アオのハコSideB #101~   作:扇町グロシア

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アオのハコ#177 「欠かせなかった」SideB モヤモヤするね

 全く何を考えているんだろうな、あのバカは。

 向こうの親が反対してる、くらいならまだ分かるんだ。なにせ可愛い一人娘を持っていくというのに、無関心でいられる筈がない。その上で父親宅に押し掛けて一緒に生活してるってなんだそれ、相変わらず変な方向に行動力あるんだから。

 思いだしボヤキに耽りつつ練習を続ける体育館は、普段よりちょっとだけ静かだ。今はバド部と卓球部バレー部が合同合宿に出ていて、大声を出す連中が少ないから。まあバスケ部は男女とも、ウインターカップを予選から出る都合でここに残っているけれど。去年はどっちもインハイ出てて本戦出場が確定したんだよね、確か。

 千夏先輩たちはウインターカップ予選中、練習にも熱が入っている。大喜が一緒にいない事を寂しがっている感じはない、まったく強い人だ。私が同じ立場だったら、いない間に浮気してんじゃないかとか落ち着かないだろうな。

 ――千夏先輩はそんな心配しないか、うん。

 あの時だって、そうだったし。

 

 

 全く何を考えているんだろうな、あのバカは。

 文化祭の控え室に放り出されブーブー言っている大喜のスマホを見ながら、ため息を一つ。

 そもそもが携帯電話だぞ携帯しろよ、て言うかちゃんと管理しろ。実は大喜、スマホにロックをかけてさえいないのだ。一々パス入れたりするの面倒だし、俺の周りにおかしな事考えるようなのはいないから……って事で。

 だから今持ち主がいないのに来ている着信に、私が代わって対応する事も出来る。だけど、でも。表示されている名前を見ると、少しだけ手が伸ばしにくい。どうやら千夏先輩からのようで、少し気まずいのだ。

 二人は付き合っていて、私は以前大喜にフラれていて。もう恋愛感情はないけれども、千夏先輩にしてみれば複雑だろう。なにしろ私と来たら去年、全力で鞘当てしてるから。「大喜に告白したんです」、なんて。

 だからもし私が出たら、先輩と大喜の間に痼を作るかもしれない。

 でも緊急の用事であれば出ないのも悪いし――。

 

 

 なんて悩んだのがバカみたいに思えるくらい、話はアッサリと済んだ。大喜が待ち合わせに来ないから心配してかけてきただけで、私が出たことには何も触れないし動揺した感じも無かった。私は千夏先輩にとって「恋人の友達」くらいなんだろう、それで良いんだけどさ。

 そう言えば聞いた話だと、あの後同じ三年の人と大喜の事で揉めて『大喜くんはそんな事しない』と言い切ったそうな。なにしてんだろうな一体、どういう文脈でそうなるんだ。

 ま、良いんだけどさ。

 大喜はバカで一直線でバカで大バカだけど、良いやつだ。それが好きになった先輩もまた、同じく良い人だ。それで良いじゃないか、うん。

 ……それはまあそれで構わないにせよ、だ。今なんとなく感じる寂しさは、あの二人とはあまり関係ない所から来ている気もする。

 バド部がいないと言うことはつまり、あのバカな後輩もいないと言うこと。好きとか嫌いとかじゃなく、あれはやたらグイグイ来るからね。それにバカで失礼で不躾なバカだから、とにかく存在がうるさい。距離を置いてみればそれなりに楽しいんだけど、ああも近くに来ると疲れる。

 あれもあれで、よくわかんないヤツだ。そりゃまあ私は眩く輝く栄明のスターだから憧れるのは分かる、でもそれにしてはなんとなく違和感を覚えてしまうな。

 まさか、もしかして。本気で私を好いているとか、そんなんじゃないだろうな。

 正直そういうのはもう懲りた、暫くはしなくて良い。人を好きになるのって、楽しいけど大変なんだよ。……いやさすがに無いだろうけど、万が一億が一そうなったとしたならば。自分の気持ちに蓋をせず、後悔しないように動こう。

 泣いても笑っても、人生に後戻りは無いのだから。

 

 

 

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