失礼な話ではあるけれど、侮りすぎていたとも思うけれど。一人歩く夜道で、私は小さく頷いてみる。
大喜くんはあんな風に、ちゃんと考えてくれていたんだな。私は半ば勢いと苛立ち紛れだったのに、ああも真面目だったとは。いやいやまさかねぇ、あんなにも――
見上げる夜空には星が降り、花火の轟音を経たからか宵闇の中にある生活音がはっきりと感じられる。
せっかくのいい雰囲気だけど、隣に大喜くんがいないのはちょっとだけ惜しいかな。……って、そうやってると不味いから、先に行かされたんじゃないか。私と来たらどうにも締まらないや。
とは言え後悔はしていないしする気もない、そんな暇もない。
明日からまた、忙しい日々が始まる。
でも熱気の残る夏の宵を歩きながら思うのは、ほんの少し前のこと。
このまま黙ったままでいるのも忍びないし、何処かで周りに打ち明けるべき。そうは思えどもタイミングが掴めないまま、私たちは交際を隠していた。まあ、だからこそ大っぴらに出来ないのは分かる。でも、だ。あんな風に露骨に他人行儀にする必要無いでしょうが大喜くん。
一回ちょっと別行動している間に何があったのか、私よりも周りを気にしてさ。
高校生として過ごす最後の夏を、一緒に過ごしたい。寄り添って欲しい、……触ってみたい。キスとかそれ以上のことも、興味がある。そう思うのは私だけなんだろうか。いくらなんでも「友達の方を優先してください」は無理があるぞ、本当に。私が
そりゃ私みたいなワンパクでたくましい子相手に、浮いた話なんてまず無いだろう。でも万が一億が一、そうだったなら。私は――どうすればいいんだろう。大喜くんがいるから断るのは確かにせよ、傷付けずに話を終えられるのだろうか。私は知っている、真剣に人を好きになる痛みを。大喜くんと蝶野さんの距離が縮まっていた一年ほど前、生きた心地がしなかったくらいだ。あんな思いを誰かに強いて、しかも無下に否定する。それは余りにも酷いけれど、でも他に手はない。
ならばいっそオープンにしてしまっても良いのではないか、周りの平穏を守るためにも。
そう気持ちを固め顔を上げた先には、なんという行幸か。大喜くんと、……前に体育館で見た一年生の女の子が目に入った。
そうかちょうどいい、
私は足早に近付きながら声をかけ、そしてその手を取って――。
いやあ、にしてもつくづく私は考えなしだなぁ。思い出すだけで汗をかきそうだ、あんまりにも匂わせっぽいと言うかちょっとやり過ぎたかも。
しかし、時期としては今が一番良かったかもしれない。もしこれがもっと早かったなら、どうなっていたか。
「……っ」
瞬間、込み上げてきた悪寒に私の足は止まってしまう。身震いするほどに酷い、最低のケースが脳裏を過ったのだ。皆が口を揃え『彼氏なんか作って浮わついてるから、気が緩んでいた』『バスケなんかもうどうでも良くなったんだろう』『あんな先輩に着いていこうとした私たちがバカだった』、あの事故もあの敗北もそのせいだと私たちを責める姿が。それは最悪を越えた最悪、死ぬよりも辛いこと。私だけが責められるならまだ良い、大喜くんを傷付けさせる訳にはいかない。
そう思って考え直せば、大喜くんの言い分は至極尤もな話だ。お互いするべきことがある、感情を乱されたり負担になったりするのは良くない。
だから、でも。それを全て乗り越えたら、その後は。
……その後は、うーんどうしようかな。
まあ良いか、ゆっくり考えていけば良い。私たちのペースで行こう。二人いればどうにかなるさ、どうにかするさ。