずっと仲が良くて、でも少しずつ関係が変わっていった。段々異性として意識するようになり、小さい時分みたいに気安く触れることが出来なくなっていく。それは当然の事なんだろうけど、俺は気が気じゃなかったな。花恋も花恋で、俺を変な風に意識するようになるんじゃないかと。

 そしてそれと同じくらいの時期に、俺と花恋はそれぞれ別々の理由で忙しくなり出した。

 俺にはバドの才能ってやつが多少だがあったようで、公式試合を勝ち進み部のホープとして頭角を現していき、花恋は芸能人みたいな活動を始めて日々レッスンだの撮影だのでバタバタ走り回る日常が始まったのだ。

 加えて中学からは学校も別になり、顔を合わせる機会も減っていった。

 お互い大事な時期だと分かっているし、応援したいとも思う。会えない寂しさから目を背け、すれ違う日々を受け入れていった――いや、受け入れようとしていた。

 そんな事、出来るわけがないのに。

 このまま疎遠になって、いつか遠くで()()()()()()になる。そんな有りがちな運命、俺は認められない。今度いつ顔を見られるか、次会ったら何を話すか、なんてノンビリした事考えたくない。離れたくない、離したくない。

 胸の中で響く不協和音はどんどん強くなり、気が付けば俺は駆け出していた。

 花恋に負担をかけたくない、俺も俺でするべき事もある。だけどもう、俺は自分を抑えきれなかった。

 このままでいれば、いずれ俺は破裂する。

 配慮も遠慮もかなぐり捨てて、一切の思考を放棄して。ただ真っ直ぐ、ただ一つの言葉、それだけを俺は花恋へと向けていた――。

 

 もし大喜があの日の俺みたいな状態になったんだとしたら、そりゃもう止まらないな。

 例え勝ち目のない話だろうが結果が完全に見えていようが、あれは想像を絶するバカだからきっと全部突き抜けていく。周りの迷惑なんか、考えられる訳がない。そんなもんに左右される頭があれば、こんな事しでかすもんか。

 しかしそうなると、戻ってきたときが心配だな。まさか上手くはいくまい、ちーだって相手は選ぶさ。絶対ボロボロになってるぞ、アイツは。傷は深いぞガッカリしろ、とか言ったら流石に不味いだろうけど、そうやって茶化すくらいでないと居たたまれないかもしれない。誕生日も近いってのに、こんな時期に痛い目に遭いたくはない筈なんだけど。

 そして窓の外はまるで大喜の結末を暗示するかのように雪模様、ここまで来ると逆に笑えてくる。ホントにあのバカ、どうしようもないな。何処までツいてないんだろう、日頃の行いのせいなんだろうか。

 まあせっかくだし残念会でも開いてやるとするかな、先輩として。

 男三人で夜通し騒いで、辛い思いに浸れなくしよう。人生はまだまだ長いんだ、悲観することはない。

 感謝しろよ、バカ野郎。

 

 

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