思ったほどの辛さはなく、むしろ達成感さえあった。その事実に、どうにも悔しくなってしまう。
勝てなくても仕方なかった、ウインターカップ本戦に出られただけでも御の字だ、なんて。そんな訳はない、でも取り繕ってしまう自分がいる。
これで引退、県外の農大へと進む私はきっと寂しいんだ。戦っている間はあれだけ終わりを求めていたのに、いざ終わるとなると未練を抱いてしまう。
凡人の私にだって、バスケへの愛着くらいは有ったのだ。これから薄れていくだろうけど、今はまだそれに浸りたい。
……なんて、ね。どうでも良い思考しか出来ないくらいには疲れた身体、視線の先には同じような状態の皆がいる。
最後の試合を終えて脱力したまま、私はチームメイトと共に呆けていた。
夢佳は千夏の努力に憧れ、千夏は夢佳の才能に憧れた。どっちも持ってないモブAの私としては、羨ましい限りだった。肖りたいやら金借りたいやら、ってね。それでもどうにか食らいつきやって来たのは、意地もあってこそ。天才だろうが努力家だろうが、こっちを追い抜いてとっとと行かれたんじゃぁ面子が立たない。覚悟しろやエリートアスリートどもめ、なんて気迫で全国へと躍り出た。
夢佳はほんと「道を開けろ凡人ども、天才様のお通りだ」、ってくらいにガンガン来るからなぁ……。千夏も千夏で頑張るのはタダだからって口だし、あの連中に付いていくのは正直大変だった。とは言えそれが楽しかった訳でもあるし、おんぶにだっこでいる気なんかなかった。凡人は凡人なりに、だ。勝てなくたって皆で楽しめれば良い、と思うにはまだまだ私は若すぎる。いやまあもう三年生だしババァだけどさ、うん。
なんにせよまあ、現状にそこまでの不満はない。全て出しきって天井をみやり、それでも千夏と私は笑いあえたから。
楽しかったね、楽しかったよ。
夢佳もいたらなぁ、そうだねぇ。
――終わったね、終わったよ。
ずっとずっとこのチームでいたい、バスケだけしていたい、と去年は言っていた千夏。それがちゃんと、終わりを受け入れた。きっとそれは、良いことなんだ。ちゃんと前を見て、次へ進む気になったんだから。
今まで六年もずーっと同じ所で回っていた私たちの人生は、ここから大きく動いていく。長い長い道は、まだまだ始まったばかり。
そもそも農大に進むと決めたのは、大した理由でもない。偏差値と学費とその他諸々を鑑みての結果で、消極的な考えではある。だけどそれを口実にしてダラける訳にはいくまい、それこそ後輩たちに示しがつかない。置かれた先で咲き狂え、花の十八女盛りですよ。
いつかはきっと、忘れていく。たかだか十年にも充たない競技経験も、同じ学校で過ごしたと言うだけの友情も。
それで良いさ、私の雑把な頭じゃそうなるそうなる。
覚えておくべき事は、そこまで多くない。
私は全力で生きてやった、私は幸せだった。私は皆が、大好きだ。それだけ覚えておけば、私は大丈夫。
……今ここから千夏の事を心配したって仕方ないしね、うん。これからどうすんのかな、あれは。大喜くんの所へお嫁に行くのか、はたまた。
いやー……どうなるんだろうな、あの二人は。正直言うと興味はある、だけど今後は側で観察できない。年に何回かのペースで、訪ねたりしてみるか。邪魔する気はないけど、あんまり一足跳びで大人になってほしくはないな。
て言うか私自身はどうする気なんだか、モラトリアムやってても良いのかな。私は大人になれるんだろうか、うーん不安だ。
まあ――良いか、取り留めの無い事ばかり考えてても仕方がない。世の中どうやったって為るようには為る、為らないように為ったらって話は聞かないし。明日あさって明明後日、どうにかこうにか生きてこう。