「なにやってんだか、松岡まで……」
全く男子ってのは、どうしてこうもガキなんだろう。
千夏さんに彼氏ができたのが気に入らない、文化祭の思い出なんか作らせるか、と大騒ぎしてやがるんだもんなぁ。そういうとこだぞバカ野郎め。
そんな訳が分からない理由でどうでもいい勝負を挑まれて、それでも怯まず迎え撃とうって言う大喜くんは立派だけどさ。男バス連中は余りにもアホ過ぎる、これが同い年か一個下なんて信じられん。そこらの小型犬でももっと頭良いぞ、男子バカ過ぎ。
妬み嫉みをストレートに出しあうのが男気だってんなら、そんなもん捨ててしまえ。
それで一泡ふかせたって、千夏さんからの好感度が下がるだけだろうに。自分がモテないからって他所を下げようってのは理解出来ないねぇ、男心ってのはどうも分からん。うちの弟もいずれこうなるのかと思うと、あたしゃ頭が痛いよ。
千夏さんに彼氏ができたのが哀しい、てのも分からんね。コイツらの中でコナかけてたのなんて、松岡くらいだろ。要するに自分のいる範囲内でフリーの女子が減ってほしくない、みたいなもんなんだろうか。どうせチャンスなんか無いのに、ご苦労なこった。
良いじゃないか、千夏さんが幸せならそれで。
もう秋だってのに、千夏さんの頭のなかは春真っ盛り担いだ金太郎だ。夏休みの花火大会で見せつけてくれて以来、隠す気はもう無いらしい。同居を知っている身としては、まあ遂にそうなったかって感じだけど。そういや夢佳も彼氏いるんだよなぁ、なんで私にゃいないんだろ。まあ良いか、それは。
これで部活をサボるとか腑抜けたりしたら嫌みの一つも言うけど、むしろ気合い入りまくってるから誰も文句なんか言いやしない。カッコいいところ見せたいから、と全力でバスケに臨む姿を見てると古い少女漫画のフレーズを思い出してしまう。恋する乙女は無敵なのだ、ってね。
あんなにも満ち足りた顔をしているんだから微笑ましく見守れば良いのに、なんで男子はそれが出来ないのか。一切脈がないどころか意識さえされて無い、関わることさえないまま高嶺の花扱いしてきたくせに。
その辺が男子のバカな所だな、とりあえず他の男を徹底的に遠ざけておけば消去法でいずれ自分のモノになると思ってる。一途に純粋に千夏さんを思って支えてあげられるようになりたい、なんて考えもしない。まあ男子なんかサルだからなぁ、人間の理屈が通じる程の知能はないんだ。
あの大喜くんは、そんな風ではなさそうだけど。
千夏さんが親戚の家じゃなく後輩男子の家に住まわせてもらってる、と聞いたときは正直生きた心地がしなかった。日頃愚弟を見ているとつくづく思うけど、男子なんか穢らわしいもんだ。いつ妙な事しだすかわかったものじゃない、大丈夫かと心配しきり。
……まあ杞憂だったようだけど、ね。て言うか毎日一緒にいる割に学校でも熱視線を向けてる辺り、これは千夏さんの方が暴走しそうだな。そっちもそっちで心配だわ、勢いで跨がりかねん。いけねぇ大人じゃん。
なんにせよ、あの魔人を御せる相手なんかそうはいない。出来れば末永いお付き合いになってほしいね、うん。
こっちが呆れ果てているのも知らず、バカどもはバカ騒ぎを続けている。
くだらない理由でこうも盛り上がるバカどもを見ていると、男女の差って大きいんだなと痛感する。こりゃ相互理解なんて無理だわ、別の生き物だもん。
しかし時間稼ぎにしては熱くなりすぎだろ、コイツら。スタンプラリーの妨害したいんじゃないのか、もう千夏さんクラスに戻ってるぞ多分。
「どうする、渚」
「んー……そろそろ出てって、場を収めてやるかな」
そもそも分かってないんだよ連中、大喜くんがヘマしようがどうしようが千夏さんの気持ちは動かんよ。負けたら負けたで慰めに行くだろうし、いつだって信頼してる。それを毎日毎日見せられる身としては甘すぎて砂糖吐きそうだけど、まあ女の子は御砂糖とスパイスと私的なものいっぱいでできてるんだし構うまい。……砂糖菓子に毒を一滴垂らせば女の子の出来上がり、だったっけかな?忘れた。
なんでも良いや、とりあえず何発か松岡でもひっぱたいて来るか。腕捲りを一つ、私はバカな男子の方へと足を向ける。
こちとら千夏さんの親友やって長いんだ、お前らよりずっと――分かってるんだぞ。