柊仁と一緒に練習するなんて、いつ以来だろうか。中学時代も比較されるのが嫌で離れていたから、こんなことはしたことなかった。
でも手段を選んではいけない、他に選択肢があるのに目を背けるのはただの舐めプだ。やるなら全部賭けなければ、全力とは言えないから。
気持ちもなにもかも捩じ伏せて、強くなる為の最短距離を突き進め。
柊仁にも大喜先輩にも、負けられないんだ。俺は勝たなければいけない、その為なら何でも擲つ。半端な意地もなにもかも、捨ててしまえ。
勝ってこそ漸く――手が届く、蝶野先輩の隣に立てる。
どうなろうと、そうするしか無いから。
あの連中が言っていた事を、丸々信じてはいないし信じる必要もない。大喜先輩と蝶野先輩の間に何があろうと、そこに俺が関与する事は出来ない。
だけど、でも。
こうも俺の前に誰かが立ち塞がるのか、柊仁の次はあんたなのか。
公式戦では無いとは言え柊仁に勝った相手だ、栄明に行くなら会ってみたいとは思っていた。どんなヤツかと思えば人畜無害そうで、一緒にいるのは楽しかった。……だからそう、俺が勝手に拗れただけ。向こうが誰を好きになろうが誰と付き合おうが、それこそ勝手だ。
それを許せないのは、何処まで行っても俺のワガママに過ぎない。
あんな人と好き合ってでも別れて、他所の女子とくっついて。そんなのが何処かで許せない、気に入らない。そりゃ人間同士だ色々あるだろう、なんて語り澄ませる程俺は物分かりが良くないんだ。あの女バスの先輩さんが悪い訳じゃないし、チケット争奪戦で話した限り大喜先輩はこの人に対して誠実一路な態度だと感じた。それくらいの思いは、果たして一年やそこらで構築できるのか。
蝶野先輩にしたって、付き合いもせずキスするような人じゃない……と思う。その辺詳しくは分からないけど、あの太陽みたいな眩しさの裏に、そんな感情があったなんて思いたくはない。
全部ただの早合点であってほしいけど、そうは行きそうもない。なら結局、俺は進むしかないんだ。
名前で呼んでやる義理なんかない、と嫌な顔されてから少し経つ。蝶野先輩にとって俺はただの後輩だ、それは仕方がない。そこを変えたいなら、俺自身がもっともっと上へ行くしかないんだろう。そして蝶野先輩が名前呼びする数少ない男子生徒が大喜先輩なわけで、あの人くらいの位置に行かないとどうにもなりそうにない。そこまでいったら、俺にも好意的に接してくれるだろう多分。……そうなってほしいなぁ、うん。まあ三年生ってのは当然二年生より忙しいわけで、俺を構う暇が無いかもしれないけどさ。
俺は蝶野先輩を、……好きなんだろう。それが根っ子にあるから、このモヤモヤは終わらない。
バドにしたって、栄明からインターハイに行くには大喜先輩は避けて通れない。少ない枠を奪い合う都合上、ダブルスでもシングルスでも。その上で柊仁にも地区予選で勝てたら良いけど、一先ず栄明でトップになればインターハイは確実だから一息吐ける。決着は全国で、だ。
いつまでも期待外れだの下手な方の遊佐だの言わせるか、俺は遊佐晴人だ。勝って勝って勝ち続けて、この名前を轟かせてやる。
とにかく大喜先輩を越えない限り、いろんな意味で先へは進めない。
そこさえ乗り越えればきっと、全てが始まる。遊佐弟じゃなく、俺の人生が動き出せる。誰を蹴り落とそうとも、それが他の誰かを傷つけようとも。
戦って戦って灰も残らないほど戦って、俺が勝つ。
ああそうだ、思い出した。バドを始めた理由。楽しいから、勝つのが楽しいから――始めたんだ。