アオのハコSideB #101~   作:扇町グロシア

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アオのハコ#192 「お世話になりました」SideB 芽吹きは遠く

 一緒に初詣はいけないか、まあそれは仕方ないな。友達だって大事だもの、うん。

 高砂くんからのLINEに応え、菖蒲は一応『こっちも友達と行くから、もしかしたら会うかもね』とは返しておく。社交辞令だけど、こういうのも必要だ。

 付き合ってるからってソクバクするのは性に合わないというか、あんまりにも重い。恋人は別に特別なものじゃない、友達の進化系。

 好きだって言ってくれたから、菖蒲を選んでくれたから、菖蒲もちゃんと高砂くんを好きになる。それで良いんだ、それが良いんだ。 

 恋愛は楽しいもの、時々ちょっとだけ楽しくない事もあるけど――楽しまなきゃ。そう思って生きてきたし今後もそうする気だけど、最近はなんだか気持ちのコントロールが上手くいかなくなりつつある気がする。良くないなぁ、まったく。

 まあ良いや、新年はひなっちやにっちゃんと過ごそう。たまには男っ気無しで気兼ねも無く、呑気にやるのも悪くない。

 そうは思えど少しだけ躊躇ってしまうのは、菖蒲とひなっちの間にある大きすぎる感覚差のせいだろうか。

 

 いつもいつも告白される側じゃない、こっちからした事もあれば断られた事もある。だけどそれで泣いた記憶は無いし、そこまで考えた事もなかった。人生有限なんだからダメなら次にいく、片想いとか意味わかんない。そうやってフワフワとしてきた菖蒲には、ひなっちの気持ちを本当に理解する事は出来ないんだろうな。あんなに泣いて叫んで、傷付いて傷付いて。それでも傷口を少しずつ癒して、いのたの前でも笑えるようになって。

 凄いな、と正直に思ってしまう。菖蒲なら堪えられない、絶対に。

 それは菖蒲が本気で誰かを好きになっていないからなのか、それとも単なる性格の違いか。それは分からないけど、とりあえず確かな事は一つ。菖蒲が余計な後押しをした事は、あの日ひなっちが泣いた理由の大きな部分を占めているという事。いのたがあの時もうちーちゃんを好きだったとしても、あそこで根回しをしなければズルズル先延ばしには出来ただろう。身も蓋もない事を言えばちーちゃんは先に卒業するんだから、そこから猛アタックで攻略できたかもしれないんだ。

 今さら言っても仕方ないんだけど、だからこそなんとなく違和感を覚えてしまう。もっとちゃんとひなっちの気持ちを理解してあげたいけど、それが出来るのはいつの事やら。

 

 そう言えば、今年の初詣は色々と宜しくなかったな。おみくじでは恋愛運が荊の道とか出るし、メガネは思わせ振りだし、お姉は変な誤解するし――……。

 にしても結局、ひなっちには何も言ってないんだろうかあの陰険メガネ。でもなあ……あのいけすかない腹黒女の事好きなのかもしれないんだよな、アイツはアイツで波瀾万丈だよ実際。そこに菖蒲が加わる未来もあったのかな、なんて。良いやつではあるんだよ、家族思いだし。弟くんたちも可愛いし、()()()()()()()()()()()付き合っても良いかも。

 あーでもあの嫌な女とならまだしも、ひなっちとバチバチになりたくはないなぁ。ただでさえ菖蒲、女子の友達少ないのに。

 なんて考えながらふと見やった窓の向こうは、ちらほらと雪が舞っている。さすが年末、冬真っ盛り。色んな事があった一年も、もうじき終わりだ。

 来年になって、菖蒲と高砂くんはどうなってるんだろうな。今のところ別れるような理由もないけど、先はわからないのが人生だ。こないだだって、まさかああも要領悪くて店員に聞き返されるなんて。あれが無かったら一月くらいは付き合えてたな、まあ済んだ事だからどうでも良いけど。

 どうせ考えたって仕方ないから、菖蒲はベッドに横たわる。寝てしまえば明日になる、それを続けるだけで時間は経つ。

 楽に楽に適当に、だ。

 

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