アオのハコSideB #101~   作:扇町グロシア

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アオのハコ#191 「お前の番だ」SideB ああ――楽しい

 思ったほどの辛さはなく、むしろ達成感さえあった。その事実に、どうにも悔しくなってしまう。

 勝てなくても仕方なかった、ウインターカップ本戦に出られただけでも御の字だ、なんて。そんな訳はない、でも取り繕ってしまう自分がいる。

 これで引退、県外の農大へと進む私はきっと寂しいんだ。戦っている間はあれだけ終わりを求めていたのに、いざ終わるとなると未練を抱いてしまう。

 凡人の私にだって、バスケへの愛着くらいは有ったのだ。これから薄れていくだろうけど、今はまだそれに浸りたい。

 ……なんて、ね。どうでも良い思考しか出来ないくらいには疲れた身体、視線の先には同じような状態の皆がいる。

 最後の試合を終えて脱力したまま、私はチームメイトと共に呆けていた。

 

 夢佳は千夏の努力に憧れ、千夏は夢佳の才能に憧れた。どっちも持ってないモブAの私としては、羨ましい限りだった。肖りたいやら金借りたいやら、ってね。それでもどうにか食らいつきやって来たのは、意地もあってこそ。天才だろうが努力家だろうが、こっちを追い抜いてとっとと行かれたんじゃぁ面子が立たない。覚悟しろやエリートアスリートどもめ、なんて気迫で全国へと躍り出た。

 夢佳はほんと「道を開けろ凡人ども、天才様のお通りだ」、ってくらいにガンガン来るからなぁ……。千夏も千夏で頑張るのはタダだからって口だし、あの連中に付いていくのは正直大変だった。とは言えそれが楽しかった訳でもあるし、おんぶにだっこでいる気なんかなかった。凡人は凡人なりに、だ。勝てなくたって皆で楽しめれば良い、と思うにはまだまだ私は若すぎる。いやまあもう三年生だしババァだけどさ、うん。

 なんにせよまあ、現状にそこまでの不満はない。全て出しきって天井をみやり、それでも千夏と私は笑いあえたから。

 楽しかったね、楽しかったよ。

 夢佳もいたらなぁ、そうだねぇ。

 ――終わったね、終わったよ。

 ずっとずっとこのチームでいたい、バスケだけしていたい、と去年は言っていた千夏。それがちゃんと、終わりを受け入れた。きっとそれは、良いことなんだ。ちゃんと前を見て、次へ進む気になったんだから。

 今まで六年もずーっと同じ所で回っていた私たちの人生は、ここから大きく動いていく。長い長い道は、まだまだ始まったばかり。

 

 そもそも農大に進むと決めたのは、大した理由でもない。偏差値と学費とその他諸々を鑑みての結果で、消極的な考えではある。だけどそれを口実にしてダラける訳にはいくまい、それこそ後輩たちに示しがつかない。置かれた先で咲き狂え、花の十八女盛りですよ。

 いつかはきっと、忘れていく。たかだか十年にも充たない競技経験も、同じ学校で過ごしたと言うだけの友情も。

 それで良いさ、私の雑把な頭じゃそうなるそうなる。

 覚えておくべき事は、そこまで多くない。

 私は全力で生きてやった、私は幸せだった。私は皆が、大好きだ。それだけ覚えておけば、私は大丈夫。

 ……今ここから千夏の事を心配したって仕方ないしね、うん。これからどうすんのかな、あれは。大喜くんの所へお嫁に行くのか、はたまた。

 いやー……どうなるんだろうな、あの二人は。正直言うと興味はある、だけど今後は側で観察できない。年に何回かのペースで、訪ねたりしてみるか。邪魔する気はないけど、あんまり一足跳びで大人になってほしくはないな。

 て言うか私自身はどうする気なんだか、モラトリアムやってても良いのかな。私は大人になれるんだろうか、うーん不安だ。

 まあ――良いか、取り留めの無い事ばかり考えてても仕方がない。世の中どうやったって為るようには為る、為らないように為ったらって話は聞かないし。明日あさって明明後日、どうにかこうにか生きてこう。

 

 

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