原作ではテレビから出てくるシーンは無いというか、姿が出てくるのが二冊目も佳境に入ってからなんだけどね。最初のだと終止死んでるから。
本はあまり読まない子なのか、単に映画しか知らないのか。それとも単なるイメージかな、テレビから出てくる悪霊って感じで記憶してるとか。
でもまああれは80年代のホラー小説を97年に再出版して人気になったやつだから、知らない人の方が多いかもしれないけど。あとヒットしてから書かれた続編が何故かSFになっててコンピューターウイルスが……って、それは別に良いか。
しかしああいう子はどうも苦手かもしれない、向こうもそうみたいだし。前会ったときもなんか私を警戒してたもん、聞こえよがしに名乗ったりしてさ。なによりあのマネージャーさん、
お姉ちゃんとしては、もっとちゃんとした恋をしてほしいんだよね。まあ私はきょーちゃんの実姉ではないけど、似たようなものだから。
……と。立ち聞きしてる間に、気が付けば友人たちが次の催し物へと向かっているようだ。まったく、置いていくなよな。まだ知り合ってそんなに経ってないとは言え、一応は友達なのにさ。
きょーちゃんはお化け屋敷の運営役みたいだ、暫くここから離れはすまい。少ししたら戻ってくれば良い、話はそれからでも十分だ。
久しぶりの栄明は私たちの頃より活気に溢れ空気も若い、せっかくの文化祭を楽しまなきゃ損だろう。
「あ、待って待ってー」
背中目掛けて駆け出しながら、私は考える。きょーちゃんとのあれこれを。
思えば十年以上家族ぐるみの付き合いが続いて、まるで私達は姉弟みたいな間柄になっている。金石家と笠原家は隣同士だし、お互い気安い仲だ。それが少しだけざわついたのは、確か三年くらい前。きょーちゃんはどうやら私を、――好きになっていたらしい。
正直を言うと私としては、きょーちゃんに対してそういう感情を持った事がない。家族としては好きだけど、恋愛的な想いは無いのだ。
まあでもきょーちゃんは頭の良い子だ、私が『匡は弟みたいなものだからね』と言ったらちゃんと分かってくれた。私に初めての彼氏が出来たときも祝福してくれた、やっぱりきょーちゃんは大事な人だから変に拗れたくはないな。
あれ以来きょーちゃんが
あれから何度か別れたりくっついたりを繰り返して、その度にきょーちゃんに寄りかかったりしてるなあ。こないだも
でもなあ、私って結構無器用だからね。隣でフォローしてくれると安心だ、そうやって支えてくれれば私はまた次の恋が出来る。
「……ふむ」
そう言えば、そう言えば。きょーちゃんの恋を支えた事って、まだ一度もないな。頼ってくれても良いのになあ、私経験豊富なんだから。
でもあのマネージャーさんは、やっぱり無いな。もっと真面目でちゃんとした、そして私の邪魔をしなさそうな子でないと。
きょーちゃんがいてくれると落ち着く、必要なタイミングで来てほしい。誰と付き合おうとも、私を優先してくれないと。……私がきょーちゃんと付き合っちゃえば解決なんだけど、それはちょっとなぁ。何度考えても、きょーちゃんはそういう対象じゃない。やっぱり私の可愛い弟で、姉として接するのが一番性にあう。
さてでも、どうしようかな。時間的にはお昼が近い、朝からクラス展示にかかりきりならそろそろ休憩に入る頃合いだ。そこを狙えば、割と簡単に連れ出せるだろう。そうしたら、――ちょっとだけ嘘を吐いておくか。元カレがまたちょっかい出してきそう、とか言っておけば優しいきょーちゃんはいつものように私を最優先してくれる。マネージャーさんへの鞘当ては必要だ、きょーちゃんを持っていかれるのはまだ困る。
私がもっと強くなるまで、一人でいられるようになるまで、隣にいてもらおう。
支えあってこその家族なんだから、ワガママとは言うまい。……多分ね。