私はどうしてこうも、何も分かっていないのだろう。他人より早く大人になったような顔でいる癖に、まったく――らしくないったら。
人を本気で好きになった事がないんじゃないか、と指摘してきたのは誰あろうあの陰険メガネ。そう言われて怒りはしたけど、でもあの直後に雛っちの慟哭を前にして思い知った。私はあそこまで失恋を嘆いた事など、一度も無かったから。
大切なものが何か分からないままキスを重ね、傷つく前には別れてしまう。それで良い、それが良い。恋愛は軽くて楽しいもの、嫌な思いはするべきじゃない。好きだとか愛してるとか囁かれるのは誇らしい、一緒にいたいと言われて悪い気はしない。ワガママな女だと言われたって、私は自分が大事だもの。
でも、だけど。もしもたった一人だけを、ずっとずっと愛せていたら。
私はどんな人間になっていたのだろう。
格とか立場とかは勿論ある、誰と付き合うかってのは女子同士ではマウントになるし。好きになった人と付き合うとか贅沢いってたら彼氏なんか出来ない、その辺妥協していかないと。
そう言い合いながら過ごしてきたから、麻痺していたのかもしれない。――『相手の事が好き、ってだけで良いのにな』なんて
私は男の子みんなに好かれて、だからいっぱい告白される。それを踏まえて自分を磨いてるし、価値がある女だと思ってる。
でもそこに、私の気持ちはどれくらい入っているのか。今まで付き合ってきた男子たちを、私はそもそも「好き」だったか。嫌いではないし勇気を振り絞って告白してきたなら応えてあげよう、としか思わなかったのかも知れない。
遊佐くんが気になったのもそうだ、本気の「好き」なんかどこにあるんだ。カッコいい、ってだけじゃないか。
心は揺れる、掻き乱される。それを更に加速させやがるのが、あのメガネ。
私はチャラ先輩を好きだとか色々おかしな事言ってたそうだし、今日だって人を自分の弟妹みたいに扱ってさ。勘違いばかりさせてくれるよ、全く。幼馴染みの人ともヨリが戻ったみたいで御幸せに、だ。雛っちの気持ちはどうするんだろうなぁ、うん。
……本当に、思わせ振りな事ばかり。私がちゃんと見抜いてるから良いようなものだ、他の子だったら大変だよ。
ちーちゃんのお誕生会へとお邪魔させてもらえたのは良いけど、隣は悪縁奇縁メガネ野郎。まあ雛っちの隣でもあるから良いけど。
しかしなあ、しれっと彼女さんに電話するような抜け目無いメガネならともかく、ジャガイモ野郎のいのたが女バスの三年生から『ちーの彼氏さん』って呼ばれてるのはなんか違和感あるな。そこまで器用でも無さそうなのに――って、違うか。
本人がいった通り、好きだって気持ちがあればそれで丸く収まるんだろう。
全く、悔しいなぁ。私もそんな風に、素直に生きたかったよ。まだ間に合えば良いんだけど、なあ……。
なんて思いながらも、騒げばそれで楽しいんだから困ったもんだ。……困らないか、うん。
ケーキをパクつき歌も唄い、賑やかな時間が過ぎていく。
もうじき夏休みも終わって、また文化祭が来る。ああそうだ、去年の秋だったっけ雛っちと仲良くなったの。文化祭も終わったすぐ後、いのたを好きなんじゃないかな~て鎌かけたんだった。そこから滑って転んで何度も何度もあれこれあって、今は親友ポジション。今年の秋も、色々と起こるんだろうかな。
窓から覗く月は真円を描き、なんとなくこの先の展開を予測させてくれる。
きっとみんな大丈夫、満月のように丸く収まると。