まったく、良くやるよ。後輩の手伝いなんて、ガラじゃないだろうにさ。
不躾だしバカだし先輩を敬わない失礼なバカだけど頑張ってるし力になりたい、とか言ってたけど分かってるんだろうか。ちょっと前だったら、そんなの考えもしなかったという事を。いつだって自分の事で手一杯、我道爆進勇往邁進な雛が人を心配するなんて。不死身の身体と不屈の闘志、いつも視線を釘付けにして戦う無敵の女が随分優しくなったというか、すっかり角が取れたというか。まあ何にせよ、それは悪いことじゃない。
猪股との事を引きずり続けるより、ずっと健全だ。……とか思うのはちょっと酷いかな、うん。
斯く言う私めもまた、傷口に塩を縫った一人なのだし。
雛をフッた、と聞いたときは殴ってやろうかとも思った。お前は何様だ、私の親友を泣かせやがって。暫くは被り物したまま練習してたり突然水のみ場で頭から水被って泣き出したり、大変だったんだぞ。
まあでも、思ったよりも立ち直るのは速かったな。菖蒲が余計な世話焼きまくったお陰、というかあれのせいで盛大にフラれたんだしプラマイゼロか。
私は私で大した力になれなかったと言うか、猪股に当て擦りしただけ。嫌みを言う位しか出来ないのがもどかしいし、下手したら逆に雛のイメージを損なったのかもしれない。むしろ放っておくべきだったか、余計な世話して傷を広げてしまっていた。
経験無い事だから仕方ないんだけど、どうも色恋沙汰は苦手だ。専門外にも程がある、餅は餅屋って本当だね。
いつか私も、あんな想いをするんだろうか。周りが見えないくらいに誰かを好きになって、でも色んなことが上手くいかなくて。どうしようもなくなって涙に暮れて、でもそれを想い出に出来るのかな。
――順風満帆に行けば良いんだけど、人生そんな甘くないしね。
しかしまあ、美女と野獣か。あれあんま好きじゃないんだよね、結局顔の印刷が良くなるんだから。見た目じゃなく中身を愛します、と誓った所でイケメンに戻るとかさあ……。でも考えてみたら、別の組み合わせがあっても良いよね。野女と美獣とか美少年と野獣とか、いや……それ良いかな……どうだろう絵面がヤバイ。
まあ大事なのは中身だってんなら、顔が良くたって別に問題ないのか。顔がきれいだと中身が醜い、なんてのは僻み根性入っててイヤだ。顔が釣り合うからって相手を決めるわけでないし。
そう言えば猪股は女バドの先輩と付き合いだしたそうだけど、それだって顔形が理由じゃあるまい。万が一顔で選んだとしたらあのバカ一発殴るぞ、雛が可哀想だ。
結局付き合う付き合わないなんて、感覚的なモノなんだろうな。やっぱ難しいや、霊長は。
雛はまだしばらくセットの修繕にかかるだろう、言われた通り先に帰っても良いんだけどどうしようか。もうちょっと見守りたい気持ちもあるんだよね、あの二人。『あのピッチリした格好の人』とか言われて、雛が『どういう教育してんだ』って猪股をひっぱたいてたのが遠い昔みたいに思えるくらいには仲が良くなってる。もしかしたらこの雰囲気のまま、なんとなく付き合い出したりして。あーあ、肖りたいやら金借りたいやら。
あー……でもなあ、そうなると笠原がなぁ……。猪股と笠原と雛、三人はいつも一緒だったしそっちに矢印がある可能性も高いんだ。
さてはて、どうしたもんか。今度こそ雛の力にならないといけないのに、方針が見えてこない。
とりあえず二人が作業終えるまではこうしていよう、そしたら考えれば良い。時間はあるさ、いつだって。