まさか、まさか――そんな事になっていたとは。
以前は何だかんだでしょっちゅうつるんでいた私ら三人、久しぶりに集まったと思ったらとんでもない爆弾が落ちてきた。ああそうか、だから大喜のバカは渋ったんだな。私と菖蒲が仲良いの、知ってるから。そんなに長い付き合いでも無いけど、どういう訳かグイグイ来るもんだからすっかり親友枠に収まっている。
恋多きというか多情多恨、〽君は吉野の千本桜 色香良けれど
でも、そこに匡くんが混ざってるとはなぁ。それにしてもタイミングが悪いというか、なんというか。高砂くんが告白した少し後に恋を自覚したとか、辛い話だ。行動するのが遅かった、なんて私もかつては嘆いた身だ。匡くんの気持ちは分かる。
もし、もしも。私がもっと早く大喜への気持ちを形にできてたら、気付きたくないとか言って目を背けなかったら。もしかしたら、結果は変わっていたんだろうか。
思えばあの夏祭り、リンゴ飴をくれた瞬間から私の恋は始まってたのだから。
……でもなあ、そうも行かないか。口の中だけで小さく溜め息を吐きつつ、私は思う。千夏先輩が好きで、いつも遮二無二頑張っていて。そんな大喜をみていたから、私は恋を抑えきれなくなった。千夏先輩が日本に残らなかったら、大喜じゃない他の誰かと付き合っていたりしたら。きっと大喜は今ほど熱心にバドをしていないし、輝いてもいないだろう。何処にでもいる同級生の一人として、少しずつ忘れていったかもしれない。
千夏先輩がいるから大喜は私を好きにならない、でも千夏先輩がいたから私は大喜を好きになった。儘ならないな霊長は、めんどくさいったら。
しかし文化祭というのは、毎回なんか不穏だ。去年は私と大喜が色々あったし、今年は匡くんが大変。あとなんか大喜が手を怪我してたけど、なにやってんだか。どうせ千夏先輩とあちこち回ってる最中にうっかりぶつけたか何かしたんだろう、バカだからね大喜は。
バタバタしてる間にすっかり風も冷たくなる、もうじき秋合宿の日程も決まる筈。……秋合宿、かあ。去年はひどい目にあったっけ、泣いた泣いた。今やすっかり
まあ、人間辛くても苦しくてもどうにか馴れられるものだ。過ぎたことは戻らないけど無駄にしないことはいつでも出来る、それこそ匡くんに背中押してもらったお陰で今ではそう思えるようにもなった。
だからこそ力になりたいけど……うーん、私に何が出来るのやら。こちとら色恋沙汰には詳しくないんだ、菖蒲くらい経験があれば良いんだけどね。
でもさすがにそれは難しい、まずもって生まれた素質が違いすぎる。顔の印刷はまだしも、中身がなあ……。
ま、良いか。その辺はとりあえずやれる範囲でどうにかしよう、答えはあるさ。
「蝶野さんはもう、諦めついた?」
その言葉に一瞬古傷が疼いたけれど、それは一瞬だけ。胸を張って私は応える、当然でしょ、と。
大喜のことは、好きか嫌いかで言えば好き。大喜は私にとって、大事な親友だから。でももう恋はしていない、する気もない。千夏先輩と一緒にいる幸せそうな大喜の顔を見ているのが、私にとっても幸せだ。
それに恋愛って、楽しいけどぶっちゃけ凄い疲れる。さすがに暫くは良いかな、部活もあるし。最近は生意気な後輩をからかうくらいがちょうど良い、なんかちょこちょこと縁があるみたいだし。
「む。んー……?」
そう言えば、そう言えば。あれはなんか、妙なことをほざいたりしてるなあ。良いと思う気持ちが云々とか、名前で呼んで欲しいとか。輝く歳上女子に憧れる気持ちがあるのは分かるけど、なんかそれだけでもなさそう。
もしかしたらもしかすると、もしや。……なんか他意があるのか、あのバカ。
なんて考えかけて私は
でもあのバカはバカだからなぁ、大喜と同じくらい。万が一は、あるかもしれない。
さて、どうしてやろうか。……どうなるのかなぁ、なんか不安だ。面倒なことにならないと良いな、うん。