夏の終わりを無為に過ごす、ここ数年はずっとそうだ。かつては大会と合宿で遊ぶ暇も無かった、その反動だろうか。栄明を逃げ出し彩昌で帰宅部になってからは、バイトしてダラダラしての繰り返しだ。家にいると母さんの新しい彼氏に気兼ねする、というか親の甘ったるい声なんか聞きたくもねえ。なんで娘がいてもイチャつくんだよ、空気読めや弟も妹もいらねえぞ。
まあでも二年の冬に一念発起してバスケ部にいれてもらったし、最後のインターハイと冬に控えるウインターカップ目指して夏は当然練習漬けだと思ってた。……んだけどな、うん。部長になった二年生が『インターハイお疲れってことで夏休み一杯はノンビリしよう』なんてハゲた事を言うもんだから、私は今年も暇な夏を過ごしている。
いや、いやいや。いやいやいやいや、頭お花畑か。出たは出たけど殆ど勝てなかったし、そもそも私らがインターハイ行けたのは――栄明が柱を欠いたからだ。誰も彩昌が勝ち進むなんて思ってなかった、対策を高じられなかったから隙を突けたんじゃないか。
出られただけで喜んでるからアッサリ負けるんだよ、もうちょっと粘れよ。これだから弱小は、って私はそこを理由に入ったんだよな。バスケから離れたい、私を知らない高校へ行きたい、と。なのにグチグチ言ってるのも結構酷い話かも。
しかしまあ、横入りしてきた三年生がとやかく言うのもマナーとして宜しくない。ババァの繰り言なんか誰も聞きゃしないもんだ、中学の時もそうだったそうだった。下の連中は言うこと聞かないで好き勝手、まあ私らもそんな風に勝手気ままにやってきた。
彩昌生徒の総意として呑気な校風があるなら、それに馴染むしかない。一人でこれ見よがしに練習してると浮いちゃうし、部活に費やせる時間も早々捻出出来ない。貧乏母子家庭の一児である不肖私、小遣いを自分で稼いでるんだから。
冬を見越して励む理由はあれど、肩透かしを食らったまま過ぎた夏のせいで気力が上がらない。いかんなあ、これは。
ナツと決着を付ける、それが今の私にとって最終目標なのに。
あんな形で終わりたくなんかなかった、あれで勝ったなんて納得いかない。激突上等の競技ではよくある事だし、それで道を絶たれた先輩も見てきた。でも何故あの日ナツがああなってしまったんだ、あまりにも酷すぎる。この世に神がいるのなら、逢ってみたいよ殴ってやるから。
本人は怨み言を言うで無く、再戦を誓ってくれた。必ず栄明はウインターカップに出る、そこでもう一度戦おうと。哭いても叫んでも赦されるのに、カラ元気な作り笑顔で。
私にはそれが辛い、全くどうしてこうも強情で一本気なんだ。これでもまだ親友のつもりなのに、少しは頼ってくれ。いやまあ相手チームの人間に弱音なんか見せたくないか、うん。
まあナツには背中を預ける相手がいるし、あれにすがって泣いたりしたんだろうな。あのチキンタツタ野郎、私のナツをちゃんとフォローしなかったら殴り飛ばすぞ。
「……らしくねぇな、私はよ」
ナツが立ち直ったのを確認しないと、どうにも身が入らん。――宗介でもいじめて遊ぶか、せっかくだし。
思えば私もナツもガラッパチである事には変わり無い、女バスなんて統率の取れたゴリラの群れ。それに着いてくる辺り、宗介もナツの彼氏も大概だ。やっぱり向こうも妙な事頼んできたり、殴られて喜んだりするのかな。いやまさかそこまで変態じゃねえか、あんなもんがそうそう居てたまるか。クソ寒い時期になんでニーハイなんか履かないといけないんだ、何が嬉しいんだよあれ。
――そう言えば、明日辺りナツの誕生日だな。栄明にいた頃は皆と祝ったりしたもんだけど、今の距離感だと難しいか。ぶっちゃけ気まずい、一応ハピバメッセ飛ばすくらいにしとこう。
さて、あのバカはどういうリアクションするのやら。彼氏くんとイチャイチャしてる所に丁度邪魔するタイミングになると良いな、なんてね。